もはやいまのIT企業の源流を、ビル・キャンベルが作ったといってもいいのかもしれません。
ビル・キャンベルとは、アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者でした。ジョブズの師ともいえる存在であり、Google創業者たちをゼロから育て上げたコーチでもあります。さらにAmazonのベゾスを救い、Twitter、You TubeのCEO、FacebookのCOOにも影響を与えたといいます。
タイトルが1兆円と付くのですが、「ビジネスで成功する!稼ぐ!」といった資本主義的な話ではなく、人間関係の構築についての話なんですね。
いま注目されているコーチングについて、先端を走っていたことがわかります。ビル・キャンベルが実践していたことはなにか?書籍のなかから、まとめてみました。
どうやってコーチしたのか?
ビルはなにをコーチしたか。どうやってコーチしたのか?本書では以下の4つについて解説しています。
- マネジメントスキルをどうやって細部に至るまで実践していたか
- ビルは一緒に働く人たちとどうやって信頼関係を築いていったか
- 彼はどうやってチームを構築していったか
- ビルはどうやって職場に愛を持ち込んだか
職場に「愛」を持ち込むという表現は、ビルのコーチングの象徴的なところになります。
ビルがやってきたことは、プロダクトや戦略についての指示ではありません。チームのコミュニケーションがとれているか、緊張や対立が明るみに出されて、話し合わされているかどうかに気を配りました。
人間関係の質がキャリアや企業の命運を握る、現代の共創的な世界においてまさしく重要なものだ。
また、マネジャーの仕事もシンプルに、以下のような定義がされています。
すべての意見を吸い上げ、すべての見解を検討するための意思決定プロセスを実行し、必要な場合にはみずから議論に決着をつけ、決定を下すことだった。
率直さ+思いやりの方程式
コーチングするときの姿勢は、フリーフォーム。相手の話にひたすらじっくり耳を傾けることをしていたようです。
- 完全な率直さを身につける
- フィードバックは徹底的に正直で率直にできるかぎり早く与えよ
- ネガティブなフィードバックはひと目のないところで与えよ
率直さと相手への思いやりによって、人は変化していきます。人はありのままの自分でいられるとき、そして全人格をかけて仕事をするとき、もっともよい仕事ができるわけです。
ビルにとって、「信頼」は最優先かつ最重要の価値観。信頼している相手に対して自分の弱さを見せられるか。信頼は、約束を守ること、誠意、率直さ、思慮深さから育まれるといいます。
そこから心理的安全を担保することができ、信頼が構築されていくのでしょう。
コーチャブルかどうか
おもしろいと思ったのが、受け手の姿勢も問われるということです。相手がコーチャブルかどうかも見る必要があるわけです。
- 正直さと謙虚さがあるか
- あきらめず努力を厭わない姿勢があるか
- つねに学ぼうとする意欲があるか
コーチは相手の強みと弱みを知るだけではなく、相手が自身の強みと弱みをどれだけ認識しているのか知らなくてはならないんですね。
ネガティブなフィードバックをどうすればいいのか?
コーチングって相手を否定しないというがあると思うのですが、成長するにはネガティブなフィードバックも必要になってきます。そのときどうするのかは悩まやしい…。
本書を読んでいて感じたのが、やはりある程度、人間関係ができていないと、ネガティブなフィードバックは反発を受けることはあるということ。
もっともダメなのは自分や他人の物差しで語っても、相手は聞く耳を持たない。あたりまえですよね。いや、自分とは違うし…と思ってしまう。
相手の物差しで語ることが必要なのです。そのためには、相手のことを知る必要があります。情報収集をして、どんな生き方をしたくて何を目的としているのか。ここを共有することで、目的のためにはこうしたほうがいいと、フィードバックできるようになるわけです。
また、素直さ・謙虚さはスキルなので、後天的に身につけることは難しいのでしょうか?実はそんなことはなくて、「行動」していくと「資質」になっていくわけです。徐々に小さな体験から自分の行動がさらに変化していく。
ざっくばらんな集まりをつくる
ビルはコミュニティ作りの達人でもありました。
スポーツバーといった人の集まる場所に投資したんですね。参加条件は1つ、「なんのもくろみも持たないこと」。コミュニティ作りはチームビルディングに通じるというのは納得感があります。
あと、人と人を結びつける天才でもあったようで、相手の特性を知っているからこそ結びつけやすいのだなと思いました。
人がすべて
最後にビルが大事にしていた「人がすべて」を引用しておきます。
どんな会社の成功を支えるのも人だ。経営者の一番大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。我々には成功を望み、大きなことを成し遂げる力を持ち、やる気に満ちて仕事に来る、とびきり優秀な人材がいる。優秀な人材は、もてるエネルギーを解放し、増幅できる環境でこそ成功する。経営者は「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきだ。
「支援」とは?
成功するために必要なツールや情報、トレーニング、コーチングを提供することだ。メンバーのスキルを開発するために努力し続けて、彼らが実力を発揮し、成長できるよう手助けする。
「敬意」とは?
一人ひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重すること。会社のニーズに沿う方法で、彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けする。
「信頼」とは?
自由に仕事に取り組ませ、決定を下させること。成功を望んでいることを理解し、必ず成功できると信じることだ。
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