村上春樹にハマったのはいつからだろう?
大学のころ、「好きな小説は?」と質問されたら、『ノルウェイの森』と答えていた。今から思うとカッコつけた話だけど、それでものめり込んで読んでいたのは事実だ。
そこから新作が出るたびに読んでいた。
『騎士団長殺し』では書店の発売カウントダウンに足を運んだこともあった。そのとき、朝のワイドショーの撮影も入っていて、隣に並んでいた春樹好きの人と、「テレビがきてますねぇ」と話していたら連絡先を交換することになり、その後、渋谷で2人読書会もした。
そのくらい村上春樹は大事な作家。
ランキングを付けるのは難しいけれど、おすすめ作品がわかりやすくなるので、村上春樹の長編作品すべて順位をつけてみた(あくまで個人的なものだけど、参考にしてもらえれたら幸いだ)。
村上春樹の短編小説のおすすめはこちらから。
映画『ドライブ・マイ・カー』の原作を知りたい方はこちらから。
- 新刊『街とその不確かな壁』
- 1位『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
- 2位『ねじまき鳥クロニクル』
- 3位『ノルウェイの森』
- 4位『1Q84』
- 5位『海辺のカフカ』
- 6位『羊をめぐる冒険』
- 7位『国境の南、太陽の西』
- 8位『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
- 9位『スプートニクの恋人』
- 10位『風の歌を聴け』
- 11位『騎士団長殺し』
- 12位『ダンス・ダンス・ダンス』
- 13位『アフターダーク』
- 14位『1973年のピンボール』
- すべての作品が愛おしい
新刊『街とその不確かな壁』
6年ぶりの新刊長編!以前書いていた短編から、長編として書いた作品で、村上春樹が現在進行形で、変化しつづける作家だと感じさせます。
この時代にこそ、読んでおきたい内容です!
1位『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
エンタメ要素が満載で、一気に読んでしまった記憶があります。
本作は、動的なパートと静的なパートで構成されている。「ハードボイルド・ワンダーランド」パートでは、暗号技術を操る計算士の「私」が、東京後化を駆け回って冒険に繰り出します。「世界の終り」パートでは、自分の影と切り離れた「僕」が、壁に囲まれた街から脱出しようと地図を作りはじめる。
やがてこの2つの世界が徐々にシンクロしていき、後半はおもしろさ全開です!
聖地探訪
- 明治神宮あたり:やみくろの聖域、国陸競技場の少し手前
- ナカ美容室:村上春樹が通っていた美容室
- 日比谷公園:最期の時を迎えた私が女の子と車で出かけた場所
2位『ねじまき鳥クロニクル』
失業中の「僕」が、いなくなった飼い猫を探すことになる。
本作にはさまざまな女性が登場します。予知能力を備えた加納マルタと、その妹である加納クレタ、近所に住む小柄な女の子・笠原メイ、電話をかけてくれる謎の女性。
そこで妻が失踪したことで、「僕」は空き家の井戸に潜ることになります。
主人公が闘う姿勢を見せてあきらめないのが本作の特徴。圧倒的な悪や暴力とどう対峙すべきなのか、真摯に向き合っていきます。
聖地探訪
- 世田谷:僕が住む一軒家がある、区営プールも登場
- 品川パシフィックホテル:占い師の加納マルタに呼びされた場所
- 新宿西口:西口のベンチでダンキンドーナツ食べながら11日間、通る人の顔を見続けた
3位『ノルウェイの森』
「死と性しか書かれていない」
村上春樹の言葉どおり、主人公と直子と緑との関係を軸に、死とセックスが描かれていきます。それぞれの会話がおしゃれで深みを感じてしまって、感情を揺さぶられます。
新宿のレコード屋が出てきたり、学生運動が起こっていることがわかったり、時代背景も感じさせる内容になっています。
2010年、松山ケンイチと菊地凛子で映画化もされていて、村上春樹の作品のなかでも屈指の人気作です。
聖地探訪
- 四谷、飯田橋、御茶ノ水、駒込:ワタナベと直子が偶然再会し、散歩したルート
- 早稲田:ワタナベは大学は演劇専攻、和敬塾がモデルになった学生寮で暮らした
4位『1Q84』
すこぶる面白いです。
青豆とふかえりという魅力的なキャラクターにより、前半は読むのが楽しくて仕方なかった。青豆パートは暗殺とセックス。ふかえり&天吾パートは改ざん小説がばれるかばれないか。ハラハラ要素がてんこ盛り。
惜しいのはBOOK3になって、明らかに物語が失速してしまうこと。それを差し引いても、読み切ってほしい作品ではあります!
聖地探訪
- 三軒茶屋:青豆が高速道路をタクシーで渋谷に向かう途中、渋滞に巻き込まれ、非常階段で降りる
- 渋谷東武ホテル:青豆がアイスピックに似た道具で暗殺する
- 紀伊國屋書店:天吾が本を買う場所
- 新宿中村屋:天吾とふかえりが出会う場所
- 高円寺の児童公園:天吾が夜空を見上げた
5位『海辺のカフカ』
15歳の少年・田村カフカのパートと、老人のナカタさんパートで物語は進行していく。
とにかくナカタさんパートが魅力がありすぎます。ナカタさんは猫と話せる能力を持っていて、猫の捜索を請け負っているのだが、聞き込み調査が猫。もうこのやり取りが可愛らしいんです。
そして、猫を殺害して肝を集めているというジョニー・ウォーカーとの対決が迫る。ナカタさんは淡々と(でもビビりながら)立ち向かっていく。
カフカパートも忘れていけない。カフカ少年は図書館にたどりつく。「お前は父を殺し、母と姉と交わる」。この呪いと向き合うのが、カフカの最大の試練です。
物語にまとまりがあって、かなり好きな作品!
聖地探訪
- 高松:カフカが家出をうどんを食べて感動する
- 鎌田共済会の郷土博物館:甲村記念図書館のモデルと思われる場所
- 中野区野方:ナカタさんが住んでいる場所
6位『羊をめぐる冒険』
鼠3部作の3作目。1978年、「僕」は友人の鼠の手紙をきっかけに、羊を探すために北海道に向かい、そして羊男があらわれる…。
本作から読みやすさがアップしていて、ストーリーでぐいぐい読ませてくれます。
「この小説そのものが僕にとっていわば新しい冒険であったのだ」と村上春樹自身が話すように、小説家として進化が見られる作品ともいえます。
7位『国境の南、太陽の西』
バブル絶頂期の東京で上品なバーを経営し、幸せな家庭を築いている主人公。
彼は、幼少期に親しかった女の子がいた。脳性麻痺で足をひきずっている女性・島本さんと、再会することになり、2人は親密な関係になっていきます。
人間のダメさ・弱さを突きつけられる作品で、村上春樹の隠れた傑作!
8位『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
平凡な男・多崎つくるは、鉄道の駅をつくる仕事をしている。名古屋で生まれ育ち、高校時代の同級生だった5人とは奇跡的なバランスで、仲良くなった。
つくる以外は名前に色が入っていて、赤、青、白、黒。多崎つくるだけが色彩を持たないんですね。だが、あるとき突然、つくるは仲間から除外される。
つくるには、心当たりがないまま、死の淵へとさまよいます。
シンプルな構成で、村上春樹初心者でも読みやすいと思います!
9位『スプートニクの恋人』
すみれは恋に落ちた。それは竜巻のような激しい恋だった。
ファンタジーで愛にあふれた物語。主人公の「ぼく」は前半は聞き手、後半からすみれと、すみれが好きな女性との三角関係になっていく。
「自身の文体に対する一種のラブレターみたいなもの」と村上春樹が語るように、文体がシェイプされて、美しい文章で構成されています。文章を読むことを目的に、手にとってもいいくらいの作品。
10位『風の歌を聴け』
村上春樹のデビュー作。
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」
この文章だけで引き込まれてしまいます。断片が切り取られているので、ストーリーを追うのは少しむずかしい。しかしかなり考察しがいのある作品で、すべての文章に意味があると言ってもいいくらい。
11位『騎士団長殺し』
『騎士団長殺し』は、村上春樹のエッセンス盛りだくさんな内容。盛り上がりにはかける作品で、もっと騎士団長の登場を早くしてほしかった。
12位『ダンス・ダンス・ダンス』
鼠三部作と同じ人物が出てくる作品。
僕が「いるかホテル」を尋ねると、きれいな外装になっていて、そこに羊男が待っていた。舞台が、札幌、東京、箱根、ハワイと移っていき、飽きない内容になっています。
「失われた心の震えを回復するために」。まさに「僕」の居場所を描いた作品。
13位『アフターダーク』
深夜のデニーズで、浅井マリと高橋テツヤが出会うことから、物語は始まる。そして23時56分から6時52分までという限定的な時間が描かれます。
さまざまな場面が交錯していく構成。視点がおもしろくて、読者の目となってクローズアップしたり、俯瞰したりしていきます。
「ニューヨーク・タイムズ」の「2007年注目の本ベスト100」にも選出された作品。
14位『1973年のピンボール』
『風の歌を聴け』の続編。「僕」は渋谷の近くにある事務所で働いて、双子の女の子と暮らしている。故郷に戻った鼠は、バーでビールを飲み続けていた。
注目したいのは前作で恋人を失った「僕」の心情が見えてくること。直子の死が軸にしながら、全編に死が漂ってきます。ラストシーンでは倉庫が舞台になりますが、ここは一気に書いて、村上春樹は書き直しをしていないそう。圧巻の描写を堪能してほしい。
すべての作品が愛おしい
便宜上、ランキングをつけましたが、最後のほうは本当に難しい…。14位の『1973年のピンボール』であってもおもしろいですから。
ぜひ気になる作品から手にとってほしいと思います!
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