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【セカオワ】藤崎彩織(Saori)の小説『ふたご』が直木賞候補に! 本当におもしろいのか読んでみた

SEKAI NO OWARIでピアノを担当する“Saori”こと藤崎彩織の小説『ふたご』が直木賞候補になりました。

芥川賞は新人賞なので分かりますが、直木賞は実績重視の傾向があるため、話題作りでしょ!?と思いましたが、読んでみないことには判断できません。

というわけで、『ふたご』は本当に直木賞候補に値するのか、読んでみました。ネタばれありで、感想をまとめてみたいと思います。

あらすじをざっくり3行でまとめると…

  1. ピアノだけが友達の中学生・夏子が、1歳上の男子・月島に惹かれていく
  2. 友達のような恋人のような2人は大事な存在になりながらも、お互いを傷つけていく
  3. 第1部は学生時代、第2部はバンド活動を中心にしていて、セカオワ深瀬との実際の話がベース

セカオワ深瀬とさおりの関係を描いた小説

小説『ふたご』は5年以上をかけて完成した小説。

読めばすぐに分かりますが、これはSaoriと、SEKAI NO OWARIのボーカル“Fukase”こと深瀬慧との2人の関係を描いているわけですね。

冒頭を引用してみます。

ふたごのようだと思っている。彼は私のことをそんな風に言うけれど、私は全然そんな風には思わない。確かに、私は人生の大半を彼のそばで過ごしてきた。晴れた日も雨の日も、健やかな日も病める日も、富めるときも貧しきときも、確かに、私は彼のそばにいた。けれどもその大半は、メチャクチャに振り回された記憶ばかりだ。

小説は2部構成ですが、ずっと2人の関係を描いています。

『ふたご』1部は学生時代の恋愛ストーリー

1部は2人の学生時代の話。

さおりのモデルとなる中学生・夏子は、1歳上の男子・月島と出会って、恋心を抱いていきます。だけど月島は恋愛感情がない素振りで、夏子は月島の言動に振り回されてしまいます。

月島は、当初何もやる気がないなんですよね。甘えているように見えるしイライラしてきます。それに対して本人も自覚症状はあって、

甘えてるって嫌な言葉だよ

と言い放ちます。

頑張れない人たちのことを世間は甘えているというわけです。だけど「努力できる充実した人生と、ゴロゴロしなら今日も頑張れなかったって思う人生とどちらを選ぶか」そうなったらみんな前者を選ぶだろうと。

月島も努力したい。けれど努力する価値があることが分からない。

そして月島は精神病になっていくのですが、病気なのか、甘えなのか、その境界があいまいで、夏子を通して月島のことを認められるのかを読者に問いかけてきます。

『ふたご』2部はバンド結成ストーリー

2部はバント結成話。月島がバンドメンバーを集めていく過程が描かれます。

ライブハウスとする地下室を自分たちで借りたりと、ワクワクしました。

青春ものですね。

メンバーが固まっていく過程も、セカオワ誕生秘話として読むとさらに楽しい。

夏子と月島、2人の関係が崩壊していく

2人は、ふたごのようにずっと一緒にいます。だけどお互いを傷つけあうことがある。2人の適性な距離がどこかが分らなくて、もがいている。

夏子が月島に近づこうとすると月島が反発し、月島は夏子に近づこうとすると夏子が反発します。

恋人同士ならもっと分かりやすいけれど、そうじゃないから踏み込めない。

双子ならもっと分かりやすいけれど、そうじゃないから距離を取らないといけない。

序盤から終盤まで、2人の関係性は以下のような関係に変化していきます。

  • 夏子→月島 恋心を抱く
  • 月島→夏子 現実から逃避として精神依存
  • 夏子→月島 バンド内で存在を認めてもらいたい

序盤は夏子が月島に惹かれていきます。

そして中盤で月島がアメリカに留学することになるものの、月島は自分がやりたいことが分からなくなる。月島は夏子という存在に寄りかかろうとします。

終盤はバンド結成となり、夏子が近づいていく。

このあたりの関係性が、実際のセカオワメンバーの関係も想像できて、おもしろいなぁと思いました。

『ふたご』は直木賞候補になるほどの作品なのか?

さて、『ふたご』は直木賞候補になる価値があるのか?

結論としては、話題作りの面は否めないと思います。

主人公の夏子と月島との関係も、小説で描ける深みに達していない。エピソードももっと抑揚があるものがあってもいいなぁと、物足りなさもありました。

文章の稚拙さも目立ちます。

泣きながら自分で言った言葉は、あまりに情けなくて、悲しかった。悲しい。

言葉切れると、風の音に混じって、木の枝がうねる、ざざざという音がする。ざざざ。ざざざ。

なぜ同じ言葉を繰り返すのか…!?

『ふたご』は文藝春秋から発売されているんですね。文藝春秋といえば、芥川賞・直木賞を創設した出版社です。明らかに売り上げ目的なのがバレバレ。

フィクションだからこそ書ける結成秘話

ただそれでも読むべき価値はあるかなと。

  • 男女の恋愛だけではない距離の取り方
  • 努力する価値がある夢の見つけ方

この2つをテーマにしていて、実際の経験がベースなので、具体性があります。

たとえば2部のバンド編で、月島から「なっちゃんはどうしたいの?」と問われる場面があります。バンドで同じ熱量を求められるんですね。これってよくわかる。チームになったときに全員熱量は違うわけで、そこで摩擦が生まれることがあります。

細かいところのエピソードに説得力があったので、読んでいて退屈はしませんでした。

フィクションだからこそ書けるセカオワの結成秘話ですね。

おすすめ度6 ☆☆☆☆☆☆★★★★

セカオワを意識して読むことが、『ふたご』の正しい読み方。不思議な読書体験を得ることができました。

小説として稚拙な部分はあるものの一定の水準には達しています。セカオワファンならさらにおすすめ度はプラスで!

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