MENU

『悪は存在しない』ネタバレ!衝撃のラストの意味を考察(あらすじ)

『悪は存在しない』は、濱口竜介監督の最新作。

長野県の自然豊かな町を舞台にした物語。ゆるりとした流れではじまるものの、ひと筋縄ではいきません。すごかった…。ヒリヒリしました。第80回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞も納得ですね。

『悪は存在しない』について、ネタバレであらすじを解説しながら、ラストの展開も考察していきます!

『悪は存在しない』あらすじ

長野県、水挽町(みずびきちょう)。移住者が増えていて、ゆるやかに発展している。町の便利屋である巧とその娘・花の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいもの だ。

しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナのあおりを受けた芸能事務所プレイモードが政府からの補助金を得て計画したものだった。

森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく…。

『悪は存在しない』登場人物・スタッフ

『悪は存在しない』の登場人物やスタッフについて、まとめていきます。

目次

登場人物

  • 安村巧(大美賀均):便利屋。妻を亡くしている
  • 安村花(西川玲):巧の娘
  • 高橋啓介(小坂竜士):芸能事務所のマネージャー、元俳優
  • 黛ゆう子(渋谷采郁):芸能事務所のスタッフ
  • 峯村佐知(菊池葉月):うどん屋を営む
  • 峯村和夫(三浦博之):佐知の夫

スタッフ

  • プロデューサー:高田聡
  • 脚本:濱口竜介
  • 撮影:北川喜雄
  • 編集:濱口竜介・山崎梓
  • 録音:松野泉
  • 音楽:石橋英子

公開データ

  • 2023年製作/106分/G/日本
  • 配給:Incline
  • 劇場公開日:2024年4月26日

『悪は存在しない』ネタバレ解説

ここから『悪は存在しない』をネタバレありで、徹底解説していきます。

起:ずさんなグランピング計画

長野県・水挽町。森の中を歩き、水を汲む大柄な男性・巧。娘の花のお迎えを忘れてしまうことがありながらも、自然と共生しながら暮らしています。

そしてこの町に、グランピングを建設する計画が立ち上がります。この計画は、コロナ禍で事業が立ち行かなくなった芸能事務所が推進しているんですね。政府からの補助金をあてにしたこの事業は、森の環境や水源を汚染する恐れがあるずさんな計画だったのです。

芸能事務所は住民説明会を開催します。高橋と黛がその説明にあたったものの、住民たちは怒りを隠せませんでした。高橋はしどろもどろになりながら対応する一方、黛は住民たちの話を真摯に聞こうとします。

問題点としては、管理を24時間体制にすること、貯水の場所を変えるなどがありました。町長は、巧が頼れる男だと、高橋と黛に伝えます。

承:ふざけたオンライン会議

高橋と黛は、会社に戻り、そこではオンラインが会議が行われました。

オフィスには芸能事務所の社長、オンラインの先にはグランピング事業を推薦するコンサルタントがいます。

コンサルタントはビジネスができる雰囲気であるものの、完璧なものはないから進めることが大事とします。住民の要望をすべて呑むことはできないので、管理体制だけ整えて、貯水はそのままとします。

高橋と黛は、それだと住民は納得しない、ガス抜きのガスを浴びているのは自分たちだと、不満を指摘します。グランピング事業をやめることも言い出します。無茶苦茶なプロジェクトに辟易していることがわかるんですね。

社長は、すでに補助金をもらっているため、中止はありえないと激昂します。仕方なく、2人は巧に協力をお願いするため、車で向かうことになります。

転:森での暮らしの魅力

薪割りをしている巧。高橋と黛が近づいていきます。巧がごはんに行こうと誘われ、高橋は薪割りをやらせてほしいと言います。

3人はうどん屋へ。巧にグランピングの管理を相談するものの、「暇じゃないし、お金には困っていない」と断られます。

せめてアドバイザーになってほしいと伝え、高橋はこの町で暮らしたいとまで言い出します。

水汲みに人手はある、と巧は、2人を駆り出します。

結:衝撃の展開

水汲みをしている最中、シカ狩りの銃声が、山から鳴り響きます。

巧は、花のお迎えをまたもや忘れてしまったことに気づき、急いで車を走らせるものの、すでに花は帰っていることがわかります。

いったん巧は、自宅に戻ります。黛は、森のなかで右手を切って、巧が包帯を巻いてくれます。

花は行方不明に。町内で花の特長を伝えるアナウンスが流れます。

巧は心当たりの場所を探そうとして、高橋がついていきます。町の人総出で、探索が続きます。

巧と高橋は、森を抜けた湖にたどり着きます。そこでは、花と、二匹のシカが対面していました。シカは銃で撃たれたのか、ケガをしていることがわかります。

高橋が花に近づこうとしたとき、衝撃の出来事が…。

巧は、高橋の首を締めていきます。高橋は口から泡を吹き、意識を失ってしまいました。

次の瞬間、花は倒れて、鼻から血を流していました。

巧は、元の森へ戻っていきます。そのあと高橋が起き上がるものの、バタリと倒れてしまうのでした。

『悪は存在しない』衝撃の結末・ラストの意味は?

『悪は存在しない』のラストはどのような意味があったのでしょうか?以下の謎がありました。

  • なぜ巧は、高橋を襲ったのか?
  • なぜ花は、鼻血を出して倒れていたのか?

まず巧が、高橋を襲った理由です。

一つの説として、巧の計画的な犯行ではないかと思いました。便利屋というのは、町に不都合さがあったときに、仕事があるという意味で、巧が暗躍していたのではないかと。

「暇ではないしお金には困っていない」という巧の言葉は、見栄を張っていたのではなく、殺し屋を含む仕事があるから、実際に忙しいというわけです。巧だけではなく、町長から指示があって、だから高橋と黛に、巧を紹介したのかもしれないと。花が失踪したこと自体が、あの湖へ、高橋を誘い込むことだったのです。

もう一つの説として、巧は動物的な本能で襲ったのではないか?というもの。巧は、グランピング事業でシカがくることがあるから、3メートルのフェンスが必要と、2人に指摘するんですね。ただシカが人を襲うことはないとも言います。「それならフェンスはいらないのでは?」と黛は言うのですが、シカはケガをしているとき・子どもを守るときに、人を襲うのだと。

ここから考えると、ラストの場面はまさに巧が言っていた状況なんですね。花と対峙していたシカは、銃の傷跡がありました。巧も、花を失う寸前で、正常な状態ではなかった。シカと同様に、巧も本能的に近くにいる、言うなれば排除すべき存在の高橋を襲ったというわけです。

そして花が、鼻血を出して倒れていた理由です。

これは巧が幻想を見ていたと考えられます。実際にはすでに、花はシカに襲われて、命を落としていた。巧が、説明会で帽子を取りながら話す場面がありますが、花も帽子を取っているんですね。

『悪は存在しない』主人公の感情は?

巧は、感情が見えないんですね。

淡々と話します。グランピング計画も賛成なのか反対なのか、わからない。娘との距離感もわからない。妻を亡くしているようなのですが、最後まで感情が読めない存在として描かれています。

『悪は存在しない』印象に残った場面は?

『悪は存在しない』は印象に残る場面がいくつもあります。それぞれ触れていきます。

ラストの展開

まずはラストでしょう。

心拍数が上がったのが、わかるくらいドキドキしました。予測できなかった展開。

町民の説明会

町民の説明会はエキサイティングでした。あきらかに不満があって殺伐している雰囲気。だけど、それぞれが違う角度から意見や質問を投げていて、これがまたどのようになっていくのか、緊張感がありました。

説明をする側の高橋も、はじめは冷静になるものの、感情が見え隠れするんです。町の人たちも歩み寄ろうとする人もいて、単純な対立構造でもないことがわかります。

車内での会話

高橋と黛が、再び町に向かう車内での会話。「なんで仕事辞めないの?」と高橋が切り出して、2人のこれまでどう生きてきたのか、どう働いてきたのかが見えてきます。

説明会では道化だったのに、ここでは人間くさい会話になっていて、一気に2人のことが気になり出すんですね。

黛は介護福祉士だったのが、芸能界へ。本音の世界がよかったと言います。高橋も売れない役者で、そこからマネージャー職に。

共通しているのがグランピング事業なんてやりたくない、ということ。高橋が声を荒げてしまうのですが、黛は少しおびえてしまいます。

そこからマッチングアプリの話もするようになり、2人の距離が縮まっていくんですね。

薪割り

驚いたのが、ただただ薪割りしている場面なのに、目が離せなかったこと。

巧が、ものの見事に薪を割っていきます。そして高橋がやってみたいと言って、3回くらい薪割りがうまくいかない。4回目で、薪割りを成功させます。

この場面がずっと長回しなんですね。シンプルなのに、ずっと見てしまう…。演じているのではなく、2人の実在感が迫ってくる場面でした。

『悪は存在しない』ロケ地は?

『悪は存在しない』のロケ地は、おもに長野県諏訪郡の富士見町と原村になります。山梨県小淵沢あたりでの撮影を加えて、「水挽町」という架空の町を生み出しています。

『悪は存在しない』映画パンフレットの内容は?

『悪は存在しない』映画パンフレットは、以下の内容になります。

  • 奇妙で楽しい旅 濱口竜介
  • イントロダクション
  • ストーリー
  • 『悪は存在しない』ができるあがるまで
  • ロケ地紹介
  • 西川玲(花役)インタビュー
  • 小坂竜士(高橋役)インタビュー
  • 渋谷采郁(黛役)インタビュー
  • 『悪は存在しない』と『GIFT』の編集をめぐって
  • 『GIFT』のあと

通常版(1200円)、7インチレコード付き特装版があります。

『悪は存在しない』制作のきっかけは?

『ドライブ・マイ・カー』でも音楽を担当した石橋英子から、濱口竜介監督に映像制作のオファーがあったことから、本作ははじまりました。

そこで濱口竜介監督は、「従来の制作手法でまずはひとつの映画作品を完成させ、そこから依頼されたライブパフォーマンス用映像を生み出す」ことを決断。はじめはサイレント映画として考えたいたそうですが、劇映画になっていきました。

『悪は存在しない』濱口竜介の演出法とは?

濱口竜介監督の役者への演出は、まず本読みからはじまります。映画パンフレットの黛を演じた渋谷さんインタビューによると、谷川俊太郎の詩を読んで声を出す練習をして、車内シーンの本読みをしたそうです。これを3日間。

本読みはものすごく厳しく、読点は一間、句点は二間、三点リーダは三間、ちょっとでもズレたら、「遅い」「早い」「今感情が入った」と演出が入るそうです。

本番になると「自由にやってください」と、あとは何も言わない。本読みで染み込ませたら、本番は任せるという方法なんですね。

必見の問題作!

『悪は存在しない』は観たあと、ずっしりと心に残る作品になっています。だれかと語り合いたくなる。ぜひ鑑賞してほしいです!

そして濱口竜介監督の作品をこの機会にぜひチェックを!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次