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『火の鳥』あらすじ全話解説!最高傑作はどれ?

火の鳥

手塚治虫のライフワークともいえる『火の鳥』は、人類の誕生から未来の終末までを描いた壮大なSF叙事詩です。各編ごとに時代や登場人物は異なりますが、「生命とは何か」「人間とは何か」というテーマは一貫しています。

今回は、『火の鳥』全話のあらすじをわかりやすく解説しながら、どのエピソードが最高傑作とされているのかも考察していきます!

『火の鳥』全エピソード

『火の鳥』は時代が異なるさまざまなエピソードがあります。それぞれ円環構造をなしていて、もっとも未来のことを描いた「未来編」のラストが、「黎明編」につながっています。

  • 黎明編
  • 未来編
  • ヤマト編
  • 宇宙編
  • 鳳凰編
  • 復活編
  • 羽衣編
  • 望郷編
  • 乱世編
  • 生命編
  • 異形編
  • 太陽編

『火の鳥』黎明編

  • 発表年: 1967年
  • 主な時代設定:3世紀頃

あらすじ

西暦3世紀ごろ、火の国クマソのふもとの村に、ウラジとその妻ヒナク、ヒナクの弟イザ・ナギがいた。 ウラジは病気にかかったヒナクのため、火の鳥の生き血を求めて火の山に入るが、逆に火の鳥に焼かれて死んでしまう。ある日、村へ流れついた異国の医者グズリは、ヒナクを治療し、その後、2人は結ばれる。しかしグズリは、実はヤマタイ国の女王・ヒミコのスパイだった。その夜、猿田彦を隊長とするヒミコの軍勢が海から上陸、村は全滅する。猿田彦はナギを捕らえて奴隷にし、腕のたつ狩部に仕立て上げ、火の山にすむ火の鳥を射止めさせようとする。老いつつあったヒミコが火の鳥を求めていた。

ヤマタイ国は存亡の危機にあった。民衆たちはヒミコの霊力が衰えつつあるのをみて、反乱を起こそうとするも弾圧され、忠告するヒミコの弟スサノオは追放された。一方、馬に乗った大陸の民・高天原族がニニギに率いられて日本列島に侵入、マツロの国、ヨマの国を滅ぼし、ヤマタイ国に迫っていた。

ヨマの国の生き残りで弓の名手、天の弓彦は火の鳥を仕留めることに成功、それをヤマタイ国に持ち帰るも、狂喜するヒミコは血を飲む前に絶命する。高天原族がヤマタイ国に攻め込み、戦乱の中、猿田彦、 ナギは戦死、そして天の弓彦は、無念の死を遂げる。

ヒナクとグズリは火山の噴火のため、絶壁に囲まれた穴の底での暮らしを余儀なくされる。その長男夕ケルはある日決心して絶壁をよじ登り、火の鳥の励ましを受けてついに地上にたどり着き、新たな旅の一歩を踏み出す。

日本神話と邪馬台国伝説を融合した画期的な歴史絵巻が、『火の鳥』譚の開始を告げる。

感想

「黎明編」は、神話と現実が交錯して、火の鳥の始まりにふさわしい物語。

卑弥呼は、火の鳥の不死の力に執着します。美貌が崩れていくんですよね。

対するニニギ(のちの神武天皇)は、火の鳥など恐れるに足らぬと言わんばかりの傲慢さを見せます。命を軽んじ、自然すら支配しようとします。

猿田彦が、大量の矢を浴び、命を落とすシーンは圧巻。

ナギとグズリの会話は、とても印象的です。

ナギ「人間ってどうして死ぬんだろう?」
グズリ「それはな命がなくなるからだろう」
ナギ「じゃあ死んでからどこへ行くんだい?」
グズリ「土に帰るからさ」

グズリの答えは素朴でありながら、命の循環を静かに伝えているんですね。

『火の鳥』未来編

  • 発表年:1967-1968年
  • 主な時代設定:3404年

あらすじ

この時代、地球の地上環境は壊滅状態にあり、人類は深い地下に5つの巨大都市国家を建造し、生活していた。メガロポリス・ヤマトの2級宙士・山之辺マサトは、飼育を禁止されていた宇宙生物ムービーが変身した娘タマミを匿っていたため、当局から追われていた。

マサトとタマミは、メガロポリス・レングードへ亡命しようと、荒れ果てた地上へと脱出し、火の鳥に導かれて、猿田博士のドームにたどり着く。猿田博士は、そこで絶滅した生物をよみがえらせようと、 ひとり人工生命の研究をしていたのだった。

ヤマトのあらゆる決定は、電子頭脳ハレルヤが指示していた。ハレルヤはマサト処罰を命じ、攻撃部隊を派遣する。一方、レングードの聖母機械ダニューバーは、マサト受け入れを命じる。ハレルヤとダニューバーは互いに自己の無謬性を主張して対立、ついには全面的な最終核戦争が勃発し、人類はおろか全生物が絶滅してしまう。

火の鳥によって不死化されたマサトだけが生き残り、孤独の中、5000年後に開く冷凍睡眠カプセルを見つけ、待ち続けるも、中の人間はすでに死んでいた。さらに年月が過ぎ、マサトは生命の素になるコアセルベートとなる有機物を海に放ち、生命の誕生と進化が再現されるのを見守る。

その途上で知性を持った直立ナメクジが現れるが、種族間戦争で滅びる。そのあとようやく人類が誕生し、「黎明編」の冒頭へとつながるような展開になっている。すでに肉体を失い、存在だけになったマサトは、30億年ぶりに火の鳥と再会、宇宙生命として火の鳥の体内に迎え入れられ、すでに宇宙生命のひとつになっていたタマミともめぐり逢う。

感想

『火の鳥』未来編では、AIによって支配されたディストピア的な未来が描かれています。この世界では「電子頭脳ハレルヤ」がすべての判断を下します。

人間は自らの意志ではなく、機械の決定に従って生きています。その補佐をするもうひとつのAI「ダニューバ」も存在し、両者は人間を超えた存在として機能しています。

作中では、ハレルヤとダニューバという二つのAIの“会談”によって、最終的に「戦争」という恐ろしい結論が導き出されます。それすら人間は従うという恐ろしさ…。

『火の鳥』ヤマト編

  • 主な時代設定:4世紀頃
  • 発表年:1968-1969年

あらすじ

奈良県明日香村の石舞台古墳のシーンから始まる。ヤマト国のソガ大王は自分のために壮大な墳墓を建造しようとしていた。墳墓の建設には多くの人々の命が犠牲となるため、民衆のことを思う王子のオグナはそれに反対する。勝手に歴史を捏造していたソガ大王は、九州のクマソの王、川上タケルが別の歴史書を編纂していることを知り、その征伐にオグナを差し向ける。

オグナには、もうひとつ別の目的があった。それは、父の古墳のいけにえとなる民衆を救うため、一不死を約束する火の鳥の生き血を手に入れることだった。しかしクマソの国に入ったオグナは、王タケルの人格に惹かれ、また彼の妹カジカと恋におちる。タケルを殺したオグナは、火の鳥から血を分け与えられ、ヤマトへ帰る。布にしみこませた火の鳥の血を持ち帰ったオグナは、ソガ大王の墓づくりや殉死をやめさせようとするが失敗。兄の復讐のため、オグナを追ってヤマトに潜入したものの、墳墓のいけにえに選ばれてしまったカジカとともに、生き埋めにされる。オグナは、殉死させられる民衆に火の鳥の血をなめさせ、生き埋めになった後も、土の中から、殉死に抗議する歌を歌い続ける。しかし1 年も経るとその声も徐々に途絶え、オグナとカジカは愛を確かめ合って力尽きるのだった。物語は暮れゆく石舞台のシーンで閉じる。

感想

登場人物の関係性がわかりやすいので、火の鳥のなかでもかなり読みやすい作品。

やはりラストのオグナとカジカが土のなかに閉じ込められながら、愛を伝え合うシーンは圧巻。

OVAのアニメ版では、より悲恋ものにしようとする意図が見えます。オグナは、タケルを討とうとすることを隠しているが、男気に惚れてしまう。さらにカジカに惹かれるという話になっています。オグナが戻っても、父親はなくなっていて、兄たちから疎んじられる展開にもなっています。

火の鳥はさまざまな形でアニメ化されていますが、傾向としては手塚治虫の複雑さを、どうシンプルにするかがあると思います。それはわかりやすさもあるけれど、どこかで見たベタ展開ともいえる。本来、手塚治虫が見せてくれた物語は、一筋縄ではいかない奥深さがあるなと。

『火の鳥』宇宙編

  • 発表年:1969年
  • 主な時代設定: 2577年

あらすじ

ペテルギウス第3惑星ザルツから地球へ向かって出発した宇宙船が、宇宙塵に衝突して故障する。人工冬眠から目ざめた隊長の城之内と隊員の猿田、奇崎、ナナは、ブリッジ担当の牧村隊員のひからびたミイラ死体を発見する。4人は、牧村の死体を残して、それぞれ個人用カプセルで、修理不能の宇宙船から脱出する。無線で牧村の死の謎について語り合っていると、死んだはずの牧村のカプセルがあとを追ってきた。4人は混乱と恐怖に陥る。

やがて奇崎のカプセルが軌道を逸脱し、城之内のカプセルは彗星の核の引力に捕らわれる。猿田とナナのカプセルだけが謎の星に不時着する。そこには奇怪な生物が生息していた。ナナは、遅れて不時着した牧村のカプセルから、赤ん坊になった牧村を発見する。猿田は、そこで出会った鳥人・フレミル星人の女から、牧村の秘密を聞かされる。牧村は永遠に生き、若返りと老いを繰り返す罰を受けた宇宙の罪人であり、この星は、囚人たちが島流しにされる流刑星だった。脱出の方法を模索する猿田に対し、牧村を愛するナナは、この星に残るという。秘かにナナに横恋慕する猿田は、赤ん坊の牧村を殺そうとする。 それを火の鳥に見咎められた猿田は醜い顔に変えられ、一瞬にして地球に追放されるのだった。

感想

ミステリーとしてあまりにも秀逸。牧村を殺したのはだれか?なぜ殺されたのか?壮大な仕掛けがまっています。

『火の鳥』鳳凰編

  • 主な時代設定:奈良時代
  • 発表年:1969-1970年

あらすじ

出生時の事故で、片腕、片目を失った異形の男・我王は差別と貧困の中で粗暴に育ち、ついには人を殺し、流浪の逃亡生活に出る。一方、大和に生まれた茜丸は、将来を嘱望された美形の彫刻師。対照的な2人はあるとき山中で出会い、我王は嫉妬から茜丸の利き腕を切りつけてしまう。

いったんは絶望した囲丸だったが、懸命に再起を期し、芸術の道を追究する決意を固める。火の鳥の伝説を知り、その姿を描きとめたとされる鳳凰図に恋い焦がれ、ついに正倉院に秘蔵されている織物と対面を果たす。感激の中でまどろんだ茜丸は自らが輪廻転生の末、名もない微生物と化した夢を見る。我王は役人に捕らえられ斬首の刑を宣告されるが、高僧・良弁僧正に助けられる。

諸国を巡るうちに、病や死に苦しむ人々の姿に出会い、我流で仏像を彫るうちに、眠っていた才能を開花させる。即身仏となって死にゆく僧正の姿に触れ、悠久の時間の中で人の命の取るに足らないことに気づき、人生に拘泥する無意味さを哄笑の中で悟る。西丸は、大仏建立に邁進する時の権力者たちに取り立てられ、それが自らの芸術を堕落させることを自覚しながらも時流に抗することはできず、いっときの名声に身を委ねる。

ついに、エリート仏師・西丸と野生の芸術家・我王は運命の対決を果たすときが来た。大仏殿の鬼瓦を競作することになったのだ。出来上がった作品は誰の目にも、我王作の方が圧倒的な迫力と躍動感に満ちていたが、政治的な配慮から茜丸作に軍配があがる。さらに自らを正当化するため、茜丸は、我王の旧悪を暴露、我王は残る右腕を切られて追放される。しかし偽の栄光もつかの間、茜丸は大仏殿そばの倉から上がった火の手に巻き込まれ、あっけなく焼死してしまう。

両腕を失った我王は、ノミを口になおも仏像を彫り続けていた。生きとし生けるものが横溢する自然の中に身をおいた我王は、一度は無意味だと冷笑した命の意味をもう一度悟り直す。

感想

圧倒的な完成度!火の鳥のなかでも屈指の人気作なのがわかりますね。

我王の強烈なキャラが、仏師として才能が開花していくのが、気持ちいい。そして大事なのは、茜丸です。聖人君子のような存在が、どんどん嫉妬にまみれて人間くさくなっていく。それによって悲劇が引き起こされる。すさまじい物語。

『火の鳥』復活編

  • 主な時代設定: 2482年
  • 発表年:1970-1971年

あらすじ

レオナ・宮津は、交通事故にあってエア・カーから転落死した。ニールセン博士の再生手術で生き返ったが、脳の大半を人工頭脳に交換され、生物が無機物にしか見えなくなってしまう。

そんなある日、レオナは事務用のロボット・チヒロと出会う。チヒロは何の表情もない冷たい金属製のロボットだったが、レオナにはそれが逆に美しい女性に見えた。レオナはチヒロを愛するようになり、 感情を持たないはずのチヒロにも感情が芽ばえ始めた。一方、レオナは自分の事故が仕組まれたものではないかと疑い、狙撃手トワダの消息を追う。アメリカ・コロラドの山小屋に行き着いたレオナは、かつて自分はフェニックスの血を求めてこの場所にいたことを思い出す。彼は事故時に記憶を喪失していたのだ。

帰国したレオナはチヒロをさらって逃亡する途上、宇宙移民を密輸する闇商人に捕らわれる。闇商人の主治医ドク・ウィークデーは、レオナの遺言を聞き入れ、レオナの心とチヒロの心をひとつにしてロボットを作る。それが、感情を持つロボット・ロビタの誕生だった。それから数百年、人間的な反応を示すロビタ型ロボットの生産が続いていた。

ある日、農場で働く1台のロビタが子ども殺しの容疑をかけられる。裁判の結果、農場の全ロビタは冤罪のまま溶解処分となる。すると自意識を持つロビタ型ロボットおよそ3万6200体は突然作業を放棄、次々と高熱炉に身を投じ集団自殺を遂げるのだった。月面に1台だけ残されたロビタ型ロボットは、自分は人間だと言い始める。それを認めないボスに対しロビタは反逆を起こす。

感想

人間は人間をどう捉えているのか? レオナがまわりを人間と見ることができず、チヒロに惹かれていってしまう。AIへの恋愛は、現代どんどん現実味を帯びている。

『火の鳥』羽衣編

  • 主な時代設定:平安時代
  • 発表年:1971年

あらすじ

遠州三保(現在の静岡県)の浜に住む漁師のズクは、海岸の松の木に掛けられた美しい羽衣を見つけた。 一見して高価なものだった。すると女の声がして、その衣を返してほしいという。ズクが素性をただすと、 女はおときと名乗り、遠い空の上の国から旅をしてきたという。おときを天女だと確信したズクは、3 年一緒に住んだら衣を返すと約束する。なんとしてでも衣を取り戻したいおときは、それを承諾する。

2人の暮らしは貧しくも幸せで、まもなく子どもが生まれた。ところが新しく領主になった平将門が反乱を起こし、その鎮圧のためにやってきた兵隊2人がズクを徴兵すると宣告した。おときは自分の羽衣を差し出してズクを見逃してもらう。そして自分は1500年先の未来からやってきたこと、未来の品が人手に渡ると歴史が変わり、それは重罪になることを打ち明けた。おときは、殺戮戦争が起きた未来から、火の鳥の力で過去の時代に送られてきたのだ。それを聞いたズクは、羽衣を取り返しに出かけるも戻ってこない。1年後、ズクとの間にできた存在してはならない子どもとともに、おときは未来に帰る。まもなく深手を負って戻ってきたズクは、取り戻してきた羽衣を松の木の下に埋め、ひとり息絶えるのであった。

感想

かなりの実験作。舞台を見ているかのように、コマの背景は一定のままで、登場人物が舞台に出入りする。読者の視点は固定化されているんですね。

『火の鳥』望郷編

  • 発表年:1976-1978年

あらすじ

愛し合うロミとジョージは地球を脱出し、荒れ果てた惑星エデンワで2人だけの生活を始める。その矢先、ジョージは事故で死んでしまう。宿していた子どもカインを生んだロミは、無人のこの星で生命をつなぐため、禁断の選択をする。人工冬眠をしてカインの成長を待ち、彼との間に子どもを作ったのだ。 

しかし何人子どもを生んでも、なぜか男しか生まれない。生命が途絶えかけたとき、火の鳥が救いの手を差し伸べた。異星に住むムービーを連れてきたのだ。ムービーは不定型生物、自在に変身し人間と結ばれ交配種を作ることができた。その子孫はたちまち増え、エデンワにある町・エデナは豊かに栄えた。 ロミは女王として迎えられるが、地球に対する望郷の念を忘れることができない。ロミの思いを叶えたいと願う少年コムは、ムービーの念力を使って巨大な岩石宇宙船を動かし、ロミとともに地球への旅路に出る。

途中、ロミは瀕死状態に陥るが延命装置によって若返った。ついに宇宙船は地球に到着する。 地球に残された自然の風景をロミに見せるためコムは奔走するが、地球に密入国したとして2人は政府から追われる身となる。

ロボットや暴走族の助けで、ついにロミとコムは美しい湖のほとりで夕焼けを眺めることができた。しかしそのときロミの命は尽きかけていた。追っ手の銃撃から逃れたコムは水辺の花に変身する。一方、 エデナは侵入者によって欲望と悪の町に変貌していた。大地震が起こり、町は一瞬にして滅亡する。

感想

SF作品として冒険譚としてかなりエンタメ色が強い作品。地球へ帰りたいという望郷の思いが、軸になっています。

結局人はどこに行ったとしても、場所を作るための子孫繁栄を考えてしまうのかもしれない。手塚治虫のスケールのでかさを感じる作品。

Studio4℃が劇場版、ディズニープラス用でアニメ化。近親相姦描写がゆるくなっていたり、なぜ子どもを残して冷凍冬眠できるのか、疑問が残るが、見やすくはなっています。絵がきれい。そして手塚治虫の発想のスケールを感じることができます。

『火の鳥』乱世編

  • 発表年:1978-1980年
  • 主な時代設定:平安時代終盤(12世紀末)

あらすじ

木こりの井太は、さらわれた許嫁のおぶうを追って京の都に出てくる。井太は、そこで牛若という若者に出会い家来になる。一方、おぶうは時の権力者・平清盛に仕える身になっていた。

清盛は、永遠の命を求めて火焰鳥を探し求めていた。藤原成親や僧の俊寛らは鹿ヶ谷に集い、上皇を招いて平家打倒の陰謀を企てるが、学僧らの騒乱により失敗、都は火に包まれる。密告によって謀議を知った清盛は、首謀者を次々に処罰。都を福原に移したかと思えば京に戻すなど、心を乱しながら病にたおれる。その機に乗じて諏訪の木曽義仲が反乱を起こし都に攻め上り、平家一族は西国へ逃げる。

義経と名を改めた牛若は源氏の大将として井太を従え、一ノ谷の戦いで平家を追い詰める。ついに壇ノ浦で平家と源氏は決戦を迎える。弁太は、平家の船に乗ったおぶうを見つけるが、戦闘の最中おぶうは義経に斬り殺されてしまう。源氏は平家を滅ぼし、義経の兄、源頼朝は鎌倉幕府を成立させる。最初は義経の戦功を喜んだ頼朝だったが、義経が火焰鳥の血で不老不死を願っているという疑心暗鬼から、義経を敵視、刺客を差し向ける。井太とともに平泉に落ち延びた義経は、庇護者の奥州藤原氏の寝返りで窮地に陥り、最後は非業の死を遂げる。

感想

火の鳥のなかでは、日本史の実在する人物がもっとも出てくる作品。源平合戦のうらで、火の鳥がいたという解釈。平清盛の悲哀や、義経の愚かさが強調されていておもしろい。

『火の鳥』生命編

  • 発表年:1980年
  • 主な時代設定:2155年

あらすじ

視聴率競争に追われるテレビプロデューサーの青居邦彦は、ハンターが人間狩りをするという過激な番組を企画する。ターゲットはクローン人間ならよいと考え、世界で唯一のクローン技術を持つアンデス山中の研究所を訪れる。そこで青居は、研究員の猿田とともに、クローン技術の秘密を知る、鳥の面をかぶった女(ケチュア族と精霊の間にできた子ども)と出会うが、何と青居自身のクローン人間を作られてしまう。それは、我欲のために生命をもてあそぼうとした青居に対して、その女が与えた罰だった。そうとは知らないテレビ局は、青居のクローンを連れ帰り、ハンターに殺させる番組をスタートさせて大ヒットをとる。が、見分けがつかない本物の青居もターゲットにされてしまう。青居は、追っ手から逃げる途中で知り合った少女ジュネとともに、北海道の人里離れた自然境に隠れ住む。

15年の歳月が流れ、青居は忘れていた人間らしい心を取り戻し、成長したジュネを愛するようになる。 しかしそれも束の間、疑心暗鬼にかられた青居の行動により、ジュネは銃創を負ってしまう。罪悪感や自身の無力さに苛まれた青居は、ジュネを助けるべく意を決して都会に出るも、その時テレビでまだクローン人間狩りの番組が続いていることを知る。テレビ局は、クローン人間の国産化を企図していたのだ。青居は、殺されるためにだけ生み出されるクローン人間の工場を破壊すべく、自爆テロを決意する。

感想

ハンターを追いかけるといういまもどこかで放送してそうな番組で、ゾッとしてしまう。自らがクローンになってしまう恐怖も描いてるのが秀逸。

途中で出てくるロボットのおばあちゃんは生きているといえるのか?生命のあり方についても問いが盛り込まれています。

『火の鳥』異形編

  • 発表年:1981年
  • 主な時代設定:15世紀末

あらすじ

残忍な領主・心優家正の娘に生まれた左近介は、強制的に男として育てられる。ある嵐の夜、左近介は従者の可平とともに、蓬莱寺の八百比丘尼という尼を殺しに出かける。重い病にかかった父・家正が、 どんな病でも癒すと評判の比丘尼に治療を頼んだからだった。

左近介は父を憎んでいた。自分が女として生きるためには、父が死ななければならない。左近介は比丘尼を斬り殺した。ところが、寺から出ようとすると不思議な力が働いて寺に戻されてしまう。何度試みても寺から出ることができない。そうしているうちにも村人が病気を癒してもらおうと次々にやってくる。左近介は比丘尼に変装し、本尊の中にあった光る羽を使って病人たちを治してやる。怪我をした妖怪までもが寺を訪れるようになる。

 やがて左近介は、寺の外の時間が30年前に逆行したこと、そして領主の子どもが自分を殺しにやってくることを知る。実は、比丘尼は左近介だったのであり、まもなくやってきた自分自身の刃にかかって死ぬ。 この寺は時が閉ざされた世界であり、比丘尼=左近介は無限循環の中で生きることを宿命づけられていたのだ。

感想

輪廻転生。罪を犯した者の運命を描いていて、手塚治虫のSF巧者なのが伝わる作品。かなり完成度が高い。

『火の鳥』太陽編

  • 発表年:1986-1988年
  • 主な時代設定:7世紀、22世紀

あらすじ

倭国(日本)と百済の連合軍は、朝鮮半島の白村江の戦いで唐と新羅の連合軍に大敗。百済王一族の兵士・ハリマは、唐軍に捕らえられ、生きながらに顔の皮をはがれ狼の皮を被せられてしまう。狼の顔を持ったハリマは、仙人の老婆に助けられ、倭国へと渡る。浜でハリマは、 へと渡る。浜でハリマは、狗族と名乗る先住者たちと出会う。 狗族は、かつては産土神(自然神)として人間から崇められていたが、仏教の台頭によって魔物とされ、人里を追われて山奥にひっそりと暮らしていた。ハリマは「犬上」の姓と領地を得る。 ハリマは、狼の皮を被せられて以来、悪夢にうなされていた。次第に、悪夢の中のもうひとりの自分の存在を確信していく。ハリマの精神は、21世紀に生きる板東スグルの精神でもあったのだ。 そのころ日本では、火の鳥を神と崇拝する宗教組織・光が地上を支配し、地上から追われた地下組織シャドーたちとの抗争がつづいていた。

一方、7世紀の舞台では、犬上が狗族の擁護者として、仏教を信奉する勢力と戦いを繰り返していた。 しかし圧倒的な仏族の勢力の前に窮地に陥る。

光のエージェント・ヨドミは、スグルの侵入を防げなかった罪で収容所に送られていたが、そこでスグルと会う。2人は惹かれ合いつつも立場の違いから対決せざるを得ない。しかしヨドミはスグルに刺されても死なない。混乱に乗じて地上に逃れたスグルは、装甲車で敵の基地を体当たり攻撃し爆死する。 ヨドミに生まれ変わっていたマリモは、犬上が転生した姿のスグルに霊界で再会、2人は狗族の世界に向かう。

感想

太陽編はある意味、火の鳥の完結編といってもいいと思う作品。過去と未来を本作のなかで同時にやっているから。ただ、物語としての魅力はいまいちか…。

『火の鳥』小説・大地編

あらすじ

昭和十三年、日本占領下の上海。関東軍将校・間久部緑郎は、財閥総帥・三田村要造の娘と結婚し異例の出世を遂げた。彼は、不老不死の伝説を持つ「火の鳥」の調査隊長に任命される。調査地は、中国タクラマカン砂漠にある“さまよえる湖”ロプノール。周囲の生物に見られる異常な長寿と活力が、火の鳥の“未知のホルモン”によるものではないかとする猿田博士の仮説があった。

緑郎は義父が後援する「ファイヤー・バード計画」の成功と、二階級特進を胸に任務に挑む。調査隊には、共産主義に共鳴する弟・正人、マフィアと通じるルイ、元皇女・川島芳子、謎の美女・マリアらが参加し、後に猿田博士も合流する。一行は苦難を越えロプノール湖に到達し、かつて楼蘭が存在したその地で、火の鳥の持つ力と人間の欲望が交錯する壮大な真実に直面する――。

感想

手塚治虫が残したメモをもとに、桜庭一樹が小説化。日本史と完全にリンクさせていて、SFとしてもおもしろい。

日本軍が何度やっても不利になることを覆そうとして、歴史改変するんですね。そこに山本五十六、石原莞爾、東條英機が絡んでくる。

最終的には兄の緑郎が独裁者として暗躍することになり、それを止めるために弟の正人が立ち向かう。ただ正人は原爆を見て、歴史改変をしてしまったことで、自らも存在してはいけないと考えていた…。

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この記事を書いた人

はじめまして、管理人のKです。2016年にブログを開設して、好きな本や映画、ドラマのことを書いてきました。エンタメ情報を中心に投稿していきます!

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