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【全9作】カズオ・イシグロのおすすめ小説!なにから読むべきか代表作をはじめ全作品を解説

カズオ・イシグロはなぜ世界的に評価されているのか?

何作か読んでみようとしたものの、最後まで読めなかったんですね。でもどうにか読了せねばと、どっぷりとカズオ・イシグロの世界に入り込んでみました。
全作品を読んでの感想になりますが、おすすめ順で紹介していきます。

おすすめ1位:『わたしを離さないで』

カズオ・イシグロの代表作といったら、『わたしを離さないで』でしょう。
孤児院のヘールシャムが舞台。キャシー、トミー、ルースの3人がメインの登場人物。

完成度が高くて一気に読み進めることができると思います。さらに「生きるとは何か?」といった人間の根源に迫る問いを、考えさせられてしまうのです。何度も読みたい作品。

おすすめ2位:『クララとお日さま』

AF(人工親友)と呼ばれる人型ロボットが売買される近未来を描くSF作品。カズオ・イシグロ作品のなかでは、かなり読みやすいです。

AFであるクララは、ショーウィンドウでまだ見ぬ子供との出会いを待ち望んでいます。そして、ジョジーという少女の家に引き取られることになります。この2人の関係が、いびつでありながら、つながりを感じられるんですね。そして格差社会でどう生きるかといったテーマが浮かび上がってきます。

おすすめ3位:『日の名残り』

執事のスティーブンスは、主人に休暇を提案されて、6日間の自動車旅行に出かけることになります。旅をしながら1920年代から1930年代にかけての過去を回想していく。

淡々とした描写なのですがなぜか読ませる。実直なスティーブンスが愛おしくなってくる。カズオ・イシグロが人物描写が巧みな作家であることがわかる作品です。

おすすめ4位:『浮世の画家』

戦時中に一斉を風靡した画家の小野は、戦後も同じ価値観を捨てられずにもがいています。
時代に翻弄され、自分が犯した罪に向き合えない哀しさが漂う作品です。

おすすめ5位:『忘れられた巨人』

アーサー王亡き後のブリテンが舞台。ドラゴンの存在によって、記憶が失われていて、民族間の恨みはないものとされています。アクセルとベアトリスの老夫婦が旅を続ける。その目的は、遠い地で暮らす息子に会うため。若い戦士や鬼に襲われた少年、老騎士といった人たちと出会いながら、目指す先は?

記憶はアイデンティティと密接にかかわり、その人を形作るものだと思わされる作品です。

おすすめ6位:『わたしたちが孤児だったころ』

戦時中の上海を舞台に、探偵であるバンクスが両親の行方を捜索する。バンクスが10歳のころ、貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった母が謎の失踪を遂げていたのです。

探偵小説の体裁ではあるけれど、やはり記憶の歪みと喪失が描かれていきます。記憶と過去をめぐる至高の冒険譚になっています。

おすすめ7位:『夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』

音楽にまつわる5つの短編集。記憶の改ざん物語もあれば、コメディ要素が強い作品もあり、カズオ・イシグロのエッセンスを楽しめます。

おすすめ8位:『充たされざる者』

世界的ピアニストであるライダーは、演奏旅行であるヨーロッパの街を訪れ、不思議な夜を過ごします。日程や演目さえ彼には定かでない状態です。だけど、街の人たちにとっては、さまざまな期待を乗せた演奏会だということが分かってきます。

カズオ・イシグロ上級者に向けた作品と言っていいでしょう。

おすすめ9位:『遠い山なみの光』

デビュー作。戦後、故郷を捨てて渡英したことが、娘が自殺する原因を作ってしまったのではないかと回想する母の物語です。この時点で、記憶の話になっているわけです。カズオ・イシグロが日本で生活していたときの記憶を書き記しておかねばならないと感じて、生まれた作品。

番外編:『カズオ・イシグロ入門』

読みにくさもあるけれど作品の深みがあるカズオ・イシグロ。本書では、信頼出来ない語り手、不確かな記憶、重層的な世界、現実世界の暗喩といったように、カズオ・イシグロ作品のエッセンスを解説。入門書としてうってつけの内容になっています。

カズオ・イシグロ作品紹介【ネタバレ】

全9作についてネタバレ紹介をまとめていきます。

目次

『わたしを離さないで』ネタバレ

孤児院のヘールシャムにいる子供たちは、実は臓器提供が決まっているんですね。
キャシー、トミー、ルースの3人をはじめ、クローンなんです。なんともおぞましい世界。

この話が不思議なのは、子供たち自身は臓器提供する運命を受け入れていることなんですよね。

ただ先生のなかには、おかしいのではないか?疑問を呈する人もいます。ピーターという子が「映画俳優になりたい!」と夢を語る場面で、先生がはっきり言わなくていけないと憤る場面があるんですね。

「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。それが問題です。形ばかり教わっていても、誰一人、ほんとうに理解しているとは思えません。そういう現状をよしとしておられる方々も一部にいるようですが、わたしはいやです。あなた方には見苦しい人生を送ってほしくはありません。そのために正しく知っておいてほしい」

運命に抗うことができるのか。切ない余韻が残ります。

『クララとお日さま』ネタバレ

格差社会になっている現状があるなかで、だれもが固定観念を持って生きている。向上処置というものがあり、受けるか受けないかで、まずその後の進路が確定しまうのです。向上処置にはどうやら副作用があることもわかりはじめます。そしてジョジーの母親は、深い悲しみを負っていることが判明していきます。

クララの純粋な思いは届くのか。これは全身全霊で、純粋な善意を持って生きたAFの物語。読後、さまざまな感情が押し寄せることは間違いないと思います。

『日の名残り』ネタバレ

スティーブンスは仕事へのプライドが高い人物で、当時の主人であったダーリントン卿を尊敬していました。輝かしい過去の栄光。

しかしそれはどうやら美化されすぎた記憶であることがわかってきます。戦時中になにがあったのか。

旅ではかつでの同僚であるミス・ケントンに会うのですが、2人の会話から記憶がズレていることが判明してくる作りになっています。記憶はときに変容して、自分自身をも騙してしまうことがわかってきます。

『浮世の画家』ネタバレ

おじいちゃんの絵が見たいと、幼い孫にしつこく言われても、絵を見せない。この行動一つを見ても、画家の小野が過去を封印していることがわかります。

戦時中、そのときの価値観で作品を作り続けていて、体制に迎合していたことが判明します。だからこそ評価を受けたものの、戦後、社会の価値観は一変する。

過去を見つけることの難しさを感じさせます。

『忘れられた巨人』ネタバレ

老夫婦のやり取りが微笑ましいんですね。

「おまえへの思いは、わたしの心の中にちゃんとある。何を思い出そうと、何を忘れようと、それだけはいつもちゃんとある」
「わたしたちがいま心に感じてることって、この雨粒のようなものじゃないかしら。記憶がなくなったら、わたしたちの愛も干上がって消えていくんじゃないかしら」

冒頭で川の船頭が、2人がきわめて強い愛情で結ばれていることが認められれば、2人一緒に島を渡れると話します。老夫婦の愛は、記憶を取り戻しても成り立つのか、この旅によって試されていきます。

『わたしたちが孤児だったころ』ネタバレ

現実と向き合うのには恐怖があります。だから、バンクスは物語として自分の世界を形づくっていることがわかってきます。今ある自分の地位が、たくさんの人の犠牲の上で成り立っていることに目を向けずに、自分だけをただただ正当化し続けてしまう。そして、現実が押し寄せたとき、バンクスはどう対峙するのか。

『夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』ネタバレ

驚くような展開が待っているというよりは、上質でじっくり読んでみたい作品がそろっています。

『充たされざる者』ネタバレ

ライダーの過去への後悔や挫折が、登場人物として現れてくる仕掛けになっています。会話劇を中心に展開されていくかなり実験的な小説です。たとえばエレベーターのなかの会話のはずなのに、かなり長々と話していたりします。時間や空間がねじれながら、物語は進んでいきます。

『遠い山なみの光』ネタバレ

子育てこそ、正解がない営みであり、記憶の改竄が行われやすいため、カズオ・イシグロらしいテーマだといえます。

ノーベル文学賞作家であるカズオ・イシグロの世界へ

2017年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ、ぜひその世界に浸ってほしいですし、それだけの価値がある作品だと思います。『クララのおひさま』『わたしを離さないで』は、個人的なツートップなので、特におすすめ!新作が楽しみな作家となりました。

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