『ゴールデンカムイ』、ものすごく人気がありますが、本当の魅力を知るには、今回紹介する本を読んでおいてほしいと思います。
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』です。
あらためて『ゴールデンカムイ』がもたらしたものは、思った以上に偉大なのだと。アイヌ文化に光を当てた、それも物語の力を使って。
本書ではマンガ監修者によるアイヌ文化紹介本となります。ゴールデンカムイの副読本であり、またアイヌ文化の入門書にもなっていますので、その中身を解説していきたいと思います!
ゴールデンカムイの魅力
『ゴールデンカムイ』は、アイヌに何の知識も関心もなかった人たちを惹きつけることに成功したのですね。アイヌの人たちも好意的な評価をしているようで、荒業だよなぁと思います。
ゴールデンカムイはそれまでの漫画と違い、明治末期のアイヌ社会を真っ向から反するら漫画の中に組み込み、強い意志と高い能力を持ったアイヌを何人も中心的キャラクターとして登場させながら、高度なエンターテインメント性で広い読者を獲得していった、初めての作品だと言えます。
アイヌ文化の豊かさ
本書を読んでいて思ったのは、アイヌ文化ってステキじゃん!ということ。
まずはマンガタイトルになってるカムイの定義から。身の回りにある役に立つものをカムイと呼んでいて、自然やモノも含まれるんですね。かなり幅広い。
そして、アイヌとカムイが良い関係を結ぶことで、お互いに幸福な関係が保たれると考えていたといいます。
あと「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」というアイヌ民族ではじめて国会議員を務めた萱野さんの言葉も紹介されていました。
アイヌとクマの関係性について
クマはマンガでもよく出てきますが、アイヌとしても身近な存在で、捉え方も独特です。
人間の世界にクマが遊びにきて、招待状である矢を受け取るかはクマ次第。受け取ったらクマは死んでしまうが、カムイが霊魂の姿で暮らすカムイモシリへ行けるというわけです。まさかのクマとアイヌのギブアンドテイク!
あとマンガ内で杉元が手負いのシカを殺す場面にも言及しています。鹿はただ死んだわけではない、死んで杉元を暖めたと解釈できるのです。
アシリパさんが杉元にこう言います。
「鹿の体温がお前に移ってお前を生かす。私達や動物たちが肉を食べ、残りは木や草や大地の生命に置き換わる。鹿が生き抜いた価値は消えたりはしない」
命への接し方が伝わるセリフです。
名付けるのは大きくなってから
アイヌでは、名前を付けるのは大きくなってからで6、7歳ごろ。性格とか能力がはっきりしてきたときに、名前がつけられたそうです。
これはありでは!?だいたい産まれる前に名前を付けろって難しすぎる。ヒントがお腹蹴ってるとかサーモグラフィーで映る影くらいなわけですよ。
この状態で、さてこの子の名前はなんでしょう?と言われても、えいや!で付けるしかない。
では、小さいころはアイヌでは何と呼ぶのか?アイヌの言葉で「うんこのかたまり」「濡れているもの」と呼ばれたそうで、これはカムイに気に入られて魂抜かれないようにという配慮から。
アイヌの先祖は?
しっかりとアイヌの歴史も解説してくれます。
13世紀ごろにアイヌ文化が成立したとされていて、鎌倉幕府が生まれ中央集権が東北まで勢力を伸ばしたことと関係があるんですね。外圧があったからこそ、内と外の区別が生まれた。
それ以前は擦文文化とオホーツク文化があったんですね。オホーツク文化が擦文文化に吸収されて、アイヌ文化へ。そのときに土器の使用を一切やめて、鉄製品を使うようになったのは、本州との交易があったのが理由としてます。
アイヌと和人は対等だったが、1604年に松前藩が徳川家康から黒印状を受けてから変化していきます。アイヌの自由交易を封じて松前藩主導になっていくのです。
アイヌの不満がたまっていき1669年にシャクシャイン戦争が起こります。5つくらいのグループのうち2つのグループが中心となって交戦は始まりました。
結果的にシャクシャインは和議と偽った酒席でだまし討ちにあって、アイヌは敗北することになってしまっていました。
これシャクシャイン戦争だけでも一つの描くべきテーマになりそう。
さらにアイヌと和人の争いは起こります。1789年にクナシリメナシ蜂起が勃発。首謀者37人は牢内に閉じ込められたまま惨殺されて、多くの血が流れました。
アイヌ文化が和人へ同化していく
和人がアイヌを武力制圧し経済的な支配下に置いたことで、日本に組み込まれていくわけですね。
江戸時代は蝦夷の自治があったが、明治維新以降には未開の地を開拓するような政策を推し進めます。大量の和人が北海道へ。伝統的な生活や文化が禁止されて破壊されていくのです。
1899年北海道旧土人保護法。アイヌを農耕化する救済措置としたが結局は恩恵受けたのは一部。土人学校により、アイヌの和人社会への同化が進められていきます。
マンガからアイヌ文化を知る
こうしてマンガからアイヌ文化へと自然の興味を持てるのは、作品の力だなぁと。そして本書もその橋渡しになっています。
なかなかアイヌについて知る機会が少なくなっているのでなおさらです。マイノリティを描くうえで参考にしたいと思いました。
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