日本SF界の大家である小松左京。『日本沈没』をはじめとして、数々の傑作SFを世に送り出しています。
突拍子のある設定でありながら、どんどん作品世界に引き込まれてしまう。日本は沈むわ、地球外生命体が襲ってくるわ、もうスケールがとにかくでかい。
日本の作家でこれほどの想像力でSFを描いてたのかと圧倒されます。
小松左京を読まないのはもったいない!おすすめしたい作品を紹介していきます!
- 『日本沈没』
- 『復活の日』
- 『果しなき流れの果に』
- 『ゴルディアスの結び目』
- 『首都消失』
- 『さよならジュピター』
- 『日本売ります』
- 『地には平和を』
- 『日本アパッチ族』
- 『エスパイ』
- 『継ぐのは誰か?』
- 『見知らぬ明日』
- 『虚無回廊』
- 『SF魂』
- 日本SFの最高峰の世界へ
『日本沈没』
TBSでもドラマ化されている小松左京の代表作。
日本が沈没するというトンデモない設定ですが、科学的な考証を踏まえているからこそリアリティがあります。グッと引き込まれていくんですね。
じわじわと日本の異変が描写されるなかで、関東地方での大地震など、迫力ある描写があります。
ドン!と下から突き上げるような、すごい衝撃がおそってきたのはその瞬間だった。おやと思うひまもなく、巨人のハンマーで、下から上にむかってたたきのめされるような衝撃が、ドン!ドン!ドン!ドン!と、つづけざまに、つき上げてきた。
作品発表当時、大きな話題を呼んだ日本SFの傑作。いま読んでも色あせません。
『復活の日』
ある研究所の事故により、新型ウイルスが世界中で拡散し、世界中で謎の突然死が相次ぐ。人類の存続をかけて2人の男が立ち上がる。
日本だけではなくアメリカ大統領が出てきて、世界を舞台にしたスケールの大きな物語が展開されます。ワクチンを見つけることができずに、ウィルスの活動できない南極へ向かおうとするなど、いやぁ飽きさせません。
本作は、大阪サンケイビルにあったアメリカ文化センターで、『ロンドンタイムス』に掲載されていた「ロンドンでペスト発生」という記事を読んだことがきっかけで生まれたそうです。
コロナ禍にも注目を集めた作品。小松左京の先見さがわかります。
『果しなき流れの果に』
白亜紀の地層から出土した砂時計。その砂は、いつまでも永遠に落ちつづけている…。
果てしないスペースオペラ大作!10億年のスケールで繰り広げられる、時空を超えた戦いが展開されていきます。恐竜が跋扈する中生代、20世紀半ばの日本、300年後の静止軌道上に浮かぶ定点衛星といったように、舞台は目まぐるしく変わっていくんですね。
宇宙エレベーターの構想が出てくるなど、小松左京作品は、SFの最先端をいっていたことがわかります。
小松左京自身も、「技術や文明から生命、知性、宇宙そのものを描くことだという思いが強烈にあった」と話していて、描きたいテーマが詰め込まれた作品。
『ゴルディアスの結び目』
短編集でおすすめしたいのが本作です。
表題作の「ゴルディアスの結び目」は、サイコ探偵が憑き物に囚われた少女の精神世界に侵入する話。宇宙の視点から人間は存在する意味があるのか?が問われます。
「岬にて」は、過去を捨てた人たちが共同生活を送る島に若者との交流が描かれます。「すぺるむ・さぴえんすの冒険」は宇宙の真理を示された男を描き、「あなろぐ・らゔ」で斬新な視点で宇宙創造を描きます。
『首都消失』
東京が謎の霧に包まれ、突如として音信不通になってしまった…。
政治、経済、防衛が機能しなくなった場合にどうなるのか。緻密な設定が展開されます。
第6回日本SF大賞を受賞したパニック大作!
『さよならジュピター』
22世紀。木星太陽化計画の主任・本田英二は、彗星の数が激減している理由を探査するため、2年の旅に出ることに。
本田の恋人がテロリストになって襲撃してきたり、地球脱出計画を実行したりと、かなり目まぐるしい展開が待ち受けています。
映画化が前提でプロジェクトが進行し、小松左京が製作、原作、脚本、総監督の四役をこなしています。
『日本売ります』
サクッと読める短編集。
表題作の「日本売ります」がおすすめ。
ペテン師の男の独白ではじまり、日本は売られて、どうやら日本列島とそこに住んでる人や街もろとも、煙のように消え去ってしまったというのです。日本を売ってしまったのだと…。相手は、はるか彼方の星に住んでいる人物。所有してるものがいるなら、お金で買えないはずはないという主張が、ラストにつながっていきます。持ってる奴がいるから買う奴がいる。土地はみんなのものだと空気や太陽光みたいにしておくべきだったのかもしれません。
「紙か髪か」は、ある日突然、この世界から紙がなくなってしまった世界を描きます。「ダブル三角」は男女平等どころか、女性が強くなった世界が舞台。会社のトイレがもう一つの世界に通じていることに気づく「四次元トイレ」。むいてもむいてもなくならない「四次元ラッキョウ」。地球になった男が主人公の「なんにでも好きなものになれる力」。
かなりSFでヘンテコ設定の話が盛りだくさん。気軽に読めます!
『地には平和を』
あと5時間でこの世が消滅する!?
時空を自由に行き来できるとしたら、進化や歴史を管理下に置くことに正当性はあるのか?をテーマにしています。小松左京がSFマガジンの投稿用に書き記し、直木賞候補にもなった作品。
『日本アパッチ族』
大阪の砲兵工廠跡に鉄を食う人類があらわられて、やがて日本を滅亡させてしまう。そして主人公は失業罪になって社会から追放されることに…。
クズ鉄泥棒や自身の飢餓体験が反映された、小松左京の初めての長編小説!
『エスパイ』
エスパーで組織された秘密工作機関が、世界を動乱に陥れようとする謎のエスパー集団と暗闘を繰り広げる。
ソ連首相暗殺計画を未然に防ぐというミッションがくだされて、ハラハラの連続。娯楽スパイ小説として一気読みできます!
『継ぐのは誰か?』
人間という種の成長はあるのか。技術文明の発展速度に比べて、人間の叡智はそれに追いついていない。
「チャーリーを殺す」という予告殺人があいつぎ、それは現実のものになってしまうのです。アメリカの大学キャンパスを舞台にしたミステリ仕立てのSF青春小説。
『見知らぬ明日』
冷静のさなかに東西に分かれてお互い情報を出さないという状況。そういう中に宇宙人が侵略してきたら…。
国際政治や中国問題を扱った作品です!
『虚無回廊』
地球から5.8光年離れた宇宙空間に、突如として長さ2光年、直径1.2光年という驚異的なスケールの円筒形の物体が出現する。SSと名付けられた物体は少しずつ移動しながら、出現と消滅を繰り返す。
SSから信号が発信されていて、科学者たちは探査機を送り込もうと計画を立てます。そして、AIに魂を与えたAE(人工実存)が開発されます。AEを宇宙探査に送り込みますが、そこには複数の地球外知的生命体の姿があった…。
未完の大作。小松左京が最後に描きたかったものは?
『SF魂』
小松左京、自らが語る自伝。
「僕がSFを書き始めた頃は、傍流どころか、文壇主流からは「児戯に等しい」と、まったく相手にされなかった」
SF黎明期を切り開いたことがよくわかります。SF魂というタイトルがしっくりくる内容です!
日本SFの最高峰の世界へ
小松左京が日本SFの歴史とほぼイコールなことがわかります。とにかく扱っているテーマが幅広い!そして深い。
このタイミングで、ぜひ手にとってほしいと思います。
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