お金は人生において大事なもの。
本来はただの道具だったはずが、お金に人生を縛られ、振り回されているようにも感じます。
お金はこれまで中央集権型で、動いてきました。それが、新しいテクノロジーによって、経済にもいよいよ民主化の波が押し寄せていると、著者は指摘します。
著者の佐藤航陽さんは、株式会社メタップスの代表取締役社長であり、タイムバンクのサービスを立ち上げています。
本書の目的は、お金や経済とは何なのか?その正体を解き明かし、新しい経済を知ることで、お金や経済をツールとして使うことを目指しています。
お金を「ツール」として深く理解することで、今まさに始まりつつある「新しい経済」をうまく乗りこなし、自分のやりたいことが実現できることを強く願っています。
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未来の方向性を決める3つのベクトル
いまはテクノロジーによって、お金や経済のあり方が激変していますよね。いったい僕らはどこへ向かおうとしているのでしょうか?
著者は、未来の方向性は、以下の3つのベクトルが決めると考えています。
- お金
- 感情
- テクノロジー
3つの異なるベクトルが併存し相互に影響を及ぼしていくわけです。
確かに時代が早すぎてもダメですし、大衆の感情が追いつかなければ変革は起きないのは、感覚としてもそうだなだと。
そして、新しい経済の波がきていて、フィンテック2.0が起きているといいます。
- フィンテック…すでに存在している金融の概念は崩さずに、ITを使ってその業務を限界まで効率化するようなタイプのもの。
- フィンテック2.0…近代に作られた金融の枠組み自体を無視して、全くのゼロベースから再構築するタイプのもの。
金融においてかなり大きな変革というわけです。
お金とは何か?
お金とはなにか? 経済の話をする上で外せません。
お金の条件とは、価値の保存ができること、価値の尺度があること、交換の価値があることになります。
そして世界最古のお金は、紀元前1600年ぐらいの貝殻だといわれています。
18世紀ごろ、資本主義の発達とともに、お金が表舞台に立ってきました。お金は価値を運ぶツールだったのが、お金からお金を生み出す方法を考えた人たちがいたのです。
お金は中央銀行で作られるというのも、つい最近のことだったんですね。
最初の本格的な中央銀行は、大英帝国のイングランド銀行。1694年にフランスと戦争中だったイギリスが戦争費用を調達するために作られました。ただし、1つのメガバンクが発行する証書のにすぎなかったというのも驚きです。1833年に法定通貨になり、1844年にピール銀行条例で国営化されました。
1900年代で中央銀行を設置していた国は18ヶ国程度、1960年には50ヶ国。いまは大半の国に設置されていますが、中央銀行システムが当たり前と思ってるのも、それほど昔からの話じゃないんだなと。
ハイエクは貨幣発行自由論で、「国家が中央銀行を経由して通貨をコントロールすることは実体経済に悪影響を及ぼすとし、通貨の国営化をやめるべきだ」と主張しました。市場原理を導入すべきと。この時代、中央銀行における議論があったんですね。
経済は欲望のネットワーク
ここから、経済の特徴について切り込んでいきます。
経済は欲望のネットワークであり、「本能的欲求」「金銭欲求」「承認欲求」が動かすものだとします。
経済はかなり動的なネットワークだと言えますが、なぜ動的なのでしょうか?
- 極端な偏り:多くの人が支持しているものが人気になりさなに多くのつながりを獲得しやすく偏りが生まれる。
- 不安定性と不確実性:些細な出来事がネットワーク全体に影響を与えて、常に全体が不安定で不確実な状態になる。
では、経済は創れるのか? それには人が人を呼ぶ仕組みが必要で、要素としては以下があると著者はまとめています。
- インセンティブ
- リアルタイム
- 不確実性運と実力の要素
- ヒエラルキー秩序の可視化
- コミュニケーションが取れること
動的なネットワークを持続させるには、寿命を設定して次の手を打つことも大事。FacebookがInstagramを買収したように、先手を打てるかどうかですかね。
経済と脳の仕組みは似ている
本書で目からウロコだったのは、経済と脳が似ているということ。
経済という大きなシステムを知るには、自分たちの脳みその仕組みを知るのが近道でした。
脳は、退屈しやすい、飽きやすい。不確実性のある環境で得た報酬により多くの快楽を感じやすいのです。これは、自然の中で生きていく術なのでしょう。他者と比較したがるのも特徴です。
「自然が経済に似ている」のではなく、「経済が自然に似ていたからこそ、資本主義がここまで広く普及した」のだということです。
自然のシステムとは何かを考えてみると…
- 自発的な秩序の形成
- エネルギーの循環構造
- 情報による秩序の強化 内部に記憶、遺伝子
このような要素があると分析します。
自然について、物理学者プリゴジンが「散逸構造」と言ったり、生物学者バレーラが「autopoiesis」といったり、ハイエクが「自生的秩序」といったりしています。
キーワードは「自律分散」
ここからいよいよ未来予測! キーワードになるのは「自律分散」です。
「自律分散」というコンセプトが、多くの産業のビジネスモデルを覆すことになると私は思っています。
テクノロジーの進化によって中央集権化から「分散化」が起こり、膨大なデータがあふれたことで「自動化」が起こる。「分散化」と「自動化」によって、「自律分散」が起こると予測しています。
お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということです。価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなっています。
すなわち、価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていきます。
資本主義から「価値主義」に転換するということですね。
そして、価値主義が到来することで、3つに分類されていくとしています。
- 有用性としての価値:役に立つかという観点から考えた価値のこと。資本主義がメインに扱う価値。
- 内面的な価値:個人の内面的な感情と結びつけたもの。愛情、共感、興奮、好意、信頼など。
- 社会的な価値:個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動。
お金や経済が民主化されることで、さまざまな影響が考えられます。
エストニアの電子国家戦略
電子国家エストニアの事例もおもしろかったです。
エストニアは、人口130万人ほどの小国。スカイプなどの発祥地で、デジタル国家を目指しているんですね。
電子投票システムを導入したり、行政手続をほぼ電子化。電子居住権は、海外の起業家が申請すれば銀行開設して法人設立もできます。すでに2万人以上が、電子居住権の申請を許可されているそうです。
さらに、独自の仮想通貨「エストコイン」を発行していて、国家を使って実験しまくっています。
また、「Way of the Future」というGoogleの元社員が作った宗教法人も興味深いです。人工知能を神として崇めているんですね。
SFの世界が現実になっている。
おすすめ度8☆☆☆☆☆☆☆☆★★
これからの「お金」を考える上で、よくまとめられています。未来予測と現実のバランスもよくて、参考になる箇所がめちゃくちゃ多い。
本書は最後にアインシュタインの言葉を引用しています。
空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない
好奇心と想像力を絶やしてはいけないということ。
お金本として、おすすめです!
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