読書猿さんの『独学大全』を読みましたー。
「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法が紹介されています。本書から、これは取り入れなければ!と思ったものをまとめていきます。
なぜ学ぶのか?
まずそもそもなぜ学ぶのか?
50歳の夏目漱石の手紙が紹介されています。新時代を担う芥川龍之介、久米正雄に送った激励の手紙。
「勉強をしますか。何をしますか。君方は新時代の作家になるつもりでしょう。僕もそのつもりであなた方の将来を見ています。どうぞ偉くなってください。しかし無闇にあせってはいけません。ただ牛のように図々しく進んでいくのが大事です」
「世の中は根気の前に頭を下げることを知っていますか?火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません」
学び続けることでしかたどり着けない境地があるわけです。
学び続けることが難しい理由
学び続けることは、うまく学ぶことよりもずっと難しく、またはるかに重要。だけど挫折してしまう。なぜ学び続けることが難しいのでしょうか?
本書では「二重過程説」が紹介されています。
- システム1 無意識的で自動的、迅速で直感的に働く
- システム2 意識的に制御され、処理が遅く、熟慮的に働く
ダイエットがうまくいかないのは、システム1が優位に働いているから。生まれつき備わっているメカニズムはほとんどそのままなのに、我々が生きる環境は大きく異なっていることで、ひずみが出ているわけです。
理性と感情が優先する脳を持っていながら、生得的な認知機能だけでは適応しがたい世界に、言い換えれば理性と知識なしには社会と文明を維持できない世界に生きている。
これは取り入れなければといった思った技法
ここからはぜひ参考にしたい技法を紹介していきます。
技法1 学びの動機づけマップ
「学びの動機づけマップ」は、なぜ始めようと思ったのか動機をマップにするのが技法。語り直し、結び直しにフォーカスしていきます。
- 学びのきっかけとなった出来事を探す:自分なりのタイトルを付ける
- その出来事の影響範囲をマッピングする:3~4つくらいで影響範囲をぶら下げる
- 影響の評価を行う:ポジティブかネガティブかを評価する
- 評価に理由付けをする:なにができるようになったのかなど記す
- 1~4を必要なだけ繰り返す
志の強さは、それを立てた瞬間にではなく、自身の行為や思考を絶えず志に結び直した、その繰り返しの中に生じるのです。
技法2 可能の階梯
「可能の階梯」は、自分のできること・知っていることを線引きする方法になります。
- 学びたいものを一つ選び、できること・知っていることを書き出す
- テーマについて自分がいまできること・知っていることを、簡単なもの・初歩的なものから順に並べる
- 学びの出発点を決める
技法3 学習ルートマップ
「学習ルートマップ」は、どのように学びを進めていくのか、その道のりを見える化していきます。
- 紙の両端に現状と目標を書く
- ステップを書き加えて、現状と目標をつなぐルートを作る
- 他のルートも考える
技法5 2ミニッツ・スターター
これはかなり良さそうな技法。スタートする腰が重くてそれが大変。スタートできればけっこうどっぷりできるものなんですよね。事を成し遂げるために絶対に必要で、決定的に影響を与えるのは、手をつけること・着手すること。
- タイマーを2分にセット
- タイマーをスタートさせてすかさず作業を開始する
- タイマーが鳴ったと同時に途中でも作業をストップする
-
次のいずれかを決める
-
そのまま作業を進めるのか
- 別の作業を2分進めるのか
- 作業をやめて休憩するのか
技法7 グレー時間クレンジング
自分の時間を振り返る技法で、下記の3つに分けていきます。
- ホワイト時間:完全に自由に使える時間
- ブラック時間:完全に行動が拘束された時間
- グレー時間:一部の行動は制限されるが自由にできることもある時間
4ステップで実践していきます。
- 24時間の行動を書き込める表を用意し、時間ごとに行動を書き込む
- 時間ごとに自由度を評価する、%で入れる、グレー時間の活用の工夫を書く
- グレー時間を学習に使えるよう事前準備を考える
- グレー時間を学習化するための事前準備をスケジュールに盛り込む
手をつけることができるのは、制限された時間であってもその中でできることを拡張すること、そうしてこの時間の「質」を高めることなんですね。グレー時間をどこまで活用できるのかを洗い出していくことが大事になってきます。
技法11 行動デザインシート
「行動デザインシート」は、ターゲット行動とライバル行動を割り出して、やめたいことをやめる方法です。
- ターゲット行動とライバル行動を選ぶ
- 表を作り、4つの軸でターゲット行動とライバル行動を評価する
- ライバル行動の理由をターゲット行動の改善に転用する
4つの軸は「きっかけの多少」「ハードルの高低」「ライバルの有無」「褒美/罰の速遅」になります。
技法13 ゲートキーパー
「ゲートキーパー」は、だれかに伝えて契約する技法です。
- コミットメントレター 誰かに伝えて契約する
- 行動契約 ペナルティを与えてもらう
「なにごとも心に任せたることならば、往生のために千人殺せといはんに、すなはち殺すべし。しかれども1人にてもかなひぬべき業縁なきによりて害せざるなり。我が心のよくて殺さぬにはあらず。また害せじとおもふとも、百人・千人を殺すこともあるべし」(歎異抄・親鸞)
『オデュッセイア』でもセイレーンの島に近づく際に、オデュッセイアは縛り付けを部下たちに命じる。意志の弱さを知っていたからこその行動。
人は意志の産物ではなく、自分を取り巻いてきた環境と状況の産物であることが昔の人も知っていたわけです。
技法25 教科書
教科書で学ぶことは必要としています。そのなかで、おすすめしていたのが、「やわらかアカデミズム」シリーズ、「有斐閣アルマ」シリーズ、「学ぶ人のために」シリーズ。
それぞれが活用したいと思える技法がある
55の技法すべてを活用する必要はなくて、読んでいってこれは取り入れたい!と思った技法を参考にする読み方がおすすめ。かなり重厚なので、これまでの人類の叡智を浴びることができます。
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