なんかデジャヴ感あるなと思ったんです。
マーティン・スコセッシ監督の3時間近くの大作映画『沈黙‐サイレンス‐』を見終わって、どこかで同じような映画体験をしてるなと。
それが映画『パッション』だと判明しました。キリストが十字架を背負う、その瞬間を映画化した作品でとにかく痛い。当時、クリスチャンの女の子と映画館で観たんですね。
『沈黙‐サイレンス‐』は江戸時代初期、隠れキリシタンが迫害される中で、信仰とは何かを問う作品です。この2作品が重なってきたわけです。
どんな映画?
刊行から50年、遠藤周作没後20年の2016年。世界の映画人たちに最も尊敬され、アカデミー賞®にも輝く巨匠マーティン・スコセッシ監督が、戦後日本文学の金字塔にして、世界20カ国以上で翻訳され、今も読み継がれている遠藤周作「沈黙」をついに映画化した。
『沈黙‐サイレンス‐』公式サイトより
『沈黙‐サイレンス‐』のストーリーはシンプルです。
若きカトリック司祭のロドリゴとガルペが日本にやってくる。2人の師である宣教師が、棄教(キリスト教を棄てること)したと知って、その真相を追い求めます。
舞台は17世紀の長崎ですが、とにかくこの時代はキリシタンへの迫害がひどかったようです。その中でも信仰を貫こうとする日本の人たちを前に、ロドリゴとガルペは信仰とは何かを、自問自答していきます。
窪塚洋介の存在感がすげぇ
キャストも充実しています。師匠役にリーアム・ニーソン、ロドリゴ役は『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド。
そして日本人俳優も予想以上に出ずっぱりでした。
イッセー尾形は言うなれば悪代官の役ですが、あの声高にジワジワと威圧を見せてくる感じがたまらないんですよね。
浅野忠信は通訳家で、ロドリゴに「転ぶこと」すなわち棄教を迫ってきて貫禄ありました。
それぞれの俳優さんに見せ所がありますが、ひときわ強烈な存在感を放っているのが、窪塚洋介です。
窪塚洋介が演じたキチジローは、ロドリゴとガルペに対して日本を案内する役を担います。どこか信頼しきれない怪しさがあって、だけどその一方でピュアさもある。
そんな絶妙な人物像を、見事に演じきっていました。キチジローの映画と言ってもいいのではないかと。
【ネタバレあり】かなり痛くてツラい
『沈黙‐サイレンス‐』は、かなり痛みを伴う描写が続きます。クリスチャンが拷問され、それでも信仰を捨てないでいられるのか。この場面が繰り返されるんですね。
ロドリゴが棄教するかどうかで悩むのですが、村人たちは信仰のために拷問にあいながら死んでいく。苦しいときこそ、己の信仰心が試されているわけです。
だけど、彼らの行動を心底理解できているかというと、まったく自信がありません。命をかけて守ったのは何だったのか?
本作ではあまりにもむごい拷問シーンが出てきます。
- 磔にして、100度近い源泉をかける
- 磔にして、海の中で死ぬまで放置する
- 逆さ吊りにして、首に傷をつけて血を流させる
思い出しただけで、めまいがしてきます…。
信仰心は捨てられないのだろうけど、表面上だけでも棄教すればいいのにと、どこかで思ってしまう自分がいました。
映画『パッション』クリスチャンの女の子と見た
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この感覚が、映画『パッション』の鑑賞後と近いものがあったんですね。
『パッション』はキリストの磔を再現していて、監督はメル・ギブソン。キリストは血みどろになったまま十字架を背負い、足を引きずりながら歩き続ける。
痛々しい描写が続いて、なぜこんなシーンを延々と見せられるのかと、もうやめてほしいと感じていました。
そのとき、隣から嗚咽が聞こえてきました。一緒に観に行っていたクリスチャンの女の子が涙を流していたんですね。
上映が終わっても彼女は身動きが取れず、その場でしゃがみ込んで泣いていました。僕は、背中をさすってあげるくらいしかできませんでした。
彼女には信仰心があった。
だから『パッション』で描かれていたことの意味が伝わったんだと思います。
僕は頭では分かってるけど、100%の共感はできなかった。『パッション』を見た彼女の気持ちのすべてを理解しきることはできなかった。
同じように『沈黙‐サイレンス‐』で登場するクリスチャンの気持ちも、僕には理解しきれていないのです。
さいごに
とはいえ、『沈黙‐サイレンス‐』は力強い作品です。異常な熱気を帯びているので、長尺でもまったく飽きることはありませんでした。クリスチャンの彼女は、『沈黙‐サイレンス‐』をどう見るのだろうか。
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