東野圭吾の新作『あなたが誰かを殺した』が刊行されました!
『あなたが誰かを殺した』は、加賀恭一郎が登場するシリーズ12作目。今回は、『あなたが誰かを殺した』あらすじ・ネタバレ紹介していきます。
『あなたが誰かを殺した』あらすじ
ある夏の日、高級別荘地で起きた連続殺人事件。複数の家族が集って、パーティーが開かれたのですが、一夜明けると、凄惨な状況になっていた…。
この事件の関係者がそろって、「検証会」が行われことになります。加賀恭一郎は休暇中に、この地を訪れ、「検証会」に参加します。家族が奪われたのは偶然なのか、必然なのか。これぞミステリーの定番という展開を見せてくれます!
『あなたが誰かを殺した』登場人物
- 栗原正則…公認会計士
- 栗原由美子…青山で美容院を営む
- 栗原朋香…中学3年生。札幌の寄宿舎付きの学校に通う
- 櫻木洋一…櫻木病院の院長
- 櫻木千鶴…洋一の妻
- 櫻木理恵…25歳。櫻木病院で事務員として勤務
- 的場雅也…理恵の婚約者。櫻木病院の内科医
- 山之内静枝…40歳すぎの女性
- 鷲尾春那…静枝の姪。看護士
- 鷲尾英輔…薬剤師。春那とは職場結婚
- 高塚俊策…別荘パーティーの発起人
- 高塚桂子…俊策の妻
- 小坂均…高塚会長のもとで働くも出戻り
- 小坂七海…均の妻
- 小坂海斗…小学6年生
- 桧川大志…殺人事件の犯人として自白
- 加賀恭一郎…警視庁刑事部捜査第一課
- 金森登紀子…春那の先輩看護士。『赤い指』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』で登場
- 久納真穂…朋香が通う寄宿舎の指導員
- 榊…地元の刑事課長
『あなたが誰かを殺した』のテーマは?
表と裏、人間の二面性を扱っていることが、物語の冒頭から明示されます。そして謎が解明されるたびに、登場人物たちの意外な一面を見せつけられることになります。
ある人物の言葉が、本作の展開を暗示しています。
「人間というのは複雑です。裏表があるのは当然で、人によっては裏の裏があったり、そのまた裏を隠しています。一筋縄ではいきません」
『あなたが誰かを殺した』ネタバレ解説
ここからは起承転結に分けて、あらすじのネタバレ解説をしていきます。
起:高級別荘地で殺人事件が起こる
8月8日、高級別荘地でパーティーが行われます。そこで惨劇が起こるのです。パーティーが終わったあと、複数の犠牲者が出てしまうのです。
犠牲者は、櫻木洋一、鷲尾英輔、高塚桂子、栗原正則、栗原由美子。重症だったのは、的場雅也。
しかし事件は意外な展開を迎えます。なんと、桧川という男が、自白してきたのです。事件の犯人だと名乗るものの、詳細をまったく語ることはない。真相は謎に包まれたままです。
そこで残された遺族は、高塚俊策の呼びかけによって、「検証会」を行うことにします。事件の関係者を集めて、いったいなにが起こったのか?を解き明かそうというのです。
同行者2名までが認められて、地元の刑事課長である榊、寄宿舎指導員の久納真穂、そして加賀恭一郎が参加します。
第三者の視点で検証会の進行役を担当するのは、加賀恭一郎になります。
承︰事件遺族による検証会にて
検証会がはじまります。パーティーが終わってからの行動を、それぞれが証言していきます。
櫻木千鶴の証言。パーティーが終わったあと、櫻木洋一、櫻木理恵、的場雅也と、庭のテラスでウィスキーを飲んでいた。千鶴はリビングに、理恵はシャワーで戻る。雅也は、「洋一がコーヒー飲みたい」と言っていると、千鶴のところへ。千鶴がコーヒを淹れていたら悲鳴が聴こえた。洋一が刺されて血だらけ。雅也は栗原家の近くで後ろから体当たりを受けて刺されてしまった。
- 0時5分 通報
- 0時11分 救急車が櫻木家別荘に到着
- 0時13分 地域課のパトカーが到着
- 0時22分 雅也を発見
鷲尾春那の証言。二階の寝室にいたらサイレンの音を聞いて、英輔が出ていった。なかなか戻ってこないので外に出ると、裏庭に英輔が倒れているのを発見した。
- 0時43分 警察が到着
- 0時55分 救急車搬送
高塚俊策の証言。バーに小坂均と高塚俊策が向かった。小坂七海が車で送った。飲み始めて1時間くらいしたら騒ぎが起こった。近くで待機していた七海が車で迎えにきてくれた。
- 1時5分 通報して高塚桂子の遺体を確認
小坂海斗の証言。深夜、窓から外を見たら、駐車場を横切った人影を見た。
- 12時すぎ 人影を見た
栗原朋香の証言。真夜中にインターホンのチャイムが鳴った。三度目くらいで目が覚めた。両親の寝室に行くものの、いない。玄関のドアを開けると、警察がいて、刺されている両親を見た。
- 1時すぎ 警官がインターホンを鳴らす
- 1時45分 インターホンを鳴らす、そこで2人の遺体を発見
ここまで時系列をざっくり整理していきます。
- 0時5分 櫻木家別荘の庭 犠牲者:櫻木洋一 発見者:櫻木千鶴、理恵、的場雅也
- 0時22分 栗原家別荘近く 犠牲者:的場雅也 発見者:警察官
- 0時43分 山之内家裏庭 犠牲者:鷲尾英輔 発見者:鷲尾春那
- 1時5分 高塚家別荘居間 犠牲者:高塚桂子 発見者:高塚俊策、小坂均、小坂七海
- 1時45分 栗原家別荘車庫 犠牲者:栗原正則、由美子 発見者:警察官
そして防犯カメラの情報が明確になります。
- 20時12分 山之内家の様子を窺う
- 20時33分 高塚家別荘の防犯カメラのコードを切断 ※防犯カメラのSDカードを抜き取った?
- 23時50分 櫻木家別荘前で道路を横断
- 0時15分 山之内家防犯カメラ前を西に向かって通過
- 0時30分 グリーンゲーブルズの前を通過
さらに被害にあった順番が、4つのパターンだとわかります。
- 1 栗原正則・由美子→ 櫻木洋一→ 的場雅也→ 高塚桂子→ 鷲尾英輔
- 2 栗原正則・由美子→ 櫻木洋一→ 的場雅也→ 鷲尾英輔→ 高塚桂子
- 1 高塚桂子→ 栗原正則・由美子→ 櫻木洋一→ 的場雅也→ 鷲尾英輔
- 1 栗原正則・由美子→ 高塚桂子→ 櫻木洋一→ 的場雅也→ 鷲尾英輔
転︰あなたが誰かを殺した
そして奇妙なのが「あなたが誰かを殺した」というメッセージが、残された人たちに送られていたこと。千鶴、静枝、的場、春那、小坂、朋香、俊策にも送られていたのです。
ここからそれぞれの人物の裏側が見えてきます。
朋香の証言。栗原由美子への嫌がらせがあった。ヘアデザインのコンテストで知り合いのアイデアを盗用したという疑惑がある。栗原正則は、資産家の男性が亡くなった離婚調停中の妻と関係を持ち、会社資産をだまし取ったとして詐欺容疑で告発された。その女性と共犯だった?という噂がある。飼い猫も死亡している
久能は、桧川の妹だった…。検証会があると聞いて、朋香に相談して、潜り込ませてもらった。桧川は、財務省の勤める父、専業主婦の母との間に生まれた。成績が上がらずに叱責された。妹を強姦しようとして、父に折檻。そこから離れに隔離されていた。
加賀は、ひとつの推論を立てていました。被害者のなかには殺されても当然といわれている者が何人かいたわけです。すなわち、犯人は誰かにそそのかされたのではないかと。
ここまでの疑問点が整理されます。
- なぜ犯人は遠く離れた別荘地を犯行現場を選んだのか。
- なぜ栗原夫妻が車庫にいることがわかったのか。
- なぜ犯人は、高塚桂子さんが屋内で一人きりだとわかったのか。
- 逮捕されるつもりなのに、一部の防犯カメラを無効化したのはなぜか。
- 高塚桂子さん殺害、的場雅也さん刺傷に用いたナイフはどこに消えたのか。
- 高塚桂子さんの手にあった紙片は何か。元の紙は誰が持ち去ったのか。
そそのかした人物は、積極的に犯行に関わっていて、限りなく共犯に近いと、加賀は断言します。なぜなら、1は、共犯者が指定したから。2、3は共犯者が教えたから。4は共犯者の姿を映さないため。5は共犯者が処分した。6も共犯者が持ち去ったというのです。
そしてここから検証の場は、犯人捜しになっていきます。
結:恐ろしい真相
加賀と関係者は、被害があった現場を見て回ります。
栗原家。車庫のなかに、金の延べ板が隠されていたことが判明。桧川はシャッターのなかに潜んでいた。パーティーから戻って、玄関の鍵が開いていることに気づき、栗原夫婦は車庫を見に行った。
七海の証言。山之内静枝と栗原正則は、密会していた。桂子夫人が話していた。
櫻木家。的場の父親は、櫻木病院に入院して、櫻木洋一の誤診で命を落とした。的場は、復讐のために、櫻木病院に潜り込んだ。
海斗は、犯人を目撃していた。実際には西に消えた。
そしてついに犯人が明かされます。犯人は、朋香でした。親は仮面夫婦で、どちらも離婚後、朋香を引き取ることは考えていなかったんですね。ルビーが亡くなったのを見て、餌もあげていないことがわかり、将来の自分の姿だと思ったといいます。そのとき、ネットで死刑願望というキーワードを見て、マリスすなわち桧川とつながりが生まれたのです。
- 夕方、防犯カメラのSDカードを抜く
- 別荘の合鍵を確保して、出かけるときに玄関の鍵を外した
- 桂子を手紙で誘い出す
- 両親が車庫に入ったことを、桧川に連絡する
- ナイフで桂子を刺す
- 的場があらわれ刺す
だが、謎は2つ残っていると、加賀は言います。
- ナイフの数、残る1本はどこへ消えたのか?
- 被害者の数、桧川と朋香が違う
「あなたが誰かを殺した、違うでしょうか?」と春那にたずねます。春那が、鷲尾英輔を殺したことがわかります。静枝は英輔とも関係を持っていたのです。
加賀にウソは通用しない。そのことを感じさせながら、事件は幕を閉じるのです。
パズルのような本格トリック小説
いやぁここまでトリックに特化したミステリー小説を、東野圭吾が出してくるとは思いませんでした。しかも加賀が出てくるとは。緻密です。
泣けるとか感動とかを期待すると、肩透かしかもしれませんが、そもそも東野圭吾はミステリー作家で、驚きのトリックを仕掛けるのがうまいんですね。いまの東野圭吾が、ミステリー小説にがっつり取り組んだことがうれしい。ぜひ読んでみてほしいです!
コメント