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【書評】『首都感染』新型コロナウィルスを予言?あらすじや現実との合致ポイント

中国ではじまった致死率60%の感染症が日本へ。

パンデミック飛沫感染接触感染、イベント中止、経済冷え込みなど、いま起こってることとリンクしすぎでギョッとなってしまいます。オリンピックではないのですが、W杯の試合を中止するかの判断も迫られるんですね。

感染症パンデミックになるという内容は、映画でも小説でも考えられるのですが、本書がすごいと思うのは、ディティールです。

感染症が広まったらどのようなことが起こるのか?シミュレーションの精度が高い。

それもそのはず、作者の高島哲夫さんは、クライシス小説の名手で、未来のノンフィクション作家ともいえるほど精緻な設定で物語を形つくっていくのです。

象徴的なのが、2011年の東日本大震災を予言したともいえる『TSUNAMI』です。小説では20メートル級の津波が起こり、原子力発電所で冷却ポンプが停止して、メルトダウンを起こす直前までの事態になります。

未来のノンフィクションである『首都感染』と、現実との合致するポイントはなにか?そして、この小説が導き出す結末とは?

現実と比較しながらたどってみましょう。

あらすじ

本作の主人公は、瀬戸崎優司。内科医として黒木総合病院に勤務していますが、WHOのメディカルオフィサーだった過去を持っています。つまりは、感染症スペシャリストなんですね。そして、父親は現職の内閣総理大臣です。

二〇××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率60%の強毒性インフルエンザが出現!中国当局の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。検疫が破られ都内にも患者が発生。生き残りを賭け、空前絶後の“東京封鎖”作戦が始まった。

感染症を封鎖するために、瀬戸崎が官邸に招集されて、なんとか食い止めることが軸になってきます。

新型コロナウィルスと合致する4つのポイント

ここから今起こっていることと、小説内とでリンクするポイントをそれぞれ見ていきます。

合致ポイント①中国で感染症が起こる

新型コロナウィルスは、中国の武漢から発生して、そこから世界各地へ飛び火しました。

本作では、強毒性インフルエンザが中国雲南省で起こります。どれくらいの被害があるのか、正確な数字を隠したまま、状況が悪化していきました。

合致ポイント②国際大会が中止される

日本で行われる予定だったオリンピック・パラリンピックは、2020年開催を諦めて、翌年以降に延期となりました。

本作では、オリンピック・パラリンピックではないのですが、ワールドカップが中国で開催されている設定になっています。国際大会を中止にすべきかどうかの判断が求められます。

合致ポイント③経済冷え込み

もちろん経済の冷え込みも想定されています。政府は水際作戦として空港封鎖を行ったり、首都封鎖も視野に入れます。そこで何度も議論に出てくるのが、封鎖するのはいいが、経済の冷え込みをどうするのか、というテーマです。補償金額も出せるのかも話し合われます。

合致ポイント④首都封鎖される

経路が不明の感染者が東京都内であらわれたことで、首都封鎖を具体化していきます。そして、実際に封鎖を決行します。ここで脱出をしようとする人も出てくるのですが、このあたりは予言ではないことを祈るばかり。

現実と違うこと

合致することが多いのですが、決定的なのが政府の対応。この総理大臣と感染症対策のエリート親子が優秀すぎるんですね。

水際作戦として空港封鎖を決断し、首都封鎖も行う。世界から見ても日本スゴい!という状況になっています。

どうやって終息したのか?

小説のネタバレはしない主義ですが、本作は現実とのリンクが多いので、現実の新型コロナの終息のヒントになると思い、結末を明かします。

パンデミック発生から2ヵ月で、ワクチンと抗インフルエンザ薬が開発されることになります。どちらも日本人が開発しているということで、ちょっと出来すぎとは言えますが。

特に致死率60%の有毒性があるので、封鎖だけでは持ちこたえれないので、やはりワクチンと治療薬は必須になります。

首都封鎖に備えるために

あくまで小説なので、現実との違いはありますが、1つのシミュレーションとして読んでおいてもいいかなと思いました。

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