DeNA社がウェルクを始めとしたメディア運営において炎上しました。
さすがにやりすぎな面があったわけですが、以前にコンプガチャ問題を起こした経緯もあります。DeNAの遺伝子としてモラルハザードを起こしやすいという指摘も見られますが、果たしてそうなのでしょうか?
DeNAの創業者である南場智子さんの著書『不格好経営』を再読してみました。
- 作者: 南場智子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/08/02
- メディア: Kindle版
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どんな本なの?
南場智子さんが明かす失敗談のオンパレード。もちろん語られていないこともあるでしょうけど、初読のときはさらけ出しているなぁと感じました。仕事への情熱やチームへの信頼を感じられる1冊で、けっこう好きな本です。
わが社最大のトラウマ
DeNA社のトラウマが記されています。インターネットのオークションサイトを開発するため、外注するのですが、信じられないことが起こります。完了したはずのその日に、実際はコードが1行も書かれていなかったというのです。
こんなことあるのか・・・、ゾッとする状況です。そこで南場さんの旦那さんが言った3つのこと。
- 1.諦めるな。その予算規模なら天才が3人いたら1ヶ月でできる
- 2.関係者にありままの事実を速やかに伝える。過小に伝えない。
- 3.システム詐欺という言葉をやめろ。社長が最大の責任者、加害者。被害者づらしていたら誰もついてこない。
ここから外注に任せっぱなしの怖さを身に沁みて学んでいったようです。
DeNAの歴史
ビッターズ誕生
1999年11月29日にショッピングモールであるビッターズが誕生した。南場さんが誓ったのが以下。
同じ目標に向かって全力を尽くし、達成したときの喜びと高揚感を経営の中枢に据えよう。力強い高揚感でシンプルにドライブされていく組織をつくろう。
ビッターズのライバルは当然Yahoo!オークションです。巨人に立ち向かうために、手段は厭わない。ビッターズの広告をYahoo!に出したことがあったのですが、Yahoo!営業部の予算達成が難しい状況につけ込んで達成されたそうです。
モバオクでの成功
ビッターズのオークション機能をモバイル向けに特化したのがモバオク。見事に成功したわけです。
時代の波をとらえ、タイミングに合ったものを一番使いやすい形で出す。これを実現してナンバー1になった者だけが、拡大の良循環を手にする。モバオクの成功は、このシンプルだが力強い真理を我々に刷り込んだ。
時代の波を読んで一番使いやすいものを出す。この成功体験は、DeNAイズムと言えるのでしょう。
ソーシャルゲーム事業へ
モバオクの伸びが止まり、ソーシャルゲーム事業への舵を切ります。
真の競合は「ユーザーの嗜好のうつろいのスピード」だと認識している。
そして大ヒットゲーム『怪盗ロワイヤル』が生まれます。開発したのは新卒5年目の大塚剛司。モバまちで大失敗したりと、だが失敗は成長のジャンプ台ととらえていて、大事なのは失敗に至るプロセス。作戦の練り方、実行の徹底ぶりはどれも高いレベルだと評価され、ソーシャルゲームのプロジェクトに抜擢されたそうです。
南場さんのマッキンゼー時代
南場さんがマッキンゼーに在籍していたとき、唯一結果を出せたのが、転職を決めてからの最後のプロジェクトだったそうです。
成功の秘訣は、できないことをさらけ出したから。
できないことをさらけ出し、先輩やクライアントに助けてもらって仕事をした。マッキンゼーではバリューを出せ!と言われるが、最後だからとバリューは気にならなかった。
できないことを認めることから仕事は始まる。
そして南場さんが独立したとき貧乏時代、お父さんが手紙を送ってくれるのですが、かなりグッとくる内容です。
私生活での貧乏は貴重な体験としてプラス思考で真摯に処されたし。間違ってもお金のことで公私混同しないこと。生き甲斐は処した困難の大きさに比例する。
リーダーとしての心得
ビジネスにおける心得も抜き出してみましょう。
意思決定のプロセスを論理的に行うことは悪いことではない。でもそのプロセスをみんなとシェアして、決定の迷いを見せることがチームの突破力を極端に弱めることになる。決定したプランを実行チーム全員に話すときには、これしかない、いける、という信念を前面に出したほうがよい。
このあたりはリーダー論だとよく出てくる考え方かなと。どこかでロジカルではなく思いがこもっていないと、チームを引っ張ることはできないわけです。
リーダーにとって正しい選択肢を選ぶことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ことが重要となる。
突破する力が必要で、正解を手繰り寄せるというよりは、正解を生み出す作業ということでしょうか。
不完全な情報に基づく迅速な意思決定が、充実した情報に基づくゆっくりした意思決定に数段勝ることも身をもって学んできた。
このあたりはスピード重視の思考と言えそうです。
人が育つ組織
ビジネスにおいて、リーダーになれることと同時に重要なのは、人を育てること。
任せるということに尽きる。人は人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。
人は仕事で育つ。現場で得るものが多いというわけですね。
また優秀な人の定義も記しています。「素直だけど頑固、頑固だけど素直。容易に成果に満足しない」
まとめ
随所にスピード重視な傾向が見られますが、時代に流れが速いIT業界においては特別なことではないでしょう。
再読しても真っ当なビジネス感覚を持っている方だなと感じました。
最後に本書のまえがきから。
「それにしても、マッキンゼーのコンサルタントとして経営者にアドバイスをしていた自分が、これほどすったもんだの苦労をするとは……。経営とは、こんなにも不格好なものなのか。だけどそのぶん、おもしろい。最高に。」
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