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『100分deメディア論』で紹介されたジャーナリズムを問う4冊

テーマはメディア。

『100分de名著』はその名の通り100分で名著を解説してくれる番組なのですが、たまにスペシャルがあるんですね。

ちょっと前の放送でしたが、メディア論という切り口でした。これがまた刺激的な内容で、紹介された4冊もすごく興味深かったです。

『世論』堤果歩さん推薦本

『世論』は、メディアと大衆の関係性を深く考察した一冊です。

著者のウォルター・リップマンは、ハーバード大卒、雑誌編集、大統領のブレーンにもなったことがある人物。

人間は、知らず知らずのうち、現実をステレオタイプで捉えていることを指摘します。

「われわれはたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る」

これはホントその通りだなと。不明なものを、未知なるものを、人は怖れます。だから、ある程度の予測をしてから、接するようになるわけです。

そして、メディアがステレオタイプな思考を増幅していきます。

本書では、例として、映画『國民の創生』が挙げられます。『國民の創生』は黒人蔑視を助長する内容で、公開されたあと、一度消滅したKKKが復活し、黒人リンチが再燃したという作品。

リップマンが生きたのは、アメリカが第一次世界大戦で、ドイツに戦線布告した時代。アメリカの広報委員会は、あらゆる手段を使って、世論を操り参戦の気運を作り上げて行きました。

これにリップマンは警鐘を鳴らし、政権を離脱することになります。

現代に通じる世論の分析だなと感じました。

『イスラム報道』エドワード・W・サイード

原題は、『カバーリングイスラム』。カバーには「報道」という意味と、「隠蔽する」という意味があります。

著者のサイードは、パレスチナで生まれ、アメリカに移住し、アメリカに疑問を呈した人物です。

またサイードは『オリエンタリズム』という著書もあり、西洋人が自分たちを肯定するためにオリエントとして東洋を定義づけていると解説します。

「オリエンタリズムとは、オリエントを支配し再構成し威圧するための西洋の様式なのである」

番組のスタジオでは、夏目漱石が例に挙げられていました。夏目漱石は、ロンドンで差別を受けたけれど、満州を巡ったときに「支那や朝鮮人に生まれなくてまぁよかったと思った」と新聞メディアで記していました。これは、まさにバイアスですね。

『空気の研究』大澤真幸さん推薦

出ました、『空気の研究』。

空気は絶対明示的に語られず、感じて自分で解釈しなければならないもの。空気は多様性を認めないわけですね。そして、言葉に臨在感がなくなった瞬間、あっという間に別のものに乗り替えてしまいます。

『一九八四年』高橋源一郎推薦

こちらもディストピア小説として知名度抜群ですね。著者のジョージ・オーウェルはスペイン内戦の体験者。

作品内では、「二重思考」という概念が出てきます。二重思考とは、嘘を認めず新しい事実を認める考え方です。歴史改ざんですね。

スタジオで、出された例がおもしろかったです。フランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルが、民主制はどうすれば上手く回るか、ということを提言。中間共同体が重要ではないかとしました。つまりは、国家と個人の間にある領域ですね。アメリカは、趣味サークルや教会に集うのが盛んだったけれど、人々は自分と異なる他者と出会い、合意形成をする訓練をやっていたと。そうすれば、国家レベルの民主制もうまくいくのではないか。

だけど、トクヴィルはさらに先を予見します。やがてこれは終わるだろう、そのピリオドを打つのがマスメディアだと。中間領域にいかずにマスメディアから情報を得ると、大衆化が進んでいって、さらにマスメディアは大衆の気分に寄り添っていきます。相互補完ですね。政治にも影響が出てきて、大衆を代理する政治家が出てきて、多数者の専制が起きていくんだと。

メディアとは時代を作り、時代を映すもの

どの本も現代に通じる内容で、歴史は繰り返すのだとあらためて。メディアとは、時代に強く影響するんだけど、時代を色濃く映すものでもあります。これから4冊の本はじっくり読んでおきたいと感じました。

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