萩尾望都マンガについて、100分語り合う。深読みできる作品がそろっていることがよく分かる内容でした。番組で扱っていた作品をまとめたいと思います。
MC:
- カズレーサー
- 安倍みちこ
ゲスト:
『トーマの心臓』
あらすじ
性別を越境する少女漫画。ギムナジウムが舞台。トーマは陸橋から転落死する。トーマからの遺書がユーリのもとへ。ユーリがトーマの愛を受け入れなかったことが原因だった。トーマとそっくりなエーリクが転校してきた。ユーリはトーマの代わりではなく、エーリクに向き合った。ユーリは過去に上級生の誘いに乗り、背徳を犯した。エーリクがあなたに翼を上げるといった。そのときユーリは気づく。トーマは身代わりとなり天国の翼をユーリにくれようとした。
解読
トーマの14歳という設定は、絶妙な年齢になっている。小谷さんは、『トーマの心臓』を「エロスではなくアガペー(身代わり)の話」としているのは納得。トーマは救世主であり、自殺を犯した大罪人でもある。
創作のきかっけは、フランス映画『寄宿舎』から。女の子は不自由だけど、男の子は自由。漫画を描いていることで気づいた。
『半神』
あらすじ
ユージーは痩せ細り、妹のユーシーは知恵遅れだが美女。ユージーが病気になり2人とも亡くなるかもしれない…。分断手術を行った。するとユージーが、ユーシーの容姿になり、ユーシーは痩せ細ってやがて亡くなる。ユージーは幸せな生活を送るが、鏡を見て涙を流す。「愛よりももっと深く愛していたよ おまえを 憎しみもかなわぬほどに憎んでいたよお前を」
解読
ヤマザキさんは、これは1人の人間の話で、本当の自分と世間が見ている自分の違いを表しているのかもしれないと指摘。『半神』はさまざまな読み方ができる。
『イグアナの娘』
あらすじ
イグアナに見える娘リカは、母に嫌われていた。リカは大きくなり結婚して幸せを実感する。母が亡くなる。母もイグアナだった…。正体を知られぬよう人間として生きてきた母。ようやくリカは母を許すことができた。
解読
ありのままの自分を愛してくれない。今日の親子の在り方にも通じるところがある。本人が解説していたが、ラストの「母の涙が凝っている」で、凝っていたのは母の無念。トカゲはお母さん。人間になりたかったお母さんの正体だという。
『バルバラ異界』
あらすじ
7年間眠り続ける少女・青羽。夢の中でバルバラで遊ぶ。ネットで作った島バルバラとそっくり。若返りの薬バルバラ。バルバラの意味とは?「未来はきみらを愛してるか?」
解読
中条さんは、人類の根源にある統一性の危うさを感じさせる点に深みがあると解説。言葉を介さなければ、本当の人間にはなれない。神のもたらす運命と、人間の自由意志の葛藤がある。
『ポーの一族』
あらすじ
捨てられたエドガーを育てたのは吸血鬼の一族。儀式をのぞいてしまったため14歳で吸血鬼に。富豪家族に近づくが妹は銀の弾丸で死亡する。エドガーはアランに言う。「きみもおいでよ、1人ではさみしすぎる」
解読
吸血鬼は恐ろしい存在だったが、ポーの一族では儚くて切ない一族としたのが新しい視点。集団のなかで、違和感がある子がどうやって生きていくか?永遠に時間と空間を旅する物語。夢枕獏さんの表現、さすが。
偉大な作家
萩尾望都がどれだけ革新的で独創的な作品を生み出してきたかがよく分かる内容でした。「表現できるという手段を手に入れただけで幸せです」本人のコメントもあって、充実した内容。ほかの漫画家もどんどん取り上げてほしい!
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