ドラマ『くるり』は、記憶を失った主人公が、指輪ひとつを手がかりに「渡したかった相手」を探す物語です。候補が3人いて、全員に指輪が合ってしまう。設定の時点で勝ちですよね。各話を簡単にまとめたうえで、この作品が本当に描いていたものについて考えます。
ドラマ『くるり』あらすじ
事故で記憶を失った主人公のもとに、3人の男性が現れます。それぞれ「元カレ」「唯一の男友だち」「運命の相手」を名乗り、手元に残った男性用の指輪は全員の指に合ってしまう。自分が誰を想っていたのかを、自分で探すことになります。
各話あらすじ(簡易版)
各話の流れを簡単にまとめます。詳しい展開は本編でご覧ください。
- 1話:まことが記憶を失い、3人の男性が名乗り出る。指輪は全員に合う
- 2話:3人とそれぞれ時間を過ごしながら、仕事と自分の向き合い方を考えはじめる
- 3話:指輪職人の道を選ぶが、思うようにいかず壁にぶつかる
- 4話:誕生日をきっかけに3人との距離が動き、1人に違和感が生まれる
- 5話:母を訪ねる旅で、選ぶことを恐れる理由が幼少期にあると分かる
- 6話:同窓会で過去の人間関係が掘り返され、記憶喪失そのものを疑われる
- 7話:周囲の人間関係にも、忘れることと忘れられないことの重さが見えてくる
- 8話:事故の前後の断片を思い出しはじめ、3人の気持ちも動き出す
- 9話:まことの気持ちの行き先がはっきりしてくる
- 10話:それぞれが抱えていた嘘が明かされる
- 最終話:事故当日の記憶が戻り、指輪の相手がはっきりする
【感想】設定の勝利、ではなく脚本の勝利だった
「記憶喪失+候補3人」と聞くと、いかにも作り物っぽく感じます。私も最初はそう思って見はじめました。
ところが見ていくうちに、これは恋愛の話ではなく「選べない人」の話だと分かってくる。誰を選ぶかではなく、なぜ選べないのかに焦点が移っていくんですよね。ここに気づいた瞬間、作品の見え方が変わりました。
生見愛瑠の「困っている顔」が主役
生見愛瑠さんの、決めきれずに困っている表情が本当に良いんです。優柔不断に見せると嫌われる役なのに、そうならない。
理由は、迷っている理由がちゃんと顔に出ているからだと思います。相手を比べているのではなく、自分が分からなくて止まっている。この差が出せるかどうかで、この役は成立するかが決まります。
【考察】この作品の主題は「選択」だと思う
私は、『くるり』は恋愛ドラマの形をした自己決定の話だと考えています。理由が2つあります。
理由①幼少期の描写が置かれている意味
中盤で、まことが幼い頃に「どちらが好きか」を迫られた経験が描かれます。恋愛ドラマなら、わざわざ挟む必要のない場面です。
それでも入れたということは、いまの迷いの原因をそこに置きたかったということ。つまり3人の男性は、まことが選択そのものと向き合うための装置なんですよね。
理由②仕事の話が並走している
もうひとつ、まことが職を離れて指輪職人を目指す流れが、恋愛と同じ比重で描かれます。
「何をやりたいか」と「誰といたいか」を同じ問題として扱っている。これは意図的な構成だと思います。どちらも他人に決めてもらえない問いですから。
【考察】3人はそれぞれ別の「選び方」を表している
そう考えると、3人の配置にも意味が見えてきます。用意してくれる相手、寄り添ってくれる相手、本当のことを言う相手。
これは男性3人の話ではなく、生き方の選択肢3つなんですよね。誰を選ぶかは、どう生きるかと同じ意味になる。この置き方はかなりうまいと思いました。
ドラマ『くるり』登場人物
- 緒方まこと(生見愛瑠):記憶喪失になり恋の相手を探す
- 西公太郎(瀬戸康史):まことの自称・元カレ。花屋の店主
- 朝日結生(神尾楓珠):まことの自称・唯一の男友だち。営業で会社の同期
- 板垣律(宮世琉弥):まことの自称・運命の相手
- 平野香絵(丸山礼):まことの家の隣人
- 立川杏璃(ともさかりえ):リングショップの職人
- 早瀬類(高野洸):リングショップ店員
- 今野愛(小日向ゆか):フラワーショップ店員
- 井口太郎(肥後克広):メンタルクリニックの医師
- 井口千草(片平なぎさ):メンタルクリニックのスタッフ
ドラマ『くるり』スタッフ・主題歌
- 脚本:吉澤智子
- 音楽:末廣健一郎、MAYUKO
- 主題歌:Da-iCE「I wonder」
- プロデューサー:八木亜未
- 演出:松木彩、大内舞子
- 編成:武田梓
- 製作:大映テレビ、TBS
『くるり』は恋愛の顔をした自己決定の話
というわけで、ドラマ『くるり』の感想と考察でした。軽そうに見えて、実はかなり芯のあるテーマを扱っている作品だと思います。皆さんはどう受け取ったでしょうか。
