『VIVANT』第20話、別班奪還作戦がついに実行に移されました。緊張の連続でしたが、終わってみていちばん頭に残ったのは銃撃でも爆発でもなく、ノコルが投げかけた短い問いかけのほうでした。
「名前はあるのか」。たった一言です。でもあの場面、ノコルは誰に向かって話していたのか。そしてなぜ名前を訊いたのか。今回はそこを掘り下げていきます。
『VIVANT』第20話のあらすじ
別班奪還作戦が実行に移されます。予定を前倒しして動き出した一行は、警備の厳しい城へ潜入。囚われていた仲間の救出が進むなか、失われた命とも向き合うことになります。そして脱出のさなか、ノコルがある人物に短い問いを投げかけます。
【感想】堺雅人さんの切り替えが見事だった
感情を殺した顔と、こらえきれない顔
今回いちばん唸ったのは堺雅人さんです。作戦中は徹底して無表情、声も抑えたまま。ところが遺体の前に立った瞬間、顔つきが変わる。
泣くわけではないんですよね。こらえている顔をしている。ここで泣いてしまったら、この人物はこういう人ではなくなる。その一線を守ったうえで、見ている側にはちゃんと伝わる。難しいことをさらっとやっています。
救出場面の軽さが効いている
牢で再会したときの「元気そうだな」という調子も良かったです。深刻な場面なのに、あえて軽く入る。張り詰めたままより、こういう緩急があるほうが後の重さが効いてきます。
二宮和也さんの狙撃の場面も印象的でした。高台から淡々と撃っていくあの表情、ノコルという人物がここまで来たんだなと感じさせます。
【考察】ノコルが話しかけた相手は誰か
ここからが本題です。私は、ノコルがあのとき話しかけていたのはFのほうだと考えています。
理由は単純で、あのときの振る舞いが普段のものとは別人だったからです。ノコルは兄弟として長く接してきた相手ですから、入れ替わりに気づく立場にいます。だからこそ「あなたは誰なのか」ではなく、「名前はあるのか」という訊き方になった。
この訊き方が絶妙なんですよね。存在そのものは認めている。そのうえで、呼び名がないことを気にかけている。相手を人として扱っている問いかけです。
【考察】Fという呼び名は何を意味するのか
ではFとは何の頭文字なのか。私は3つの可能性を考えています。
意味① フレンド
いちばん素直なのはフレンドでしょう。幼いころ、つらい状況に置かれた子どもが、自分を守るためにもうひとりの自分を作り出す。その相手は敵ではなく味方であり、友達です。
実際、Fは一貫して本体を守る側に立ってきました。危険な場面で出てくるのも、守るためだと考えれば筋が通ります。
意味② ファザー
次に考えられるのがファザーです。父親と引き離された時期に生まれたのだとすれば、欠けた父親の役割を埋める存在として現れたという読み方ができます。
守る、決断する、手を汚す。どれも本来なら父親が担うはずだったものです。そう考えると、今回の冷徹な手際も納得がいきます。
意味③ 本当の名前の頭文字
そして3つめ。これが当たっていたらいちばん怖いのですが、Fが本当の名前の頭文字である可能性です。
つまり、あとから生まれた人格ではなく、もともとそういう名前で呼ばれていた時期があった。だとすれば「名前はあるのか」という問いに対して、本人はすでに答えを持っていることになります。
ノコルの問いかけが物語の鍵として置かれているなら、答えが出るのは終盤でしょう。私はここが着地点のひとつだと思っています。
【考察】Fはなぜ今回これほど前に出たのか
もうひとつ気になったのが、今回の作戦をFが主導していた点です。
これまでは追い詰められたときに出てくる印象でしたが、今回は作戦全体を引っ張っていました。つまり本体が自分では耐えられないと判断したということではないでしょうか。
仲間を失った場所へ行き、その亡骸と向き合う。自分のままでは立っていられない。だから任せた。そう考えると、最後に感情があふれた理由にも説明がつきます。耐えるために出てきたはずのFが、耐えきれなかった。
第20話はFという存在が主役になった回だった
奪還作戦という大きな山場でありながら、記憶に残ったのは人物の内側のほうでした。アクションを描きながら、同時に心の構造を描いている。この作品の密度の高さがよく出た回だったと思います。
ノコルの問いに、いつ、どんな形で答えが返るのか。残りの話数での最大の楽しみです。詳しい展開はぜひ本編でご覧ください。

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