M-1があったから芸人を続けられたという、ナイツ塙によるお笑いへの熱い思いが込められています。
ぶっちゃけたところもあるので、お笑い好き、M-1好きは読んでおいていいと思います。
あと、体系的にはなっていないけど、お笑いの見方もちらほら書かれているのはポイント高いです。
三角形を作れているかどうか
三角形は、紳助が言った言葉のようですが本書で何度か出てきます。
ボケとツッコミと客席ときれいな三角形を描けているかどうか。相方との掛け合いはけっこう忘れがちな要素だそうです。
新鮮さがあるかどうか
M-1を獲れるコンビは、タイミングがあるのは間違いないですよね。
どうしても何度か出ていて優勝までいけないと、その後は不利になっていきます。単純に新しいものやシンデレラストーリーを求める要素があるから。
和牛がチャンピオンになれなかったり、笑い飯がずっと負けていたのを見ると納得ですね。
練習をしすぎない
これはちょっと意外だったのですが、予定調和が嫌われるからだそうです。どうしても練習しすぎると、間のとり方がおかしいことになる。
で、ナイツはアドリブのボケを何個か入れるようにしているといいます。予測不能なボケを入れると、緊張感が生まれて、生々しい反応になるからなんですね。
M-1だとなかなかそんな余裕はなさそうですが、アドリブ入れたかも?と見るのは楽しい視点です。
関東芸人はなぜ勝てないのか
関東芸人はなぜ勝てないのか。本書のサブタイトルにもなっていますが、これは漫才の本質が、会話で成り立っていて、関西が発祥だからというのが理由だと分析しています。
東京の言葉は、手数やボケが圧倒的に不利。歴代チャンピオンが関西寄りなのもうなずけます。
M-1で勝ちやすいパターンは?
100メートル走に例えています。
スタート30秒で中笑いをとる、中間まで低い姿勢をとり、最後に爆発させる。紳助は「最後の30秒の印象」がポイントだと説いていたそうです。
ネタで勝負せよ
容姿がおかしい、とかネタ前に説明して笑いをとるのはすべきではないとしています。
塙によると、漫才の入りは、水泳の飛込みのイメージ。入りは水しぶきを上げずにスッと入る。そして最初でつかむ。飛び込む前にああだこうだ言うと、スタートが遅れるだけ。
ここは塙のお笑いへのプライドが感じられました。
お笑いのリスペクトを感じる
ぶっちゃけているところもあるけれど、お笑いへのリスペクトを感じる内容でした。
これまでのライバル漫才師も、褒めているところは褒めていて、かなわないとは平気で言ってしまう。特にダウンダウンへの畏敬はものすごく感じました。松本人志の偉大さ。
ダウンダウンはフリートークのすごさが語られることが多い印象ですが、漫才が評価されるべきなんですね。『誘拐』『あ研究家』を絶賛していました。
M-1を語る上では、読んでおきたい一冊になっています。
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