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【書評】『明け方の若者たち』は甘くて甘ったるい小説…ではなかった

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人気ウェブライターのカツセマサヒコさんによる初小説。

あまい、あまったるい。

言葉づかいや恋愛の展開がさすがですね。こっ恥ずかしいけれど、恋愛のときめきが詰まった内容になっています。

ただそれだけは終わらない。なかなか小説として巧妙な仕掛けがあり、ただでは終わらない展開になっていきます。

あらすじ

明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、“こんなハズじゃなかった人生”に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。高円寺の深夜の公園と親友だけが、救いだったあの頃。それでも、振り返れば全てが美しい。人生のマジックアワーを描いた、20代の青春譚。

Amazonより

『明け方の若者たち』が北村匠海主演で映画化

本作は、北村匠海DISH//)主演で、2022年に映画化されることが決定しています。キャストはハマってる気がしていて、あと誰が配役されるのが期待ですね。監督は23歳の松本花奈、脚本は小寺和久が担当するそうです。

甘ったるい言葉のオンパレード

カツセさんはエモツイートが得意なだけに、この小説でも本領発揮されています。恋愛のはじまりを描くわけですが、とにかく女子の言葉にドキッとしてしまう。

大学生の主人公は、就職が決まった人たちで集まる「勝ち組飲み会」に参加します。そこで出会った女の子と距離が近づいてきます。

「ごめん、携帯なくしちゃったみたいで。番号言うから、かけてくれない?」

女の子は飲み会を抜け出して、先に帰ってしまうのですが、ショートメッセージがきます。

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」

これはまずい。ドキッとしない男子はいない。そこから二人は、夜の公園でコンビニで買ったお酒を飲むんですね。

ほかにも
「全然イノセントじゃないこと、考えてたっしょ」
「もうちょっと押してくれたら、いいかも?」
といったように現実にもあるのか?というワードがどんどん飛び出します。

恋愛だけではなく仕事論もある

ただ恋愛小説なだけではなくて、仕事小説の要素もあります。

大学生から就職して言われたことをやり続ける日々。もっとクリエイティブなことをやるはずだったのに…。

「人生は打率では表さないんだよ」
「そうそう。バッターボックスから降りられない状況をつくって、バット降り続ければ、いつか1本くらいホームランが出る。そのときまで、ひたすら三振し続ける日常を受け入れることを、覚悟って言うんじゃね?」

社会に飛び出した若者の心情もしっかりと描いているんですね。

物語は様相を変える

中盤は少しダレてくるのですが、バッティングセンターでの友人の一言が衝撃を与えます。ここから物語のは、見え方をガラッと変えていきます。

さらに自伝的な話かと思いきや、ちょっとした予想を裏切る内容もあって、最後は一気に読んでしまいました。

いまどきの若者小説、というと褒めてないように聞こえるかもしれませんが、エモい恋愛を描けているだけで才能だと思います。

残念ながらネタバレ厳禁なのですが、読み終わったあと、誰かとこの小説について語りたくなる、そんな内容になっています。

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