デザインのディレクションを学ぼうとしたら、ブランディングのコツが丁寧に記してあって、だいぶうれしい誤算でした。
ブランディングとはなにか?デザインとはなにか?が、かなり明確にわかります。
著者はCOEDOビールや、抹茶カフェ、ヤマサ醤油のデザインを手がける西沢明洋さん。
具体例が豊富なのもありがたいし、実践的で説得力のある内容でした。
ブランディングについてのおすすめ本はこちら。
- 「売る」より「伝える」がブランディングのコツ
- マーケティングとブランディングの違いとは?
- まず伝言をしてから売上を考えよう
- ブランディングの3条件
- デザインとは?「か」「かた」「かたち」
- デザインディレクションとは?
- ブランディングデザインの3階層
- ブランディングデザインの進め方
- ブランディングデザインの決定版
「売る」より「伝える」がブランディングのコツ
まずはブランディングの定義から。
ブランドの語源は、放牧していた自分の牛が、他の牛と区別がつくように「焼印を押す」という行為だそうです。諸説あるようですが、ブランドには「他と区別する」という意味が内包されているわけです。
ブランディングとは、「ある商品サービスもしくは企業の全体としてのイメージに、ある一定の方向性を作り出すことで他者と差別化すること」。
すなわちブランディングとは差別化なんですね。
差異化とは、ほかとはどう違うのかというブランドの本質的価値をお客様に正しく伝えることになります。
マーケティングとブランディングの違いとは?
マーケティングとブランディング、けっこうごちゃごちゃになることはおおいです。
ここの整理はかなり秀逸でした。マーケティングは「売るゲーム」。一方のブランディングは「伝言ゲーム」だと整理されています。
伝言ゲームのように、人から人に自然に伝わるのが理想。ブランディングは、商品の本質的な価値が人から人に伝わるような伝言現象を目指していくわけです。
まず伝言をしてから売上を考えよう
マーケティングから考えてもいいけど、まずブランディングをしていくことを本書では提唱しています。ブランディングできていれば、自然と売上は上がる。ブランディングのあとにマーケティング施策を行うとその効果は、通常より大きなものになる。
ブランディングが効く2つの課題としては、
- けっこう売れてるのに知られていない
- けっこう売れてるけど停滞気味
といった状態が挙げられています。
ブランディングの3条件
ブランディングするために3つの条件が紹介されています。
- トップの熱い思い
- 良いもの
- コミュニケーションチーム
コミュニケーションチームについて補足しておくと、「つくる」と「伝える」の両輪体制を自社で持つということ。
少し前までは「つくる」だけでよかったけれど、いまはそうはいきません。伝えるにはどうすればいいのか。チーム全体が関与しながら、つくるに反映する必要があるのです。
デザインとは?「か」「かた」「かたち」
ここまででかなり充実しているのですが、デザインの本質に迫っていきます。
デザインってあいまいなものと思ってしまきがちだけど、下記の3つにすみ分けすると考えやすい。
- か:本質的段階(思考や原理、構想)
- かた:実体論的段階(理解や法則性、技術)
- かたち:現象論的段階(感覚や現象、形態)
デザインの実践プロセスは、「か→かた→かたち」になり、認識のプロセスはその逆になります。
デザイナーとのやり取りで、クライアント側が「この人はなにもわかってない。あんなに説明したのに…」となる。一方で「お題はクリアしてるのにこの良さが分からないのはセンスがない」とデザイナーは感じている。そして無難なデザインに落ち着いていく…。かなりあるあるな状況です。
これは「か」だけを伝えていて、赤いものなんでもいいとなっていたから。そこで「かた」というルールを挟む。ほかの赤いものは考える必要がなくなり、かなり早い段階で「これまでにない新しいりんごをつくろう」と共有できるようになります。
- か 赤い
- かた 食べられる丸いもの
- かたち りんご
デザインディレクションとは?
さてここまできたらデザインディレクションでやるべきことが見えてきます。
デザインディレクションとは、「かた」を挟みながら、「か」から「かたち」までをきちんとつないでコントロールすること。
「か」は経営者が責任を持って考える領域。デザイナーも「か」に積極的にコミットしなければならないわけです。
デザインディレクションでは、制作スタッフを指揮して、さまざまなデザインの統合を行い、ブランドとして差異化された「ある一定の方向性をつくり出す」必要があるのです。
ブランディングデザインの3階層
ここもおもしろくて、ブランディングデザインの3種類としては、
- マネジメント 経営戦略、この仕組みを変えるほうが効果が出やすい、差異化できる
- コンテンツ プロダクトサービス
- コミュニケーション ロゴとか伝わりやすい
があります。ここは明確に把握すべきで、マネジメントを変えたほうが効果が出やすいそうです。差異化できる。コミュニケーションだけ変えても表層的ということですね。
「いろはす」の例がわかりやすかったです。「いろはす」は、マネジメントレベルでエコ宣言としています。
- マネジメント エコ宣言
- コンテンツ エコボトル
- コミュニケーション 緑のキャップ
かなり独自性があります。緑キャップがいまだに「いろはす」しかないことからも分かります。
ブランディングデザインの進め方
フォーカスRPCDという方法が紹介されています。
プラン、コンセプト、デザイン、リサーチを螺旋状のようにブランドを育てていく。行ったり来たりしながら、ブランドが強くなっていくわけですね。
ブランディングデザインの決定版
ホントにわかりやすくて、ブランディングについて知りたいなら手に取ってほしいです!デザインについてもかなり思考が整理されます。
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