『怪獣8号』は、怪獣を倒す側になれなかった男が、よりによって怪獣になってしまう話です。設定を聞いた時点で面白いと分かる、珍しいタイプの作品ですよね。アニメ版の各話を簡単にまとめたうえで、この作品がなぜ刺さるのかを考えます。
『怪獣8号』あらすじ
怪獣の脅威が日常になった世界で、防衛隊を目指しながら夢に届かなかった主人公が、ある出来事をきっかけに怪獣の力を得てしまいます。倒す側になりたかった人間が、倒される側の力を手に入れる。その矛盾を抱えたまま、防衛隊を目指し続けることになります。
各話あらすじ(簡易版)
各話の流れを簡単にまとめます。詳しい展開は本編でご覧ください。
- 1話:カフカが怪獣の力を得てしまう。防衛隊を目指すことを決意する
- 2話:力を使って人を助けたことで、夢を思い出す。一次試験を突破
- 3話:試験で苦戦するが、清掃員の経験が武器になる
- 4話:仲間の危機に力を使い、秘密を共有する相手ができる
- 5話:防衛隊に入隊。初任務が始まる
- 6話:討伐作戦を完遂するが、裏で不穏な動きが起きている
- 7話:人型の怪獣が現れ、カフカの正体が発覚しそうになる
- 8話:追及をかわしつつ、隊員たちとの距離が縮まる
- 9話:基地が襲撃され、保科が強敵と対峙する
- 10話:総力戦の末に決着がつくが、カフカの秘密が明るみに出る
- 11話:拘束されたカフカが防衛隊長官と向き合う
- 12話:一連の戦いに区切りがつく
【感想】主人公が「もう若くない」ことの強さ
この作品の一番の発明は、主人公を32歳にしたことだと思います。少年漫画の主人公としては異例ですよね。
夢を諦めきれないまま歳を取ってしまった人間が、最後のチャンスを掴む。これは10代の主人公では絶対に出せない重みです。周りが若い同期ばかりという構図も含めて、痛いところを突いてきます。
「掃除していた人」が強い理由
もうひとつ好きなのが、カフカの強みが戦闘経験ではなく怪獣の死体を処理してきた経験だというところです。
誰もやりたがらない仕事を長く続けたことが、そのまま武器になる。遠回りが無駄じゃなかったという描き方は、この作品の主題そのものだと思います。
【考察】この作品の主題は「経歴では測れない」ということ
私は、『怪獣8号』が描いているのは経歴と実力のズレだと考えています。理由が2つあります。
理由①試験という制度が繰り返し描かれる
序盤で丁寧に描かれるのが、防衛隊の入隊試験です。数値化された基準で人を選別する場面に、かなりの尺が使われています。
そしてカフカは、その基準では明らかに下位なんですよね。それなのに現場では誰より役に立つ。制度が見落とすものがある、という主張がここに置かれていると思います。
理由②力を得ても「隠さなければならない」
もうひとつ重要なのが、カフカが力を得ても堂々と使えないことです。使えば排除される。
これは能力の問題ではなく、その能力が制度の想定外だから起きる問題です。評価される枠に収まらない力は、強くても認められない。ここがこの作品の切実さだと思います。
【考察】アニメ版は「間」の取り方がうまい
アニメ化で良かったのは、戦闘より戦闘の前後の静かな時間を丁寧に描いているところだと思います。
風呂での雑談や、任務後の慰労会。あの手の場面を削らなかったことで、隊員たちが「守られる側の日常を持っている人間」だと伝わってきます。だから戦闘の緊張が効くんですよね。
『怪獣8号』登場人物
- 日比野カフカ:怪獣専門清掃業で働く
- 亜白ミナ:防衛隊第3部隊の隊長。カフカの幼なじみ
- 四ノ宮キコル:エリート生まれ
- 市川レノ:カフカの相棒的存在
- 保科宗四郎:第3部隊の副隊長
- 鳴海弦:第1部隊の隊長
- 出雲ハルイチ:東京討伐大学を首席で卒業
- 古橋伊春:負けん気が強い
- 神楽木葵:元陸上自衛隊
『怪獣8号』は遠回りを肯定する作品
というわけで、『怪獣8号』の感想と考察でした。派手な怪獣ものに見えて、扱っているのはかなり地に足のついたテーマだと思います。皆さんはどう見たでしょうか。
