金正男が、マレーシアで暗殺されたという報道が駆け巡っています。
「マジか!」と思ったのと同時に、「ついにか…」という気持ちもありました。
金正男は、現在の北朝鮮最高指導者・金正恩のお兄さんなんですね。
2人は異母兄弟で、金正男は後継者争いに敗れて、マカオや中国で隠遁生活を送っていたわけです。
2001年、金正男が日本のディズニーランドに来ていたことが発覚。けっこうインパクトあったので、日本ではそっちの印象が強いかもしれません。
ぼくにとって、金正男のイメージはリベラルさがあって、さみしがり屋な人。
それも全部この本から。
- 作者: 五味洋治
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/10/07
- メディア: Kindle版
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暗殺されたのは必然だったのでしょうか?
書籍『父・金正日と私』から読み解いていきたいと思います。
どんな本?
金正男の肉声って、ほとんど世に出てないんですよね。(一時期テレビなど出ていたことはあるものの)
それが『父・金正日と私 金正男独占告白』では、バンバン肉声が出てきます。金正男とのメール150通のやり取りや、7時間のインタビュー内容がベースなんですね。
著者は東京新聞記者・五味洋治さんなのですが、なぜそこまで接近できたのか?
きっかけは2004年の北京空港。著者は、偶然に金正男と出会い、名刺を渡します。数ヶ月後、金正男と名乗るメールが送られてきて…
この本人とのメールのやり取りが、エキサイティングなんです。
相手が本物なのかどうかを探りながら、関係性を崩さずに際どい質問を送る。押しすぎてもダメだし、引きすぎても肝心なことが聞き出せない。
やり取りを継続するかどうかは、相手次第なわけです。
その点、五味さんは忍耐力あるんですよね。切れそうな糸をギリギリの状態で保ち続ける。これは、丹念ですよ。細かいところまで、念が入ってる。
マカオで本人インタビューするときは、かなりハラハラしました。最悪、取材者側も命の危険があるわけで。
本書は、サスペンスものとしても一級品だと思います。
リベラル発言を連発していた
さて、金正男はどんな発言をしていたのでしょうか。
メールやインタビューから見る限り、かなりリベラルな考え方を持っていたようです。
具体的には、
といった発言がありました。
現政権への提言は、批判だと捉られる恐れもあります。読んでいるこちら側がそこまで言っていいのか! と心配になるくらいに、踏み込んだ発言ですよね。
寂しがり屋な人
金正男は寂しがり屋なんだろう、そうも感じました。
著者に対して、日本に来た体験をうれしそうに知らせたり、友達が多いという自慢をしたりするんですね。
著者とここまで交流したのも、かまってもらえることが単純にうれしかったからなのかなと。だって、金正男にとっては日本の記者に接近するって、ほとんどメリットはないはず。
自分のことを誰かに話したくてたまらない。聴いてもらいたくてたまらない。
日本の記者は、はけ口として程よかったのかもしれません。
金正男は幼少期の頃から、その存在をひた隠しにされていました。生みの母親・成恵琳が映画女優で妻にふさわしくないこと、成恵琳に夫と子供もいたことなどが理由だと言われています。
父・金正日は後継者として、長男ではなく三男の正恩を選びました。
父から選ばれず、そして暗殺された…
さいごに
暗殺される理由としては充分で、本書でも正男本人が自覚していたことが分かります。
それにしても、後継者争いの敗者が殺されるって、いつの時代の話なんだよ、とは思いますが…
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