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PIXAR(ピクサー)のお金本から『トイ・ストーリー』が切り開いた奇跡を知る

ピクサーのお金についての本。

ローレンス・レビーあまりにも赤裸々だった。16年もの苦節続きで、スティーブ・ジョブズが買い取った企業なのに、彼が60億円相当の私財を投げ売って、なんとか成り立っていただけ。

切り札は1つの作品でした。そう『トイ・ストーリー』。

クリエイティブとビジネスを両立する難しさがわかるし、何よりいまピクサーを観れることって幸せだなぁと思える内容でした。

ピクサーの現状

レビーは、ジョブズからの誘いにより、ピクサーを見学します。

イノベーションの高まりがあると共に、生き残るための現実世界のプレッシャーを感じていました。

クリエイティブとビジネスの両立にずっと苦しんでいたんですね。

レビーは最初ピクサーを見て怪しいと感じていました。ジョブズもアップルから追い出された後で、過去の栄光からは遠ざかっていた。ピクサー自体も辺鄙なところに所在していました。

ただ、『トイ・ストーリー』のプロット版を見て衝撃を受けます。

私は、想像もできなかったほどクリエイティブで技術的な魔法を体験した。おもちゃはみんな生きている本物だと感じてしまった。

このインパクトにより、レビーは財務最高責任者として、ピクサーへ参加することを決めるのです。

彼らは勝つ。勝つ側の人間だ。いつか、必ず、勝つ。そう確信したのだ。

気難しさが爆発したジョブズ

スティーブ・ジョブズは随所に無難しさを感じさせる存在です。クリエイティブ面での理解はそれほどないんですね。

ジョブズは、ハードウェア会社を買ったつもりだったわけです。ルーカス・フィルムから分離したピクサーは、最初は画像処理コンピューターを開発していたんですね。

アニメは、その技術を見てもらうためのサンプルにすぎないのに、画像処理コンピューター事業はうまくいかなくて、アニメ制作だけが残った。

ストックオプションピクサースタッフに提供することも渋々で、アップルを追い出されたときのショックが残っていたからでしょう。

レビーは辛抱強く、ジョブズピクサースタッフとの間を取り持ってバランスを取ろうとしていきます。

ディズニーとの隷属契約

レビーがピクサーの状況を把握すると、何重苦なんだよ?と思うくらい、マイナス要因がたらふくあることが明らかになります。

  • コマーシャルアニメもお先真っ暗
  • 短編アニメーションはお金にならない
  • アニメーション映画はギャンブル性がある
  • PIXARのオーナーとスティーブの関係は最悪
  • レンダーマンソフトウェアに長期的な展望はない
  • 未来も運命もディズニーに握られている

特に驚きなのが、ディズニーとの契約です。制作費を一部賄うのは良いとしても、収益の取り分はほぼディズニーに入る仕組みになります。映画3本が対象で、制作期間で考えると、9年間縛られることになります。

さらにディズニーに提示したアイデアは却下されたものを含めて他社に提示してはならない、スタッフもディズニー仕事しかできない、という隷属契約と呼べるもの。

これが慣習のようで愕然としますね…。

奇跡の作品

トイ・ストーリー』自体も前代未聞のことをやろうとしていて、描きたい場面は決まっているものの、3Dでどこまで表現できるのかは未知数。

物理的なハードルもたくさんあります。例えば、3Dで制作していても結局はフィルムに落としこむ作業が発生します。これは、1台で絵10万枚以上をフィルムに撮影しなければならないという途方に暮れる作業。

絵1枚の生成に45分ほどかかって、それを11万4000枚ほどを生成しないといけない…。ちょっとどういうことなんだという数字ですね。

クリエイティブのこだわり

ピクサーの物作りのこだわりは初期からあったのだと感じるエピソードもちらほら。

印象に残っているのは、ジョン・ラセターの言葉。

きれいなグラフィックスを作れば人を数分は楽しませることができる。だが、人々を椅子から立てなくするのはストーリーなんだ

なによりも「ストーリー」が一番大切ということ。

そしてピクサー自体の文化も、当然のことながら作品に影響を与えています。

文化は目に見えないが、それなしにイノベーションは生まれない

トイ・ストーリーが照らす希望

そしていよいよ公開前の「トイ・ストーリープレミアムショー」が行われ、関係者が集まりました。

錚々たるメンバーの中で、レビーはこう感じます。

映画が始まると、我々は、ここで単に映画を見ているのではなく、映画の歴史に1ページが書き加えられる瞬間を見ているのだと感じた。

その予感通り、『トイ・ストーリー』は大ヒット!速報で週末の興行収入は3000万ドルになる勢い、トータルでも2億ドル超えが見えてくるという奇跡の結果が待っていたのです。

ディズニー傘下へ

そこからディズニーと対等に近い契約変更を勝ち取り、物語はピクサーがディズニー傘下になることで幕を閉じます。

バグズ・ライフ』『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』『ファインディング・ニモ』『カーズ』といったヒット作が連発されるものの、株価の維持は厳しい状態になっていました。

評価が高まりすぎてさらに上のヒットを求められ、なにか小さな失敗があろうものなら、反動で株価が下がると予測されていたのです。

多角経営に舵を切るのか、どこかに買ってもらうのか。ジョブズとレビーは、後者を選び、その相手にディズニーを選びました。

さらなる黄金時代の始まると同時に、ディズニーとの提携により、レビーはピクサーを去ることになります。

生々しいエピソードばかり

レビーはピクシーの中心にいた人物である上に、財政を扱っているので、どれもが生々しいエピソードばかり。

ピクサーの泥臭い一面を見ることができます。そしてこれこそがクリエイティブとビジネスを成り立たせるための苦労であり、奇跡なのだと感じます。

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