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『ボクたちはみんな大人になれなかった』Twitterで人気の燃え殻さんの小説はポエムすぎた

Twitterで人気の燃え殻さんの初小説。

かなり売れているみたいだけど、ぼくには合わなかったかな。表現はところどころ面白かったけど、主人公が感傷に浸りすぎて、感情移入できずに置き去りにされてしまった。

推薦している人はホント豪華。

糸井重里、大根仁、小沢一敬、堀江貴文、会田誠、樋口毅宏、二村ヒトシ…

魅力はある小説だとは思っていて、そのあたり含めてレビューしてみたいと思います。

あらすじをざっくり3行でまとめると…

  1. 別れた彼女を未練タラタラに思い出してる40台男性の話
  2. 男性はイケイケなテレビ業界にいて、バブルさを感じる
  3. 過去の恋愛と仕事については、微笑ましい展開になっている

完璧な出だしに想像が膨らむ!

冒頭はいい入り方だなと。グイグイっと読めました。

ハンドルネームしか知らない女の子が、目の前で裸になっていく。こちらを呼ぶ時に「ねぇ」としか言わない彼女も、きっとボクの肩書きしか覚えていない。

想像が膨らむじゃないですか!

2人がどういう関係で、男性はどういう人物なのか。

そして枕元の有線から宇多田ヒカルの『 Automatic』が流れてくる。つかみはバッチリ。

さらにFacebookで元カノのかおりと遭遇して友達申請をしてしまう。主人公は、元カノを忘れられなくて未練タラタラ。お互いの生活は激変していることが分かります。

章タイトルは、「最愛のブスに友達リクエストが送信されました」。

完璧です。

元カノとの会話にはサブカル臭が漂う

物語は過去にさかのぼり、元カノとの日々が綴られていきます。

2人は文通で知り合うんですね。初めて出会ったのは原宿。顔はそれほど美人じゃなくてブスの部類のようだけど、彼女に惹かれていきます。

彼女の前では自分に正直な人間になるよりも、自分が憧れる人間になりたかった。生まれて初めてボクは頑張りたくなっていた。ボクはもう彼女に、恋をしていた。

2人の会話にはサブカル臭があって、それもまたいい『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を2回見たという主人公に対して、元カノの返答が「すくなっ!」だったりします。

そして主人公が恋愛の拠り所にしているのが、男性誌『Hot-Dog PRESS』。

  • セックス中にやたらしゃべる男は嫌われる
  • 女性の朝を急がせるな
  • 髪の毛を切ったことにすぐ気づくだれかはアナタとベッドインしたい人だけど、アナタもまだ気づいていない小さなキズを見つけてくれただれかは、アナタのことをきっと好きな人です

ほほえましい恋愛で、読んでいてホッコリしました。

彼女が登場しなくなって物語は求心力を失った

主人公は受け身な人物。元カノに肯定されることで、この社会で存在する意義を感じています。何も行動しなかった主人公が、仕事を探し始めたりと能動的なアクションを起こす。

ここまではいいのですが、元カノのかおりがフェードアウトしてから退屈さが出てきました。

数々のエピソードも物語の終盤へ向けての積み上げが感じられません。バラバラに散りばめられているだけ。前述した『うる星やつらビューティフル・ドリーマー』のループ設定がラストで展開されたりとリンクしているけど、小手先な感じがして白けてました。

現代パートで主人公にもう一つ変化を与えてほしかった。過去の彼女を思い出して自分に酔っているだけのキャラクターに見えてしまいました。もったいない。

恋愛とはなに? 幸せとはなに?

恋愛という定義をどうするのか。恋愛小説はそこを物語内で示してほしいところ。直接ではなくていいのですが。

本作では、「だれといるか?」が繰り返し語られます。

美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい。

現代パートでは、主人公が一夜限りの関係を持った女性からの「努力すれば夢は叶うか?」というLINEへの返答で、恋愛の定義が示されます。

主人公は「その質問は、ナポリタンは作れるか?と一緒だと思う」と返信します。手順を踏めば近いものにはなるということです。

成功しようが失敗しようが、問題はそれを誰と一緒に味わうかなんじゃないか?

シンプルだけど、すごく共感できました。ナポリタン例えもおもしろい。

おすすめ度4☆☆☆☆★★★★★★

期待値が高かったからか、おすすめ度は低くなりました。小説というよりは、燃え殻さんのポエムなんですよね。もともとTwitterでポエマーとして人気が出た方なので、正しいと言えます。

だから言葉のリズムはすごくいいです。読んでいて気持ちいい。とくに冒頭の書き出しから元カノにFacebook申請するまでは、よどみなく読めるので、ここだけでも手に取って読んでみてほしいです。自分自身の恋愛体験と重なると、また違った印象になるのかも!?

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