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【村上春樹】おすすめ短編小説ベスト30!ドライブ・マイ・カーなどすべて読破して選定

村上春樹には、珠玉といえる短編作品が多いと思っています。

『神の子どもたちはみな踊る』『回転木馬のデッド・ヒート』『レキシントンの幽霊』といった短編集は、どれを読んでも味わい深い。

村上春樹はちょっと苦手という人にこそ、短編を読んでほしい、ぜひ読んでほしい。そんな思いをこめて、村上春樹の短編から個人的なベスト30をまとめていきます!

映画『ドライブ・マイ・カー』の原作を知りたい方はこちらから。

村上春樹の長編小説のおすすめはこちらから。

1位〜10位

目次

1位「かえるくん、東京を救う」

かえるくん、大好きなんです。

40歳独身のサラリーマン・片桐が家に帰ると、かえるがいた。地下のみみずくんが地震を起こすので、共に戦ってほしいというのです。このかえる、でかい。人間くらいあるんです。そしてユーモラスでなんとも憎めないのが、かえるくんなんです。

これぞ、村上春樹という作品。突拍子もない展開でありながら、「正義とはなにか?」という問いを考えさせてくれる。僕は、かえるくんをたまに思い出して、泣いてしまうのです。

なお、新海誠の『すずめの戸締まり』と、呼応する部分があって、合わせて読むことをおすすめしたいです。

2位「パン屋再襲撃」

呪いを解くには、パン屋を再び襲撃するしかない。

なぜかそう確信している夫婦の話。夫が過去にパン屋を襲撃したことがあって、それ以来、呪いをかけられたというわけです。

深夜2時、カローラで東京の街を走る。で、いくら探してもこんな時間に開いているパン屋はないんですね。夫婦が妥協した行く末は??

謎すぎる設定ですが、グイグイ読めてしまうのでおすすめしたいです!

3位「神の子どもたちはみな踊る」

善也は二日酔いでグロッキー状態。その夜、仕事からの帰りに、耳たぶが欠けた男を見かけ、あとをついて行くことに…。

耳たぶが欠けた男は何者なのか?

野球場でのシーンが脳裏に焼き付いていて、最高なんです。ぜひ目撃してほしい。

4位「ドライブ・マイ・カー」

俳優の家福は、車の運転をしながら台詞の練習をするのが習慣になっていたが、運転免許停止と緑内障のため、運転ができなくなった。運転をしてくれる人を雇うことになり、渡利みさきという女性が運転手となった。

この2人の車内での会話で、物語が展開されていきます。

少しネタバレになるかもしれませんが、家福は妻を亡くしていて、その妻は何人かの男性と浮気していたことを知っていた。その理由を家福は今も追い求めているんですね。

本作は、監督・濱口竜介、主演・西島秀俊によって、2021年に映画化もされています。

5位「クリーム」

主人公のもとにピアノ演奏会の招待状が届く。バスを乗り継いでたどり着いたのに、会場のはずの建物は門が閉ざされている。会場の鉄扉には鎖がグルグル巻かれていて、南京錠までかかっていた。

ふと公園で出会った老人に「外周を持たない円を思い浮かべられるか?」と、話しかけられます。「人生のクリーム」という単語が出てきて、けっこう深く考えてしまいました。長編になりそうな話。

6位「プールサイド」

男は35歳。人生の折り返し点にいる。

「彼は人生の折り返し点を曲がろうと決心した」

プールに人生をたとえていて、華麗なターンをすることを決めたというわけです。それほど大きな出来事は起こらないのに、ものすごく印象に残っている作品。ちょうど近い年齢で再読したこともあるでしょう。

7位「納屋を焼く」

なんとも薄気味悪い話。

主人公は、結婚パーティで出会ったパントマイムを趣味にしている「彼女」と出会います。彼女の新しい恋人を紹介されて、その恋人から「納屋を焼く」という趣味を聞かされて、しかもよりによって次の犯行まで教えられることになる。

納屋を焼く目的はなにか、そもそもこの話は本当なのか?謎めいた雰囲気で一気に読めてしまう短編です。

本作はイ・チャンドン監督により『バーニング劇場版』として、映画化されています。

8位「沈黙」

大沢はボクシングをしていたとき、同級生を殴ったことがあった。青木だ。青木は、したたかな男で、その計算高さを大沢は見抜いていた。大沢がテストでカンニングをしたと、青木が貶めようとしたことで、手を出してしまった…。

本作で描かれるのは「孤独」です。

松本という同級生が自殺したことで、大沢に疑いを向けられてしまいます。そこに青木の影を感じるものの、大沢は確証を得ることはできません。そして孤独になっていく…。

「沈黙が冷たい水みたいになにもかもにどんどんしみこんでいくんです」

9位「めくらやなぎと眠る女」

いとこの耳の治療のために、僕はバスを待っていた。いとこは時間を気にしていて、何度も今何時かを確認してくる。僕は、友達の彼女のことを思い出す。彼女が胸の手術をするときに、お見舞いに行ったのだ。

主人公は、彼女が創作した「めくらやなぎ」のことが気になってきます。めくらやなぎの花粉をつけた小さな蠅が耳からもぐりこんで女を眠らせる。いとこにも、その蠅が潜り込んでいるのではないか…。

本作は『蛍・納屋を焼く・その他の短編』だけではなく、『レキシントンの幽霊』にも収録されています。後者は、書き直したバージョン。2つを読み比べもおもしろいです。

10位「眠り」

17日間、一睡もしていない女性の話。歯科医の夫と子どもは、このことに気づいていない。

死は不眠の延長にあると思っていたもののそうではないと気づいたとき、女性は恐怖におびえます。

こういうミステリアスな設定の短編、好きです。

11位〜20位

11位「品川猿」

なぜか自分の名前を思い出せなくなる女性。ほかのことは覚えているのに…。カウンセラーのもとに通うことに。数回カウンセリングを受けて、そのカウンセラーが名前を盗んだ犯人を見つけたという。連れて行かれた部屋にいたのは、猿だった。

名前を盗む猿!?これがまた憎めない存在なんですね。

品川猿は『一人称単数』の「品川猿の告白」でも登場するので、あわせて読んでみてほしいです。

「彼女はこれから再びその名前とともに生活していくことになる。ものごとはうまく運ぶかもしれないし、運ばないかもしれない。しかしとにかくそれがほかならぬ彼女の名前であり、ほかに名前はないのだ」

12位「木野」

木野が経営してるバーで、いつも読書をしている坊主頭のカミタ。いちゃもんつける輩がきたときに、カミタが追い払ってくれて、謎の人物です。

木野には妻がいましたが、同僚と不倫していたことが発覚し、それで会社を辞めて、バーを開いた経緯があります。

そこから、カミタがやってきて、木野に遠くに行くように伝えるんですね。

木野はどうなっていくのか、一気読みできる作品。

13位「午後の最後の芝生」

芝刈りのバイトをしていた僕が、その家の主婦で大柄な女性に、不思議な頼みごとをされます。ただそれだけなのに面白い。

死のにおい、喪失感が漂ってくる。かなり完成度が高い短編だと思います。

「記憶というのは小説に似ている、あるいは小説というのは記憶に似ている」

14位「蛍」

『ノルウェイの森』の原型となった短編。

東京の大学に通うために学生寮に入っていた僕には、かつて友人が自殺してしまった過去がある。

目の前の出来事を人は客観視できない。複雑な痛みが生じることを感じさせてくれる作品です。

15位「ハナレイ・ベイ」

サチの息子は19歳のときに、ハナレイベイでサメに襲われて死んだ。それから毎年のように、サチはハナレイベイに訪れている。

息子がいたことを感じたいというサチの思いが切ない。だけど、読み心地は暗くなくて、日本人の2人組・長身とずんぐりと、サチのやり取りは、ヘンテコでおもしろかったりします。

16位「図書館奇譚」

図書館の地下室に連れていかれると、そこには羊男がいた。図書館のおじさんに脳みそを吸われる前に脱出できるのか?という、これぞ村上春樹という設定で、読んでいてハラハラ感があります!

羊男は『羊をめぐる冒険』『ダンス・ダンス・ダンス』でも登場します。

17位「氷男」

私は氷男と結婚した。

氷男という存在が明確に定義されているわけではないが、一般の人とは違う存在。

2人は子どもができないまま変化のない毎日を変えようと、私は南極旅行を提案するんですね。ここから氷男の目は鋭くなり息はずっと白くなる。反対に私は力を失っていきます。

氷男は、特別な人種ではないのかもしれない。差別を受けること、居場所があること。深く考えてしまう作品です。

18位「石のまくらに」

小説家志望の「僕」とバイト先の20代女性が一夜を共にすることに。女性は絶頂のときに他の人の名前を呼んでもいい?と聞く。

短歌が出てくるのはおもしろいです。

「石のまくら に耳をあてて 聞こえるは 流される血の 音のなさ、なさ たち切るも たち切られるも 石のまくら うなじつければ ほら、塵となる」

19位「ねじまき鳥と火曜日の女たち」

スパゲティが茹で上がる直前に電話が鳴った。女は「10分時間が欲しい。10分あればお互いもっとよくわかりあえる」と言う。スパゲティが茹で上がるから。僕は電話を切った。

『ねじまき鳥クロニクル』のモチーフが盛り込まれた短編。

20位「七番目の男」

10歳のときの恐ろしい体験を話す。台風の日に、私とKは海岸に行った。大きな波がきたときに、私は逃げ出し、Kだけが波にさらわれてしまう。
私は戻るが、波がやってくる。

「波の先端の部分に、まるで透明なカプセルに閉じ込められたように、Kの体がぽっかりと横向けに浮かんでいたのです。それだけではありません。Kは私に向かってそこから笑いかけていたのです」

残された者が、死者の思いをどう考えるべきなのか。

21~30位

21位「中国行きのスロウ・ボート」

村上春樹の初の短編。

「最初の中国人に出会ったのはいつのことだったろう?」で始まるように、回想形式で語られていきます。

なんとも不思議な味わい。村上春樹を知るなら、この短編は外せません。

22位「TVピープル」

TVピープルがやってきて、テレビを置いていく。テレビが置かれたことに、帰宅した妻は気づかない。

寓話性が高い話。冒頭で、日曜日の夕方が好きではない理由が語られるのですが、これがまたおもしろい。ここだけでも読んでほしいくらいです。

23位「イエスタデイ」

木樽は、田園調布で生まれ育ったのに、完璧な関西弁で話す。木樽には、えりかという彼女がいるけれど、2人は男女関係はない。

この木樽が魅力的。「昨日なあしたのおとといで〜」というイエスタデイの替え歌も頭のなかに残ります。

「今のところ誰にも迷惑をかけてないなら、それでいいじゃないか。だいたい、今のところ以上の何が僕らにわかるって言うんだよ?
おまえの人生なんだ。なんだって好きにすればいい」

24位「ファミリー・アフェア」

妹が婚約したことで、兄妹の関係にヒビが入り始める。僕は、妹の婚約者を好きになれなかった。

のらりくらりと女性遊びをしている僕のことを、妹は非難をして、自分自身も悩みが生じていくんですね。

家族というものの形が変化していく悲哀を感じさせてくれる作品。

25位「蜂蜜パイ」

大学の同級生・淳平と小夜子と高槻。淳平は小夜子に思いを持っているが、小夜子は高槻と結婚してしまう。

この三角関係がどうなっていくのか、小夜子の離婚からまた関係が変わっていきます。

26位「象の消滅」

街の動物園の象がいなくなった。電気機器メーカーの広告部に勤める僕は象の最後の目撃者だった。

像が消えたのではなく、消滅なんですね。この謎を軸に最後まで飽きない展開を見せていきます。

27位「レキシントンの幽霊」

主人公は作家で、知り合いの建築家・ケイシーの家の留守番を任される。真夜中、誰かがいることに気づいた。一階から音楽と会話が聞こえてきてパーティーを開いていた。

しばらくしてケイシーに会ったとき、彼は驚くほど老け込んでいた…。

幽霊話でありながら、現実がリンクしていく構成になっています。

28位「カンガルー日和」

動物園にカンガルーの赤ちゃんを見に来なければならない。そんな強迫観念にとらわれた夫婦の話。

村上春樹の短編のなかでもかなり短い作品なので、読みやすいです。

29位「独立器官」

美容整形外科の渡会医師は、独身主義で、たくさんの女性と体を重ねてきた。そんな彼が恋に落ちて、大きな心の傷を負う。

「わたしとはいったいなにものなのだろうって、ここのところよく考えるんです」

身体器官だけは独立して動いている。自分自身を限りなくゼロに近づけようとすると、どうなるのかを考えてしまう作品。

30位「雨やどり」

雨宿りで入ったバーで、昔の知り合いの女性編集者と偶然に再会した。彼女は流れで、お金をもらって男と寝ることを何度か行ったという。村上春樹のエッセンスが詰まった短編です。

さいごに

村上春樹は長編だけを読んでいるのならば、もったいない。

村上春樹自身、短編を書くことは「喜び」であり「造園」だとしています。ワンテーマで一気にまとめていくので、話がわかりやすいし、かなり読みやすい。短編もぜひ味わってほしいと思います!

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