『オッペンハイマー』は、クリストファー・ノーラン監督の作品。
原爆の父といわれるオッペンハイマーの生涯を追っていきます。第96回アカデミー賞で最多7冠。重厚な世界観が魅力です。
『オッペンハイマー』について、ネタバレ・あらすじを解説しながら、ラストの展開も考察していきます!
- 『オッペンハイマー』あらすじ・見どころ
- 『オッペンハイマー』データ
- 『オッペンハイマー』登場人物
- 『オッペンハイマー』ネタバレ解説
- 映画『オッペンハイマー』の原作は?
- 映画『オッペンハイマー』関連おすすめ本
- 複雑でありながらわかりやすい作品
『オッペンハイマー』あらすじ・見どころ
アメリカでマンハッタン計画が進められます。それは原子爆弾をドイツよりも先に開発しようとする計画でした。
マンハッタン計画は、天才科学者オッペンハイマーを中心に進められます。そして原子爆弾の開発に成功します。だが、原子爆弾の投下によって起こった悲劇に、オッペンハイマーは苦悩していきます…。
監督は『TENET』『インセプション』『ダークナイト』といった傑作を生み出すクリストファー・ノーラン。本作は、第96回アカデミー賞で最多7部門を受賞しました。
『オッペンハイマー』データ
『オッペンハイマー』スタッフ
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:キリアン・マーフィ、エミリー・ブラント、ロバート・ダウニー・Jr、オールデン・エアエンライク、スコット・グライムズ、ジャック・クエイド、フローレンス・ピュー、ゲイリー・オールドマン、トム・コンティ、マット・デイモン、ほか
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
『オッペンハイマー』公開データ
2024年3月29日(金)より全国ロードショー
『オッペンハイマー』アカデミー賞受賞部門
アカデミー賞で受賞したのは以下になります。
- 作品賞:『オッペンハイマー』
- 監督賞: クリストファー・ノーラン
- 主演男優賞:キリアン・マーフィ
- 助演男優賞:ロバート・ダウニー・Jr.
- 撮影賞:ホイテ・バン・ホイテマ
- 編集賞:ジェニファー・レイム
- 作曲賞:ルドウィグ・ゴランソン
『オッペンハイマー』登場人物
『オッペンハイマー』登場人物を確認していきます。
科学者
- ロバート・オッペンハイマー:原爆の父といわれる科学者。
- アーネスト・ローレンス:オッペンハイマーと意気投合した科学者。スポンサーを引っ張る。のちに袂を分かつ。
- エドワード・テラー:水爆実験を推進する。
- ニールス・ボーア:量子力学の親といわれる科学者。ユダヤ人。原爆を管理する国際協定を呼びかけた。
- イジドール・イザーク・ラービ:マグネトロンを作った。CERNを創設。ブラウン管や真空管につながる。
- キャサリン・オッペンハイマー:オッペンハイマーの妻。科学者でもあった。
政治家
- ルイス・ストローズ:米原子力委員会委員長。オッペンハイマーを陥れようとする。
- ジーン・タットロック:オッペンハイマーと恋仲に。
- レスリー・グローブス:マンハッタン計画の責任者。オッペンハイマーを抜てきした。
- ロジャー・ロッブ:オッペンハイマーを追い詰める弁護士。
- ケネス・ニコルズ:グローブスのもとにいたが、のちにストローズ側へ。
- ボリス・パッシュ:オッペンハイマーが共産主義に傾倒していたと証言する。
- ハリー・トルーマン:原子爆弾投下時のアメリカ大統領。
『オッペンハイマー』ネタバレ解説
ここから『オッペンハイマー』のネタバレ解説をしていきます!
1.どんな構成なのか?
映画『オッペンハイマー』の構成を整理していきましょう。
- カラー:1954年オッペンハイマーの聴聞会
- モノクロ:1959年ストローズの公聴会
この2つが、時系列をバラバラにしながら、同時に描かれていくんですね。オッペンハイマーが原爆を開発して、日本へ投下することについては、聴聞会や公聴会の過去回想になります。
2.オッペンハイマーの大学時代
ケンブリッジ大学時代から。オッペンハイマーは成果が出せずに、ホームシックに悩んでいたんですね。パトリック・ブラケット教授が追い詰めてきます。リンゴに毒を注入して、オッペンハイマーを殺害させる場面にも登場。
オッペンハイマーは、ニールス・ボーアに出会います。理論中心の物理学を学ぶようにアドバイスを受けて、開眼ともいえるほど、才能を発揮していきます。
ドイツの科学者ヴェルナー・ハイゼンベルクも出てきます。ハイゼンベルクはのちにナチスに関わる人物です。
オッペンハイマーは女性関係で依存していきます。ジーン・タトロックは病み気質、のちに妻となるキティはアルコール中毒。
3.核開発へ
オッペンハイマーは、ロスアラモス国立研究所所長に就任します。ナチスに対抗するため、アメリカの科学者たちを集結させていきます。そして世界初の核実験が行われていきます。
トリニティ実験は、新しい物理学の一つの到達点となります。原爆が生まれたのです。そして広島、長崎に原爆が落とされてしまうのです…。
4.原爆投下後の世界で
オッペンハイマーは、原爆の被害者のことが頭から離れません。原子力委員会のアドバイザーになりますが、水爆反対に回っていきます。
オッペンハイマーは力を持ちすぎました。水爆推進の科学者や政府には都合が悪かったため、排除の動きがしのびよってきます。
5.オッペンハイマーへの聴聞会
1954年、オッペンハイマーが共産党と関わりがあるという疑惑のため、聴聞会が行われます。妻や女性、そのほかも共産党員が周りにいたんですね。
調査資料の分厚い機密ファイルがあるものの、裁判ではないので、オッペンハイマーや弁護側に開示することはありません。このファイルはボーデンが作成し、ロジャー・ロップがオッペンハイマーを追い詰めていきます。
その裏にいたのは、ストローズでした。1949年公開セッションにて、アイソトープについて、オッペンハイマーはストローズを小馬鹿にしたような話をするんですね。ここでストローズは、オッペンハイマーに怒りの感情が沸き起こっていたのです。
6.ストローズへの公聴会
1959年、アイゼンハワー大統領時代。ストローズは出世するはずが、ふさわしくないとオッペンハイマーの聴聞会について追求されていきます。
水爆の父テラーは、ストローズ側につき、オッペンハイマーを非難します。当初は友好的な証言が続きます…。
7.聴聞会と公聴会の展開がリンクしていく
真実はだれが告げてくれるのか。ストローズの公聴会にて、デヴィッド・ヒルという人物が、オッペンハイマーを非難せずに、ストローズの承認欲求や傲慢さを指摘します。
そこからオッペンハイマーの聴聞会でも誠意ある発言が重なっていき、ストローズ側にはネガティブな意見であふれていきます。49対46でストローズは敗れてしまいます。
オッペンハイマーは、核の抑止や清算を考えた発言・行動を進めていきます。彼らはオッペンハイマーの誠実な姿を見ていたわけです。
1963年、オッペンハイマーはフェルミ賞を受賞。オッペンハイマーは、テラーと握手をします。
映画『オッペンハイマー』の原作は?
映画『オッペンハイマー』には、原作があります。ハヤカワ文庫から出ている3冊です。
- 『オッペンハイマー 上 異才』
- 『オッペンハイマー 中 原爆』
- 『オッペンハイマー 下 贖罪』
オッペンハイマーの幼少期からたどり、才能を開花していく過程を追っていきます。さらにマンハッタン計画や裁判まで、オッペンハイマーの人生から、原爆がもたらした世界の変貌が見えてきます。2006年ピュリッツァー賞受賞作品。
映画よりさらに深く背景が描かれるので、ぜひ読んでみてほしいと思います!
映画『オッペンハイマー』関連おすすめ本
映画『オッペンハイマー』を鑑賞前後で、読んでおきたいおすすめ本を紹介します!
『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』
日本人の著者によるオッペンハイマー評伝。丹念に資料に当たるだけではなく、オッペンハイマーの周辺人物に聞き込みがあって、重厚な内容です。
『オッペンハイマー 原爆の父はなぜ水爆開発に反対したか』
オッペンハイマーに確実な知識を身に着けたいなら、本書はおすすめです。新書なので完結にオッペンハイマーについて知ることができます。
『原子力は誰のものか』
オッペンハイマーが登壇した6つのスピーチ。オッペンハイマーの貴重な肉声になります。
『ヒロシマ・ナガサキのまえにーオッペンハイマーと原子爆弾ー』
アメリカの視点から原子爆弾はどう見えているのか? アメリカで放送されたドキュメンタリー映画をもとに、文書、写真、科学者たちのインタビューで構成されています。
複雑でありながらわかりやすい作品
映画オッペンハイマーは、重厚な作品です。少し複雑さがありますが、時系列を把握していれば、ものすごく見やすい内容になっています。
ここから世界は変容していくわけで、鑑賞する価値がある作品なのは間違いありません!
オッペンハイマーの関連本も紹介していますので、あわせて読んでみてほしいと思います。