『ある行旅死亡人の物語』は、謎めいた孤独死をとげた女性の身元解明に、記者2人が奔走する内容になります。ノンフィクション作品。
これがまた真実に迫る過程に、どんどん先が気になっていくんですね。
『ある行旅死亡人の物語』について、あらすじやネタバレを交えて解説していきます。
『ある行旅死亡人の物語』あらすじ
ある女性が、尼崎市のアパートで亡くなっていた…。行旅死亡人の情報を見ると謎だらけでした。
- 住所、氏名不明
- 年齢75歳ぐらいの女性
- 身長133センチ
- 中肉
- 右の手指すべて欠損
- 所持金3,400万円
右手の指はすべてなく、所持金がかなりの高額だったのです。この女性はどういう人でどういう人生をおくっていたのか、共同通信の記者2人が追いかけていきます。
行旅死亡人とは?
行旅死亡人とは、病気や行倒れ、自殺などで亡くなり、身元が判明しないまま、引き取り手がいない死者のこと。
死亡場所を管轄する自治体が火葬することになります。死亡人の身体的特徴や発見時の状況、所持品などを官報に公告し、引き取り手を待ちます。
『ある行旅死亡人の物語』登場人物
- 行旅死亡人(謎多き女性):田中と名乗っていたが偽名。
- 女性の旦那:婚姻届は出されていなかった。
- 武田惇志:共同通信の記者。行旅死亡人を調べるのが趣味。
- 伊藤亜衣:共同通信の記者。武田の同僚。
『ある行旅死亡人の物語』ネタバレ
『ある行旅死亡人の物語』についてネタバレ解説します。
謎だらけの行旅死亡人
2020年に死亡した女性の行旅死亡人情報に、記者の武田が目を止めます。弁護士や探偵に情報をもらうものの、まったく謎だらけ。遺品がこちら。
- 所持金は3,400万円のほかに、1000ウォン
- 星形の模様のあるロケットペンダント
- ペンダントの中には数字が記されていた
また家に電話があったものの、通話履歴はなく、基本料金だけ支払っていたのです。現金があるのに、エレベーターもない風呂もない、古いアパートに40年近く住み続けたのもおかしな話です。
大家も女性のことを詳しく知らないようで、右手の指がないことは気づかず、独身だったと言います。
調べていくと、名乗っていた田中千津子は偽名。旦那さんもいたのだが…。
行旅死亡人の身元が確定する
遺品のなかに、大きなヒントが見つかります。珍しい姓の印鑑があったのです。同じ名字の人々を訪ねて、家系図を作りながら、広島へと向かいます。2人の記者が、ネット検索と足で取材していきます。
そして、ついに彼女の身元にたどり着きます。親族とのDNA鑑定も行うことで、身元が確定します。
残された謎…
しかし謎は残されたままです。北朝鮮の工作員という可能性があるものの、確かなことはわからないままです。
すべての謎が解明できないのも、ノンフィクションだからこそ。彼女の人生に思いを馳せることになります。
人生を思う
人生とはなにか? 死亡したときに身内がいない状態だったとき、だれが知らせることができるのか。
2人の記者の執念を感じることができるノンフィクションです。
「人間の足跡、生きた痕跡は、必ずどこかに残る。そう、たとえ行旅死亡人でも、である」