人気作家であり、まもなく著書が100冊になる東野圭吾。初期はトリック重視のミステリー作品が多かったのですが、登場人物の心に寄り添う作品になっていき、感動を呼ぶミステリー作品は、多くの読者の支持を集めています。
エンタメあり社会派ありと作風は幅広く作品数も多い。そうするとどの作品を読めばいいのかが迷うところ。
そこで、個人的ベスト5を含めて、カテゴリー別におすすめ作品を紹介したいと思います!
東野圭吾 人気シリーズ作
東野圭吾には、人気シリーズがたくさんあります。主なシリーズを紹介します!
ガリレオシリーズ
天才物理学者・湯川学がさまざまな謎を解き明かすシリーズ。福山雅治主演で、映像化されています。
シリーズ前半は理系ミステリーとして、トリックに魅力がある作品が多いです。シリーズ後半は、湯川の人物像にもフォーカスが当たり、人情味のあふれる作品が増えていきます。
長編でおすすめしたいのは、もはや定番ですが『容疑者Xの献身』を。短編は『ガリレオの苦悩』を推したいです!
加賀恭一郎シリーズ
刑事・加賀恭一郎が登場するシリーズ。阿部寛主演でドラマ化・映画化がされています!
1986年刊行の『卒業』からはじまっていて、共通しているのは、加賀恭一郎が登場すること。長い期間にわたって描かれているだけあって、加賀恭一郎シリーズは作品によって色合いが違います。
「泣けるミステリパターン」「謎解きミステリパターン」と、大きく2つに分けられるんですね。
「泣けるミステリパターン」の代表作は、『新参者』『赤い指』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』『希望の糸』。「謎解きミステリパターン」は、『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』『あなたが誰かを殺した』『悪意』となります。
ただしシリーズをすべて読むと、家族の再生の話を描き続けている…ということを感じます。それはひとえに加賀恭一郎という人物の深みのあるやさしさがあるからでしょう。
連作短編でドラマ化もされている『新参者』から読んでみてほしいと思います!
マスカレード シリーズ
一流ホテル「コルテシア東京」を舞台にしているのが、マスカレードシリーズ。捜査一課の刑事・新田浩介と、女性フロントクラーク・山岸尚美が、事件を解決していきます。
マスカレードシリーズは、木村拓哉&長澤まさみの強力タッグで映画化されました。
『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』『マスカレード・ナイト』『マスカレード・ゲーム』の4作があります。
まずはじめに読んでほしいのは、『マスカレード・ホテル』になります。
東野圭吾 個人的ベスト5
まずは個人的な思い入れが強い東野圭吾作品ベスト5から!
1位『白夜行』
小学5年生のとき、桐原亮司は父親が殺害された。だが犯人の決め手はなく、事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子・桐原と、容疑者の娘・雪穂はそれぞれの人生を歩んでいく…。
『白夜行』は、東野圭吾作品のなかでも屈指の人気作。桐原と雪穂の19年を描いていきますが、まぁこの2人の行く末が気になって仕方なくなります。
桐原は自分の人生を「白夜の中を歩いているようなもの」と例えていて、雪穂も自分の人生を「太陽のない夜」だとしているんですね。読んだあとの重厚感がものすごいです。
そして、驚きなのが、この2人の内面描写が一切ないこと。だからこそ、読者は2人の心情を想像して、さらに没入感が増すわけです。内面描写がなくても、人の生き様は描けることを教えてくれる。東野圭吾の巧みさを感じさせる作品です。
2位『新参者』
むちゃくちゃ好みな作品。日本橋を舞台にした連作短編集で、シリーズキャラクターである加賀恭一郎が登場します。
日本橋の片隅で、女性の絞殺死体が発見される。加賀恭一郎がただ事件の真相に迫っていくだけではなく、事件関係者の気持ちに寄り添っていくんですね。そこに街の魅力が伝わってくる構成になっています。
「捜査もしていますよ、もちろん。でも、刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探し出すのも、刑事の役目です」
加賀恭一郎の魅力が伝わる作品です!
3位『沈黙のパレード』
ガリレオシリーズからの1作。
街のパレードにまぎれて犯罪が画策されているのですが、その真相が切ない…。容疑者になるのは普通の人々なんですね。
ガリレオシリーズには傑作『容疑者Xの献身』がありますが、本作も負けず劣らずな内容になっています。『沈黙のパレード』は2022年に映画化が決まっていますので、映像化される前に、ぜひ一読してほしい作品です。
4位『マスカレード・ホテル』
都内で3件の連続殺人事件が起き、次の犯行は「ホテルコルテシア東京」だということが判明…。
捜査一課の刑事・新田浩介が、ホテルに潜入捜査を行うことになります。犯人逮捕しか考えていない新田と、教育係であるホテルマン・山岸尚美のやり取りが楽しいんですよね。
ほかにも一癖も二癖もある宿泊客が登場して、物語の枝葉が広がり、そして連続殺人犯の真相が明かされる構成がたまらないです!木村拓哉、長澤まさみでも映画化された人気作。
5位『どちらかが彼女を殺した』
警察官の妹が、マンションで死体となって発見される。容疑者は2人。妹の親友か、それとも元恋人か…。
東野圭吾には、泣けるミステリーのイメージがあるかと思いますが、初期は本格派な作品が多かったんですね。その中でも、本作は犯人当てに絞った純度の高いミステリー作品。
容疑者は2人なわけですが、最後まで小説内では犯人を明かしてくれないんです。初めて読んだとき、度肝を抜かれました。ヒントはすべて出そろっているわけで、作家と読者との真剣勝負。加賀恭一郎も登場します。
東野圭吾 感涙ミステリー
東野圭吾作品のなかから、切なくて感涙してしまうミステリーを集めました。グッときてしまう作品群です。
『クスノキの番人』
不当な理由で職場を解雇され、罪を犯して逮捕された青年が、伯母からクスノキの番人になることを命じられます。クスノキの番人のもとには、さまざまな願いを持った人が訪れます。
ミステリー作品でありながら、愛情と希望に満ちた物語。人々の思いの力と、クスノキの不思議な力に心を打たれます!
『流星の絆』
洋食店アリアケの子どもたち三兄妹が流星群をこっそり見に行った夜、両親が殺害されてしまう。14年後、三兄妹は詐欺行為を働いていて、事件に関わった男を見つける…。
ただの復讐劇には終わらずに、兄妹の絆を感じさせる展開に切なさを感じてしまいます。
『秘密』
幸せな家庭を築いていた杉田に悲劇が襲う。妻と小学5年生である娘が、長野県でスキーバスの転落事故に巻き込まれてしまった。生き残った娘の体には、妻である直子の魂が宿っていた。
小説のタイトルの意味が明かされたとき、もう感涙必至…。東野圭吾自身が離婚した直後に発表された作品で、広末涼子主演で映画化され大きな話題を呼びました。ちなみに深田恭子主演でのオファーもあったらしいです。
『ナミヤ雑貨の奇蹟』
ある日の深夜、若者3人がお店に忍びこむ。悪事を働いてきたようだが、逃走用の車が故障して、このナミヤ雑貨店に身を隠そうしているのだ。3人は雑貨店の秘密に気づいていく…。
あのときこうしていれば、今は変わっていたのではないのかをテーマにしたタイムトラベルもの。ばらばらかと思ったピースが、ラストに向かってはまっていくのはさすがの展開です!
『容疑者Xの献身』
天才物理学者VS天才数学者という構図になるので、かなり盛り上がりのある作品。そして、天才数学者・石神がある女性を救うために完全犯罪を計画するわけですが、その理由に涙…。
ガリレオシリーズだけではなく、東野圭吾作品のなかでも、完成度の高い人気作です。
『宿命』
殺人事件の捜査にあたった和倉巡査部長は驚愕する。事件の関係者にかつての恋人だった。恋人は幼少期からの因縁のライバル瓜生の妻でもあった。
本作は東野圭吾が語るように、トリックから人間のおもしろさを書くことへの興味が向かっているだけあって、2人の男の因縁ものとしても読ませます。タイトルに込められた意味が、ラスト10ページで明かされる展開をぜひ読んでほしいです!
『赤い指』
妻からの電話で自宅に戻った前原は、少女の死体を発見する。引きこもりの息子が殺害したのだ…。
加賀恭一郎シリーズ作品。家族それぞれの思いが絡まって、親子の絆や家族のあり方が問われます。
『希望の糸』
自由が丘にある喫茶店で、一人の女性が殺害された。周りは「あんないい人はいない」と証言する。だれからも恨まれることはない彼女はなぜ殺されたのか?警察の捜査で容疑者が浮かび上がると、それは常連客の男性で、災害で2人の子どもを亡くしていた…。
ここでフォーカスが当たるのは、加賀恭一郎の従兄弟である松宮。彼の苦悩が描かれていきます。希望の糸がなにを意味しているのかわかったとき、落涙してしまいました。
加賀恭一郎の登場はそこまで多くないものの、家族の物語としてグッとくるところが多く、シリーズ作品を読んでいる感覚を味わえます。
東野圭吾 社会派ミステリー
エンタメ作品でありながら、社会の問題を扱うのが、東野圭吾の魅力。ここからは東野圭吾の社会派ミステリー作品のなかから、おすすめ作を紹介していきます!
『白鳥とコウモリ』
ある弁護士が遺体で発見される…。1人の男が自供して、事件は解決したはずだった。2017年東京、1984年愛知で起こった出来事とは?
罪と罰について東野圭吾が向き合った作品。加害者家族と被害者家族にスポットを当てていて、考えさせられる作品です。
『幻夜』
阪神淡路大震災の混乱にまぎれて、水原雅也は借金返済を迫る叔父を殺害してしまう。新海美冬に殺害現場を目撃されてしまう。2人は上京することになる。
上り詰める女性の姿がある一方で、ぼろぼろになる男性の姿があって、衝撃度の高い作品!『白夜行』の続編ともいわれますが、作者は明言していません。
『手紙』
兄が起こした強盗殺人により、おとうとは人生に重い枷をはめられる。兄は弟に対して、毎月手紙を送り続ける。
犯罪加害者を差別してはいけない、なぜ殺人は許されないのか。人間の倫理観に挑む作品になっています。
『天空の蜂』
高速増殖炉の真上で、爆弾を搭載した特殊ヘリコプターがホバリングしている。天空の蜂と名乗る犯人が政府に突きつけてきたのは、日本の原子力発電所を使用不可能にすること。
東野圭吾が3年間もの取材を重ねた大作です!東日本大震災を経験したからこそ、読んでおきたい作品。
『さまよう刃』
娘を殺された長峰重樹は、謎の密告電話によって犯人を知ることになる。復讐するために、猟銃を持って長峰は行動に移そうとする。
被害者の家族側を描いていきます。同じ境遇なら復讐を考えてしまうかもしれないと感じながら読んでしまいました。少年法の矛盾も考えさせられる作品。
『夜明けの街で』
「不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた」。渡部は、31歳の仲西秋葉と不倫関係になってしまう。彼女はある殺人事件の容疑者であることがわかる…。
まもなく時効を迎えるだろう事件を軸にしながら、不倫した男の心情が描かれていきます。
『トキオ』
時空を超越し、生と死を超越した物語。
痛快小説でありながら、難病を持った子どもが生まれてくる可能性を持つ者は子どもを作ってはいけないのかという問題を突きつける作品です。
『使命と魂のリミット』
自分の父の死に疑問を抱き、その謎を解明するために医師になる。主人公が勤務する病院が、企業経営者のエゴの犠牲となった者の復讐の舞台にされてしまうのだった。大病院を舞台にした医療サスペンス!
『殺人の門』
主人公のそばに幼少期からいた男。主人公は男を憎悪し続けていたが、関係を断ち切ることができない。主人公の殺意が爆発するまでの過程を描ききります。
『レイクサイド』
中学受験を控えた4家族で、子どもたちの勉強合宿を行うことに。並木俊介はそこまでやらせなくても…という思いのまま、別荘地に遅れて到着する。そこに俊介の愛人が訪れるものの殺害されてしまう。犯人は俊介の妻だった。
殺害を知った親たちの提案が信じられないものですが、しかしこれが子を持つ親の苦悩といえるのかもしれません。
東野圭吾 驚愕ミステリー
あっと驚く本格ミステリー作品も東野圭吾は手掛けています。東野圭吾の原点にミステリー要素があることがわかる作品を紹介していきます!
『ある閉ざされた雪の山荘で』
劇団の役者7人のもとに、最終オーディションの案内が届く。「大雪で閉ざされた山荘」という架空のシチュエーションで、4日間の合宿が行われる。そこで1人また1人と劇団員が消えていく…。これは連続殺人事件なのか!?
一度限りの大トリック!といえる仕掛けで、驚くこと間違いなしです。2024年に映画化され、重岡大毅が主人公を演じています。
『放課後』
江戸川乱歩賞を受賞した東野圭吾のデビュー作。
数学教師の前島は、何者かに狙われていると感じていた。そして同僚の教師が学校内で密室の状態で殺害される…。
犯人の動機が理解しがたいとして物議を醸したそうです。現代では珍しくないといえるわけで、東野圭吾作品の先進性にもつながるところです。
『分身』
2人の主人公がそれぞれ出生に隠された秘密に迫っていく…。2人の過去は融合していき、クローン技術で誕生したことがわかっていく。
2人の主人公のエピソードが交互に語られる構成にうならされます!
『変身』
強盗犯に襲われて瀕死冗談だろだった成瀬は、病室で目を覚ます。世界初の脳移植により精悍したのだった。以前の生活に戻るものの、なにかがおかしい…
気弱な主人公がどんどん残忍になっていくのが、鬼気迫るものがあります。ドナーは誰か?という謎が提示されるのもおもしろい。
『ゲームの名は誘拐』
敏腕広告マンの佐久間俊介は、これまでの人生をゲームと考えていて、一度も負けたことがないという自信過剰男。そんな俊介が屈辱を味わった葛城勝俊を憎んでいたところ、葛城の娘のから狂言誘拐を持ちかけられる。身代金は奪取できるのか?
身代金ものですが、さすがのひねりが効いています。
『パラレルワールド・ラブストーリー』
自らの記憶の謎を追っていくと、その記憶は改編されたものだということが判明していく。記憶改ざんはなぜ起こったのか…。
2つの異なる世界を行き交う男女3人の恋愛を描きます。
『パラドックス13』
ブラックホールの影響で起こった現象によって異世界が作り出される。サバイバルミステリー。
突然、不可思議な状況に置かれた者たちが、なぜこのような事態になったのかを探っていきます。
『ダイイング・アイ』
記憶の一部を喪失してしまった主人公は、記憶を喪失する以前の自分が何を考えて行動していたのかを思い出すことができない。どうやら自分がある女性を殺してしまったようなのだが…。
記憶とはなにかを考えさせながら、ミステリーとして確立している作品。三浦春馬主演でドラマ化もされています。
『マスカレード・ゲーム』
解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件が発生。
捜査を進めると、殺害方法と、被害者がこれまでに人を死なせたということが判明します。そして事件の舞台は、再び「ホテル・コルテシア東京」へ。警部となった新田浩介がホテルマンになって潜入捜査を開始します。
注目は新キャラである梓警部。事件解決のためなら、違法行為もいとわないので、新田がてんやわんやするんですね。
さらに驚愕の展開が待っていて、シリーズで大事な作品になっていることは間違いありません。
『あなたが誰かを殺した』
ミステリー全開の作品!
まさかここにきて、パズルのような緻密なミステリー作品を書くとは思いませんでした。東野圭吾のミステリー作家としての魅力が出ていて、いい意味のでも裏切り!
高級別荘地で起きた凄惨なる連続殺人。いったい犯人はだれなのか?かなり細かく状況が整理されていくので、加賀恭一郎とともに推理できる構成になっています。
東野圭吾の人気の理由
東野圭吾は、やはり幅が広い。ミステリーが軸ではあるのですが、トリック重視から深みのある社会派作品までがそろっているんですね。だからこそ、多くのファンがいるのだとあらためて感じました。
ぜひ興味のあるジャンルの作品から読んでみてほしいと思います!
なお、東野圭吾の人気シリーズでおすすめポイントを紹介した記事はこちらから。
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