アメリカでは、発売前にトランプ大統領が「出版差し止めだ」と怒りを見せた暴露本。
逆に売上増加につながっているようで、現地ではハリー・ポッター最盛期のような売れ行きだそうです。
それだけトランプ政権自体の注目度は高いし、本書の暴露要素に興味を持っているということなのでしょう。
まるで、トランプ政権の中にいたかのように臨場感のある筆致で、読んでるのが楽しいんですね。
トランプの無知が明らかになる
とにかくトランプの評判の悪さが明かされます。
トランプの言動に振り回され、「トランプは精神病だ」という話が、政権下の人たちから出てくるのには驚きでした。
批判的な話が平気で出てくるのは、おそらく公になると思っていなかったから。それだけメディア対策がゆるゆるだっということ。
実際、著者のウォルフは、大統領選中からトランプの周辺取材をしていて、かなり自由に話を聞けたようです。
またトランプの無知も本書で指摘されてます。外交についてもまったくの素人。さらに、オバマ時代の医療保険制度にもまったく興味がなかったことが分かります。金持ち一族なわけで、医療保険制度について実感できないんですね。共和党の希望通りに、オバマケアを潰せば、政権に大きなプラスになるはずが、トランプが動かなかったのは、これが理由のようです。
大統領選に勝つつもりはなかった
そもそも、大統領選にトランプは勝つつもりはなかったことも見えてきます。
トランプの周辺にいる人たちはもちろん、トランプ本人すら大統領になれると思っていなかったようなんですね。
「負けるなんて考えなくていい。選挙に負けたとしても、実質的には勝ったようなものだからな」といった発言は象徴的です。
選挙で負けても、「不正だ!」といえば、トランプの価値は上がるし、有名になれることは確約されていたわけです。敗北こそが勝利だったはずが、まさかの勝利。
だから、トランプ政権の幹部は、ロシア大使やロシアのエージェントと平気で密会していたのです。幹部になれば、身辺を調べられて、大きな疑惑が生まれる行為であっても気にしてない。ロシアと密会していたのは、ヒラリーへの不利な情報を集めるためだったと言われています。
トランプ政権の主要メンバーの仲違い
トランプ政権の初期には、プリーバス、バノン、クシュナーの3人が軸になっていました。この3人は、仲違いしていたのに、誰かを追い落とそうとはしていません。それは、ひとえに3人が平等に互いを軽蔑しあっていたからのようです。気まぐれなトランプの顔色を3人がそれぞれ気にしていた。トランプのデタラメさが、奇妙な均衡を創り出していたわけです。
とはいえ、トランプ政権のバノンをはじめ、どんどんメンバーが入れ替わっているわけですが。
トランプはハゲだった!?
本書は小ネタも豊富です。
トランプがホワイトハウスの寝室にカギをつけさせたことや、ハンバーガーは毒殺を防ぐためにマクドナルドで買うことが明かされます。不特定多数に提供する、マクドナルドなら大丈夫だろうという理屈ですね。
そして、髪型への暴露もあります。だれもがツッコミを入れたくなるのがトランプ大統領の髪型です。これは頭頂部のハゲを隠すために、周囲の髪の毛をまとめて後ろになでつけて、ハードスプレーで固定していることが暴露されます。ヘアカラーのブランド名も明かしていて、大スクープですね!
あと、CPAC(保守政治行動会議)の存在もアメリカのいびつな構造を感じさせました。CPACはトランプよりも右寄りの思想を持ち、大統領選にはトランプを批判していたものの、大統領になった途端、会議でのスピーチを依頼しているんですね。大統領になることの意味を感じさせました。
おすすめ度7☆☆☆☆☆☆☆★★★
トランプ政権の内実を知るにはうってつけの内容になっています。
ただし、政権内のやり取りが当事者たちの会話まで、再現されていて、ウォルフがどこまで取材で拾っているのかは疑問もあります。創作もあるんじゃないの?と思ってしまう。
それでも、ウォルフの綿密な取材の成果だといえる内容で、重厚なトランプ本になっていて、おすすめです!
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