ドラマ『あの子の子ども』は、高校生の2人が予期せぬ妊娠に直面する物語です。この題材で、誰も悪者にしない。それがこの作品の一番すごいところだと思います。各話を簡単にまとめたうえで、演出の丁寧さについて書いていきます。
ドラマ『あの子の子ども』あらすじ
高校生の福と宝は、交際のなかで妊娠の可能性に直面します。2人だけで抱え込む時間を経て、やがて親や学校を巻き込んだ話になっていく。それぞれの立場に事情があり、簡単な正解が出ない状況が描かれます。
各話あらすじ(簡易版)
各話の流れを簡単にまとめます。詳しい展開は本編でご覧ください。
- 1話:福と宝が妊娠の可能性に気づき、対処法を調べはじめる
- 2話:福は不安を抱えたまま誰にも言えずにいる
- 3話:体調の変化から、福が自分で確かめる決断をする
- 4話:福が宝に伝え、2人で現実を受け止めようとする
- 5話:医師の診断を受け、限られた時間の中で選択を迫られる
- 6話:それぞれの親に伝えることを決意する
- 7話:2つの家庭の受け止め方が大きく違うことが分かる
- 8話:親同士の話し合いが平行線をたどる
- 9話:福の父が帰国し、家族としての方針が示される
- 10話:福が両親の過去を知り、自分の意思を固めていく
- 11話:学校に伝え、周囲の反応がそれぞれ返ってくる
- 最終話:福が自分の答えを口にする
【感想】誰も悪者にしない脚本がすごい
この題材でいちばん簡単なのは、誰かを悪者にすることです。無責任な相手、理解のない親、心ない同級生。分かりやすい敵を置けば、見ている側は安心して怒れます。
ところがこの作品は、それをやりません。厳しいことを言う側にもちゃんと理由があり、優しい側にも迷いがある。全員が自分の正しさで動いていて、それでもぶつかる。現実はこうですよね。逃げずに書いていると思いました。
桜田ひよりの「言えない時間」
桜田ひよりさんの芝居で印象的なのは、序盤の言えないまま過ごしている時間です。
大きな出来事が起きているのに、日常は普通に続く。授業を受けて、友達と話して、家でご飯を食べる。その普通の中に不安だけが混ざっている状態を、表情をほとんど動かさずに出してくる。ここが本当にうまかったです。
【考察】この作品の主役は「周囲の大人」だと思う
私は、この作品が本当に描きたかったのは当事者の2人より、その周りにいる大人たちだと考えています。理由が2つあります。
理由①母親2人の対比が丁寧すぎる
2つの家庭の母親の反応が、あまりにも対照的に描かれます。片方は受け止め、片方は現実的な判断を迫る。
そしてどちらも、子どもを思っているという点では同じなんですよね。愛情の表れ方が正反対になるという描き方は、当事者側の話をしたいだけなら必要ありません。ここに尺を割いている時点で、大人側が主題だと思います。
理由②学校側の反応も割れている
もうひとつ、学校の対応も一枚岩ではありません。受け止める側と、厳しく突き放す側の両方が出てくる。
これも同じ構造です。守ろうとする方向が違うだけで、どちらも生徒のことを考えている。大人が一致団結して味方にも敵にもならないところに、この作品の誠実さがあると思います。
【考察】タイトルの「あの子の子ども」が刺さる理由
このタイトル、よく見ると視点が当事者ではありません。「あの子」と呼んでいる誰かの視点です。
つまり外から見ている人の言葉なんですよね。噂として語られる立場に置かれること自体が、この2人が直面するものだという。タイトルの時点で主題を言い切っている、鋭い付け方だと思います。
ドラマ『あの子の子ども』登場人物
- 川上福(桜田ひより):主人公の女子高校生
- 月島宝(細田佳央太):福の恋人で、子どもの父親
- 川上夏美(茅島みずき):福の同級生
- 飯田智宏(河野純喜 JO1):福の同級生
ドラマ『あの子の子ども』スタッフ・主題歌
- 原作:「あの子の子ども」蒼井まもる
- 脚本:蛭田直美
- 主題歌:THE BEAT GARDEN「わたし」
- 監督:アベラヒデノブ、山浦未陽、松浦健志
『あの子の子ども』は誠実さで押し切った作品
というわけで、ドラマ『あの子の子ども』の感想と考察でした。重い題材ですが、扱い方が丁寧なので見終わったあとに嫌な気持ちが残りません。皆さんはどう受け取ったでしょうか。
