人間って、追い詰められると自分だけが得をしようとする。
人間って、悲惨な状態になると自分だけが生き残ろうとする。
こんなイメージを持っていないでしょうか?この価値観をガラリと変えてくれるのが、『Humankind 希望の歴史』です。
本書が提示するのは、「ほとんどの人は本質的に善良だ」ということです。著者は、オランダの33歳の歴史家・ジャーナリストであるルトガー・ブレグマン。人類史を縦横無尽に走り抜け、人間の性質に迫っていきます。
読んだあとに、ものすごく前向きになり、世界の見え方がちょっと変わっている。そんな読書体験ができる本になっています!
本書含めたビジネス書まとめはこちらです。
- タイタニックでも9・11でも人は助け合っていた
- 人間の本性は凶悪だという情報が蔓延している
- なぜ性悪説を信じてしまうのか
- スタンダード大学の監獄実験の嘘
- 人類は定住化の罠にハマった…
- 善き未来を作るために
タイタニックでも9・11でも人は助け合っていた
まずは人が善良だという理由を、歴史的な事実から紹介していきます。
有名なタイタニック号の沈没では、映画では慌てふためく人が多かったものの、意外と冷静に避難が行われたといいます。恐怖のあまり泣き叫ぶ人はいなかったと。
9・11でも、現実は冷静に静かに階段を降りて、消防士が通れるように脇に寄って、「お先にどうぞ」と伝えることすら起きたといいます。
第二次世界大戦でも、1939年にドイツの爆撃機によるロンドン大空襲がありましたが、助け合いが生まれて、思想や貧富の差は気にしなかったという証言があります。
人間の本性は凶悪だという情報が蔓延している
ベニヤ説という言葉があります。人間の道徳性は薄いベニヤ板のようなものであり、少々の衝撃で容易に破れるという説です。ベニヤ説は、オランダ生まれの生物学者フランス・ドゥ・ヴァールが唱えました。
なぜベニヤ説が浸透しているかというと、中毒性が高く夢中になるニュースの影響が大きいと指摘します。ニュースは極端な情報だけを切り取り伝えています。殺人や不倫といった醜い部分しか見せない。本来の人間社会を映しているというかと大きな疑問が残るというわけです。
また小説をはじめとしたエンタメコンテンツでも、ベニヤ説の作品が多く存在します。本書では、実際の事件をもとにした『蝿の王』を取り上げていて、本来は助け合いがあったことを突き止めています。
なぜ性悪説を信じてしまうのか
人間が性悪説を信じてしまう理由として、ネガティビティバイアスとアベイラビリティバイアス、大きく2つを挙げています。
ネガティビティバイアスとは、悪い物事に敏感になってしまうことを意味します。人類が生き延びるために必要な性質といえるでしょう。
そしてアベイラビリティバイアスとは、手に入れやすい情報だけで判断すること。例えば飛行機テロのあとに、飛行機の利用者は激減するのですが、テロに利用される飛行機はほんの一部。リスク管理の専門家によると、ほぼ起こり得ない確率なのに、人間心理では飛行機を乗ることを恐れてしまうというのです。
スタンダード大学の監獄実験の嘘
スタンダード大学の監獄実験の嘘にもメスを入れます。
大学生を看守役と囚人役に分けると、看守役が凶暴になるという有名な実験です。しかし、これは誘導された可能性が高く、実験を行ったフィリップ・ジンバルドは、看守たちと事前にミーティングしていたというのです。そこから恐怖心を生み出すように仕向けていたというのです。
人類は定住化の罠にハマった…
人類史をたどりながら、なぜネガティブな思考が生まれているのかを見ていきます。
狩猟採集民は非常に安楽な生活を送っていて、1週間の労働は多くても、平均で20〜30時間だったことを人類学者は突き止めた。それだけ働けば十分だった。自然は彼らが必要とするものをすべて与えてくれたので、のんびりしたり、たむろしたり、セックスしたりする時間はたっぷりあった。
狩猟採集民のままであればよかったのに、土地が魅力的だったために、人類は定住化の罠にはまってというのです。食事は穀物中心に感染症、支配者の抑圧が生まれて、そして国家が誕生します。
メソポタミアやエジプトは奴隷国家。お金の発明、文書の発達、法制度の誕生など、文明化の印は抑圧の道具でしかないと指摘するのです。
善き未来を作るために
我々は周りの情報がどんな内容なのか、どんな目的で発信されているのかに、敏感にならないといけないのです。前向きになれる情報やコンテンツに、積極的に触れることで世界は変わって見えてきます。
本書を読むことで、大きな世界史の流れから人間には希望があるのだと、そう感じられます。今の世の中は間違っている、暗い未来しかない、と思う必要はない。未来に向けて明るい希望を持てる内容になっています!
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